40 深夜隣に立ってる幽霊さんは俺を呪おうとしてくる
ばあちゃんの家から帰ってきて、4日ほど経過した今日。俺は今、恐怖に震えています。
帰宅してつい2日前から、俺が寝る時ベッドの横に幽霊さんが立つようになった。綾ちゃんの呪いの後に、この幽霊さんが出始めたせいで、気のせいとは言いづらい。
しかも、幽霊さんは俺の横でずっと何かをポツポツ言ってて、それが邪魔で上手く寝れない。
「あ、あのー幽霊さん?」
「………」
いや、急に黙んないでよ!俺の声聞こえてんの、確定しちゃったじゃん!
動いたら何されるかわかんないせいで、ベッドから出るに出れないしさ!
「あのー、聞こえてるなら少し話を…」
「憎い!憎い!憎い!憎い!」
こっわー、これはもう何も知らないフリをして目でも瞑って、頑張って寝よう。
あれからどれくらいだろうか。目を瞑ってはみたものの、相も変わらず横でポツポツ言ってるのが耳に入ってまともに寝れる気がしない。
それに、さっきの憎いという言葉が頭から離れないせいで、全く脳休まらない。
「優くん、どうかしました?」
「おう、刈谷さん」
俺が幽霊さんに怯えていると、いつも通りみたいな感じで、刈谷さんがベッドに入ってきている。
でも、1人じゃなくなった分、多少の安心感が…
「今日はやけに淡泊ですね」
「俺の後ろの見えない?」
刈谷さんがこの幽霊さんが見えないとすると、俺に何かしら恨み持ってる幽霊さんであると確定するんだけど。
「あーそういえば、さっきからなんか聞こえますし、なんかいますね」
よかった、刈谷さんにも見えてるのか。とりあえず、俺が呪い殺される確率は減ったな。
「見えてたんだ」
「優くんに夢中で」
仮に俺に夢中だったとしても、怪奇現象は無視できなくないか?普通。
「さっきから、なんて言ってるんですかね」
「いや、俺が知りたいよ。ちゃんと聞こえたのは、憎いって言葉だけど」
「でも、何かをちゃんと会話文的なこと、言ってませんか?」
刈谷さん、幽霊さんの小声聞こえるのか。めっちゃ耳いいじゃん。
「気になりますね」
「え、聞くの?」
ベッドの上で立ち上がって、幽霊さんの口元に顔を近づける刈谷さん。怖いもの知らずだな、この人。
「えっと、あーはいはい。それなら」
いやなんで普通に会話してんの!?これはコミュ力とかの話なんだろうか。普通に刈谷さんが、恐ろしい。
「優くん、こっち向いてください」
「なに?」
恐怖半分で背中を壁側にして、初めて幽霊さんをしっかり見る。
幽霊さんの見た目は、顔は長い前髪で隠れていて見えず、服装からして貞子に近い感じ。
「どうやら、幽霊さん優くんのこと呪いたいみたいなんですけど、やり方がわかんなかったみたいで」
「んな呪いって物騒な」
刈谷さんが説明する横で、お恥ずかしながらみたいな感じで身をよじらせている幽霊さん。
こう見ると、可愛く見えるのはなんなんだろう。
「て、ことはさっき刈谷さんが教えてたのって…」
「はい、呪いですね」
さらっと言ったけど、めちゃ怖いこと言ってるってこの人。
てかなんで、呪いのやり方知ってんの?さっきの反応といい、幽霊の知り合いでもいるの!?
