39 狼少女の秘密とは
3/3
「おおかみ女?」
何かは知らんけど、急にファンタジー寄りなものが出てきたな。
「でも、私が人間じゃないってわけじゃくて。なんか、結構昔の呪いがそのまま…」
ガチの方じゃないにしても、そこそこファンタジーよりな気がするけど。
「しかも、その呪いが女性にだけ出るらしくって」
「でも、今までの綾ちゃんは普通だったよね?」
「それが、恋をした14歳以上らしくて」
その呪いはあまりにも限定的過ぎないか?まあそのおかげで、ここまで残ってるんだろうけど。
逆に何したらこんな呪いかけられるんだ、綾ちゃんのご先祖さま。
「で、それ以外は普通の狼男と変わんなくて。ただ筋力とか上がるくらい。あと…ソッチの欲も」
何となくわかった、昨日の綾ちゃんはたしかに満月を見ていた。なんなら、俺がみせた。そのせいで、暴走してしまったのか。
「それに…いまだって」
「え?」
「やっぱり、人間3大欲求には敵わないよね?」
「?????」
今更だけど、気づかないうちに昨日と全く同じ形に…
「でも、今日満月じゃな」
「そんなの関係ない!私がヤリたいからやるの!」
そう強めに否定すると、俺のズボンをまたもや下ろしていく綾ちゃん。
「ちょっ、やめ…あれ?」
俺も俺で、防御無しは嫌なので抵抗すると、あっさり綾ちゃんの手の拘束は解けて、綾ちゃんを押し倒す形になった。
「ちょっと、離して!」
「綾ちゃんが襲わないって約束してくれるなら」
「……」
そこは嘘でも約束してほしかったな。
でもなんで綾ちゃんはこうなってんだ?話によると、満月の日だけらしいのに。
「もしかして、優くん怒りに任せて弱い私を!?」
「しないよ!」
とりあえず一旦綾ちゃんは無視して、考えられるのは2つ。
1つ目は、今までの話が全部嘘。まあ、これは綾ちゃんの力が、あからさまに弱くなった説明つかないから多分違う。
2つ目は、バカみたいだけど今の月がほぼ満月だから。これなら、力が弱くなった説明がつく。つくんだけど、そんなことある!?
まいいや、とりあえず綾ちゃんの欲をどうするかだな。俺の努力で…はやめておこう。別の欲に置き換えてみるのはどうだろうか、今の綾ちゃんは三大欲求に毒されてるわけだし残り2つ食欲、睡眠欲。
簡単なのは、食欲か。
「綾ちゃんこれ見て」
「な…に」
急いでスマホで、「飯テロ 画像」と検索を入れて、綾ちゃんに見せる。最初俺も少し画像を見て、ダメージを食らったけど綾ちゃんに与えるダメージに比べれば低い。
「ちょっと、優くんな見せてんの」
「ただの美味しそうな画像だよ!」
綾ちゃんの言い方があっち方向の画像っぽいけど、ただのステーキとかバーガーの画像だ。
「あ、おいしそう…じゃなくて!」
「あ、目を」
最強の防御目を瞑るを使ってきた。こうなったら…
自爆あるのみ!
