41 席替え後の隣の席の佐藤さんは俺を甘やかしてくれる
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「全員、移動は終わったな。それじゃ、しばらくその席で頑張れよ」
夏休みも明けて、普通の授業が始まる今日。朝のHRで席替えをして、皆が一喜一憂している。
うちのクラスは、完全ランダムなくじ引きでやっているため、運要素が強い。夜梨が前回の席からは一変していい席を引けたのか、めちゃくちゃ喜んでいるというのは、わかりやすい例みたいなものだ。
かく言う俺は、運がいいのか悪いのか引いたくじは、前の席から、刈谷さんと位置を交換しただけとなった。
「優くん、またよろしくお願いしますね」
「よろしくね、刈谷さん」
前と視点が代わり映えしなさすぎる。
授業中わかんないとこあった時、すぐに聞ける刈谷さんが居るのは助かるんだけど。
「また、教科書忘れたときは、頼ってくださいね」
「それは遠慮しておく」
なんせ今回、隣の席は刈谷さんだけじゃないのだから。そっちに頼れば、いいんだ。
「しばらくの間よろしくね、佐藤さん」
新しく隣になった佐藤さんに、早速挨拶をする。
佐藤さん、夜梨によれば同学年付き合いたい人ランキング優しさ部門1位、になるくらいのお人よし。その優しさは、佐藤さんの髪色とおなじである白の砂糖のように甘いもの、らしい。
「よろしくね、梶谷くん」
優しい天使のようなほほえみで、挨拶を返してくれる佐藤さん。
「刈谷ちゃんいいな~、ゆうくんと2回連続隣だなんてさ~。僕と交換しない?」
「遠慮しておきます」
席替えが終わってすぐ、青空さんが俺の席へとやってきた。
「でも、ゆうくんの隣抜きにしても羨ましいよ~、僕なんてさ~真ん中の一番前だよ~。そんなんじゃ、ろくに寝れやしないよ~」
「そもそも、寝なければいいんじゃ…」
「あ、そうだ~、佐藤ちゃ~ん」
「は、はい私?」
何かを思いついたのか、青空さんが手を叩いて、静かに授業準備をしていた佐藤さんに話しかけにいった。
「実は僕、近くの物が見にくい体質でね~もしよかったら、僕と席交換してくれないかな~」
「え、席?」
青空さんに席交換を持ち掛けられた佐藤さんが、席交換について考え始めた。
これは、俺の自意識過剰かもだけど、こころなしか佐藤さんが俺の方をちらちら見ながら考えてる気がする…
「青空ちゃん、黒板見にくいんだもんね。それなら、いい…けど」
「あ、ほんとにいいのかい?」
苦渋の決断みたいな感じで、青空さんの席交換を了承する佐藤さん。それに対して、おそらく青空さんはOK出ると思っていなかったのか、少し申し訳なさそうに聞き返す。
「う、うんそれで青空ちゃんの成績下がっちゃったら私も嫌だし」
「いや〜、そんなそんな〜」
「ちょっとまって」
佐藤さんの反応から、なにか悲しいような雰囲気を感じたため、俺が割り込ませてもらった。
「どうしたんだいゆうくん」
「青空さん、別にそんな変わった体質じゃないでしょ。前回も一番前だったし」
そう、黙って話は聞いていたけど、青空さんは前回も一番前の席で普通に寝てたし、授業も受けていた。
「え、そうなの?」
「青空さんも、佐藤さん優しいからってそんな難しいお願いしないであげなよ。せっかく、神席引いてるんだから」
席替えで一番うしろの席が最高というのは、全人類共通の考えのはずだ。
「そんなにゆうくんは、僕と隣が嫌なのかい?あ〜、わかったゆうくんは僕が常に隣にいると〜、自分の力を抑制できなくなっちゃうのか〜。そんな、ゆうくん今は授業中だよ〜」
何を妄想したのか、俺の名前を言って身をよじらせる青空さん。
「違うから!変な妄想してないで、もう授業始まるし、青空さんは席に戻って準備しなよ」
「ぶー、わかったよ〜。じゃあ、またあとでね〜ゆうくん」
それだけ言って青空さんは、普通に次席へと戻って行った。
「また来るんだ。ごめんね、佐藤さん唐突に」
「別に大丈夫、梶谷くんありがとね。よかった…」
ため息をしてほっとしている佐藤さん。どうやら、相当今の席が気に入ってるみたいだ。