「じゃあ、とりあえず幽霊さんやってみてください!」
刈谷さんが指示を出すと、幽霊さんが俺に近づいて俺と重なる。それと同時に、俺の部屋の物が少しではあるけれど、ポルターガイスト的に音を立て始めた。
「最低でも、なんの呪いかは…動けない」
幽霊さんから逃げようと、動こうとすると全身が何かで固定されているのか全く動けない。
「お、成功しましたね。流石に優くんとは一緒に死にたいので、軽度の呪いをと思いまして。とりあえず、思い付きで教えてみましたけど、案外いけましたね、金縛り」
「金縛りか」
金縛りは呪いなのか微妙なラインな気がするけど、金縛りならそこまで怖くないしいい…
「刈谷さん、なにしてんの?」
仰向け状態で固まった俺のズボンを、普通に脱がしている刈谷さん。
「いやー、こんな無防備な優くんなかなかないので、夜這いするなら今かなって」
「もしかして、それをねらって…」
「いや、ねらってはなかったんですけど、よくよく考えたらてきな☆」
てきな☆じゃないよ!こんな早さで、貞操の危機が来るとは思ってなかった。
「さすがにだめだって!」
金縛りに抵抗しようと、全身に力を入れて、全身をいろんな方向に動かしてみる。意外なことに頭だけは、動かせるみたい。
「う…うう…」
「優くん、幽霊さんが苦しんでますよ」
「それなら、金縛りを解くか、刈谷さんがそれやめて」
俺の抵抗に負けないよう、幽霊さんも頑張っているのか、さっきから音を立てていたペンなどがさらに大きい音を立て、物によっては宙を浮いている。
「おーすごいですね。ほんものの怪奇現象」
「感心してないで…手はなして…」
「そういえば、夏休みの宿題終わりました?」
「とっくに終わってるけど、世間話挟んで力抜かせようとしないで」
脱がしにくいのか、ズボンを下ろす速度は遅いけど、そろそろパンツが全部見えてきた。
「ちょっとまって、ほんとにそれ以降はまずいから」
「いいじゃないですか、私と優くんの仲なんですし」
「そんな仲になった記憶はないって!」
ほんとにまずいことになってきた、さっきよりも力を入れて抵抗はしてるけど、金縛りが解ける様子全くないし。
刈谷さんはもう、俺のパンツにまで手をかけ始めてるし。
「ちょっと優!さっきからガチャガチャうるさ…い」
物音が母さん達の部屋まで届いいたのか、その音に耐えかねた母さんが俺の部屋に怒りながらやって来た。
今のズボンは完全に脱いでいて、パンツも少しズレている状況を見て、母さんは気まずそうな顔をしている。
「あ、なんか…ごめん。優も思春期だもんね、いやーほんとごめん。まあ、ほどほどにね」
「ちょっとまって、母さん勘違いだか…」
俺の現状を見た母さんは、勢いよくドアを閉めて部屋へ戻って行ってしまった。
「ああ、終わった…てか、刈谷さんは?」
俺の足元で、俺を剥がしていたはずの刈谷さんがいつの間にか消えている。
「ここですよ」
刈谷さんの声のする方を見ると、俺の勉強机の下から顔を出している。あの一瞬で、そこまで移動したのはすごいな。
「そういえば、優くん金縛り解けたんですね」
「あ、ほんとだ母さんに勘違いされたので忘れてたけど、いつの間にか解けてる」
母さんが来てから、俺の体は完全自由な状態へ戻った。代わりに、周囲を見渡しても幽霊さんの姿は無い。
「刈谷さん、幽霊さんがどうなったかわかる?」
「いませんね。もしかしたら、お母様が来たのにびっくりして、成仏しちゃったのかも」
「んな、ぎっくり腰じゃないんだから」
でも、ほんとに母さんが来てから消えてるから、無駄に現実味あるんだよな。
「関係ないけど、刈谷さんどうやって今日は来たの?」
「今日ですか、今日は普通にお庭のとこの窓から来ましたけど」
不法侵入を普通にとは言って欲しくないけど、今日はそのおかげで助かった?し、良しとしよう。
「とりあえず、帰って」
「私の帰る場所は、ここですよ?」
「違うでしょ。結婚してないんだら、そんなこと言ってないで、早く行くよ。俺は外に出て、一旦気持ちをおいちつけたいし」
母さんの勘違いもあって、今の俺はとても死にたい気分だ。勘違とはいえ死にたい。だって、弁明のしょうがないんだから。