「ほら綾ちゃん、この写真とかハンバーグとか切ったとこから肉汁が出て来てるよ」
俺が綾ちゃんに見せていた画像を見て、その画像の様子を耳元でささやく。すごくバカらしい。
「やめて…」
「うわ、このラーメンチャーシューといい、それぞれの具材が美味しそうな色を、それでいて綺麗な醤油のスープの色を邪魔をしない黄金比」
「ほ、ほんとに…」
状況説明はあまり自信なかったけど、思いのほかうまくいってる。しかし、俺も食欲の波が…それも画像と説明の2倍ダメージ。
「もう大丈夫、大丈夫だから。空腹がすごいから!」
「やっとか…」
案外潔く負けを認めてくれたから、俺は飯テロ画像を消して、スマホを綾ちゃんの顔の横に置く。
よかった、結構少ないダメージで済んだみたいだ。これで俺も飯テロから解放される。
「ところで、優くんその首元の赤い痕なに?」
「そんなのある?そういえば、さっきから首元がかゆいような」
たぶん、忍さんを案内してた時に蚊にでも刺されたんだろう。あとでムヒでも塗っとこ。
「嘘だ…」
「え?」
「嘘だ!絶対昨日の子に付けられたんだ!」
おい、唐突にヤンデレみたいなこと言い始めたぞ。
「じゃあ、やっぱあの子が彼女だったんだ」
「違う違う!これは虫刺されだって!」
とてつもない勘違いをされている。確かに嘘の彼女ではあるけど。
「ちょっと、優ちゃんドンドンうるさ…あらごめんなさい」
「ちょっと待って!」
流石にうるさくしすぎたらしく、ばあちゃんが注意のために部屋突に来た。
「別にいいのよ。あ、ちゃんと防御するのよ」
「まじで」
俺の説得もどきが通るはずもなく、ばあちゃんは去ってしまった。
「綾ちゃん、どう治った?」
「はい…」
ばあちゃん強襲のあと、綾ちゃんを見ると顔を赤くして固まっている。手を開放してあげると、顔全体を腕で隠した。
「とりあえず、降りよっか」
「うん…」
ばあちゃんの誤解もとくためもあって、恥ずかしさで死にかけてる綾ちゃんと1階へ降りる。
「あら、優ちゃんもういいの?」
「最初っからぶっ込んで来ないでよ…」
1階へ降りると、ばあちゃんが何やらおにぎりを握っている。
「これは?」
「優ちゃん達、運動してお腹空くと思って」
「だから、違うんだって。貰うけどさ」
飯テロもあって、お腹が空いていたので、ばあちゃんの握ったおにぎりを綾ちゃんと食べる。
というか、嘘とはいえ彼女がいる俺には何も言わないんだな。
「でも、懐かしいわね〜」
「さっきの状況が?」
「いや、さっきの話じゃなくてね。おにぎりの話。よく、あの子に作ってあげたなって」
「へ〜」
父さんよく、ばあちゃんに夜食作って貰ってたんだ。
「そういえば、父さんって勉強熱心だったの?」
「そうなの、だからおばあちゃん彼女いるって聞いた時驚いたんだから」
「母さん?」
「そう勉強を教えてあげてるうちに、お互い好きになったんですって」
父さんと母さん普通のラブコメみたいな、恋愛してたんだ。少し羨ましい。
「でも、やっぱり勉強ばっかで家事が出来ないのはダメよね」
「まあ、たしかに…」
母さんは補えばいいと言ってたけど、父さんのはそれ以前の話な気がする。
「わ、私は別にいい…と思います」
話を聞きながら、夢中でおにぎりを食べていた綾ちゃんが、話に入ってきた。
「そう?」
「家事が出来ないのは、どうかと思いますけど。でも、その分埋め合わせで、愛してあげるとか方法は沢山ありますし」
すごいな、さっきまでのオオカミ状態の綾ちゃんからは考えられない、とても心に刺さる言葉だ。
「いいこと言うわね〜、綾ちゃんもあなたもしや、尽くすタイプね」
あんたは占い師か。
「べ、別に私はそう思っただけで」
「でも、結構そうかも。なんか、母さんも似たようなこと言ってたし」
それでも、家事は最低限できた方がいいと思うけど。
「とか言ってたら、おにぎりなくなっちゃってるわね。まだいる?」
「食べる!」「食べます!」
「はいはーいちょいとお待ちをー」
空腹もあるんだろうけど、単純にばあちゃんのおにぎりが美味しい。
しかも、それぞれ味が全部違った。中には、変わり種で味のりもあったし。
♦
「じゃあね優くん」
「綾ちゃんはまだここに残るんだね」
「うん、あと3日ぐらい」
なんやかんやあった、ばあちゃんちでの日は今日で終わり。俺は荷物をまとめて、駅のホームまで来た。
綾ちゃんに帰ることは伝えてなかったけど、おそらくばあちゃんが伝えたのか見送りに来てくれている。
「まあ、じゃあまた来年?か今年の冬にでも」
「うん、じゃあね。あと最後に」
「どうしたの?」
少し緊張したような顔で、何かを言おうとしている綾ちゃん。
綾ちゃんがモジモジしていると、駅に電車が到着した。
「私、絶対にこの呪いどうにかするから!」
「そういうことね、まあ頑張ってよ。それじゃあ、またいつか」
言うことを言い切ると、タイミングよく電車のドアが閉まりそのまま発進する。
もちろん車内には、俺以外の人は居ない。
「でも、綾ちゃんの呪いって付き合った時とかって、全然いい呪いだよな。そういう女の子好きな人多いし」
まあ、この言葉は決意を固めた綾ちゃんに対して失礼か。忘れよ。
もし面白いと思っていただければ、ブックマーク、評価等々よろしくお願いします。