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「梶谷くん、今日一緒にお昼食べていい?」
「俺は別にいいけど…唐突だね」
4時間目が終わってすぐ、佐藤さんにお昼に誘われた。今日は、初愛佳さんからの誘いもないから、夜梨と食べるつもりだった。
「せっかく、隣になったんだしね」
「俺はいいんだけど、ちょっと待ってね。夜梨!佐藤さんも混ざるけどいいか?」
「全然、大歓迎大歓迎」
どうせ夜梨は、許可してくれると思ってたから、聞く必要は無かったと思うけど。そこは、礼儀というものだろう。
「優、今日は教室じゃなくて別のとこで食べないか?」
「別の場所って?」
基本的に俺は、初愛佳さんに呼ばれない限りは、夜梨と昼を食べている。
「ちゃんと考えてなかったけど」
「見切り発車かよ!」
「それなら、屋上でいいんじゃない?」
「それだ!」
何も考えてなかったらしい夜梨代わりに、屋上の案を佐藤さんが出してくれて、夜梨が即決で決定した。
「はい、梶谷くんあ〜ん」
佐藤さんの箸が俺の口の中に入る。
さっきから、俺は自分で食事を取っておらず、佐藤さんからの箸を使って食べている。もちろん、佐藤さんの優しさに付け込んで、俺がお願いしたわけではない。
なぜか佐藤さんが俺に、やってあげるといい始めたのだ。箸の使い方汚くて、見苦しかったのかな。
「佐藤さん、別に俺箸使えない訳じゃないんだけど」
「まあまあ、ほらあ〜ん」
「佐藤さん、俺もやって欲しいなー」
「ごめんね、私手2つしかないから」
「何その理由」
夜梨が佐藤さんにお願いするも、あまり関係のない理由であっさり断られる。
「にしても、さっきから思ってたけど、2人ともさっきから関節キスしてるよな」
「「あ」」
夜梨に指摘されて、俺と佐藤さんは目を合わせた。
普通に流されるままで気づかなかった。それは、佐藤さんも同じみたいだけど。
「キス…しちゃったね」
上目遣いで、俺を見ながら少し恥ずかしいような声で、言葉を発する佐藤さん。
「佐藤さん、それはあざとすぎるよ」
佐藤さんの言葉に何かを食らったのか、感嘆のような声をもらす夜梨。
「そうかなー?」
「今の言い方ズルいって。なあ、優」
「あ、俺?まあ、たしかに可愛いかったというか、なんというか」
「もう、梶谷くんそんなに褒めなくたって、はい」
少し照れながらも、箸で俺の弁当からおかずをとってこっちに向ける佐藤さん。指摘されたけど、やめる気はないみたい。
「いや、やんなくていいんだって」
「私が、梶谷くんをお世話したいから」
なんで俺がお世話必要だと思われてるんだ。これは佐藤さんの優しさから来るのか、はたまた別のものなのか…
「ごちそうさま」
最終的に俺は、ほぼ自分で食べることはなく佐藤さんとの関節キスを通して、完食した。
「ほんとに、なんで佐藤さんは俺にさっきのしたの?」
「ほんとに、私がやりたかっただけというか」
「まあ、いいや。でも、あんましさっきみたいなのは、安易にやんないほうがいいと思うけど」
さっきのを安易に男子にやると、勘違いする人が続出するだろうし。
「私あんなこと、梶谷くん以外には…」
「はやくもどろ、時間そんなに残ってないし」
「う、うんわかった」
前の由乃みたいに器用に両手で食べていたわけじゃないから、昼休憩は残り僅かな時間しか残っていない。
「刈谷さんなにしてんの…」
教室に戻ってみると、刈谷さんが俺の席で寝そべっている。前もやってたなこんなこと。
「ここで友達とお昼食べてので」
「刈谷さん友達いたんだ」
何気に、今まで刈谷さんが友達といるとこを見たことなかったな。
「ひどいですね、基本的にお昼は私、友達と食べてますし。それに、優くんは友達じゃないんですか?」
「あ、ごめん」
そうか、俺と刈谷さんは友達か。にしては、距離が近すぎる気がするけど。
「てか、そこじゃなくて席移動する必要ないでしょ」
「まあ、そこは愛ゆえみたいなものなので」
「はいはい、とっても嬉しいから、どいたどいた」
「もう、そんな邪険に扱わなくたって」