「もういくよ、刈谷さん。早くしないと置いてくから」
「どうぞ、おいてってください」
「冗談だから、早く」
冗談をほどほどに、刈谷さんを引っ張り出して庭へ出る窓のカギを絞めてから、外に出た。
外の気温は、夏というのと俺の体温の暑い体温もあって、気持ちいいぐらいの涼しさ。
「もうちょっとで夏休みも終わりですね。楽しめましたか?」
「まあ、楽しかったけど、いろいろあって疲れたって感じ」
今年の夏休みは、周囲の人間関係的にも、いままでで一番濃い夏休みだった。
「ばあちゃんちに行ったんだけど、そこでもちょっとあって、休まらなかったし」
「その様子だと、夏休み中は暇じゃなかったんですね」
「そうなるけど…」
刈谷さんの言う通り、暇しなかったといえば、暇はしなかった。その理由が、なんともって感じだけど。
「そう言う刈谷さんは?」
「私も楽しかったですよ。なんせ、優くんに何度もあってるんですから」
「ていっても、3回だけどね」
言ってしまえば、定期的に会うくらいの回数だ。とは言っても、刈谷さんと会った3回中2回が正規の方法じゃないのはどういうことなんだろうか。
「刈谷さんはどこか行ったの?」
「はい、私もおばあちゃんのとこに。そこで夏祭り行ったり」
「夏祭りか…」
そういえば、今年はばあちゃんちに行くのと被って行けなかったな。
「来年は行こうかな、刈谷さん一緒に行かない?」
別に1人で行ってもいいけど、ちょうど刈谷さんが横にいるし、誘ってみよう。
「いいんですか!?」
「別に、その時の刈谷さんの都合によるけど」
「仮に、葬式があっても行きますよ!」
「葬式は流石に行きなよ…」
別に無理強いしてるわけじゃないし。それに今のはそこそこ思い付きだ。
「その時は、浴衣、着ていきますね」
「刈谷さんは浴衣着るんだ」
「おばあちゃんのとこは、私服でしたけど、優くんと行くとなれば、変わりますよ。なんなら、下着もつけません」
「そこはTPO考えようか」
逆にそこまで期待大で頑張られると、俺が困るんだよな。
「ていっても、来年同じクラじゃなかったら、どうなるかわかんないけどね」
大体の友情は、親友じゃない限り、大対は有効期限1年だから、刈谷さんとの関係が続くかは未知数だ。
「そんな心配はないですね、どうせ優くんのお家が不用心の間は、この関係が続くので」
「俺にとっては、不本意な関係継続の方法だけどね」
そういわれると、廊下であった時挨拶するくらいの関係には落ちなさそうだな。とは言いつつ、俺も不用心を続けるわけにはいかないんだけど。
「今日は、ここまででいいですよ」
俺の家から刈谷さんの家まで、残り半分くらいの位置で、刈谷さんに送迎は大丈夫と言われた。
「別に遠慮しなくたっていいのに」
「遠慮とかじゃなくて、今日は優くんと未来の約束ができて、満足なので」
「そう、じゃあここでさよならだね」
「はい、それでは」
刈谷さんにさよならを言って、俺は後ろに振り返って元きた道を歩く。
「優くん!」
歩き出すと、後ろから刈谷さんに大声で名前を呼ばれた。
「また、夏休み明けに!」
後ろを見て、刈谷さんの方を見ると大きく手を振っている。
「じゃあね、刈谷さん!また、こんど!」
俺も負けじと、刈谷さんの声と同じくらいの大きさの声で返す。
「はい!また!」
それだけ言った刈谷さんは、そのまま走って行ってしまった。
「なんか、青春って感じ」
「ちょっと君」
「はい?」
刈谷さんが走って去るとこ見ていると、後ろから片をたたかれた。
後ろを振り返ると、渋谷ハロウィンのニュースとかで見る見覚えのある服装の男性。
「いま、すごい大声だったけど時間的にやめた方がいいよ」
「あ、はい、失礼しました」
「ついでに聞くけど、君何歳?身分証かなんか持ってる?」
「おお?」
予想通り俺が声を掛けられたのは、補導員の人だったらしい。よし!逃げよ。
「えっと身分証はなくて、年齢は立派な20歳でお酒飲める歳なんでそれじゃ!」
「あ、君待ちなさい!」
嘘をついて、急いでこの場から走って逃げる。もちろん補導員の人はおってくるけど、たぶん逃げきれるはずだ。
せっかく、いい感じだったのになんともしまらない。




