38 狼少女、綾の初恋
2/3
優を襲おうとした女こと白狼綾。そんな彼女の初恋はら彼女が襲った男、梶谷優。
綾が優に惚れたのは、今から約9年前。
虫取りをしてあそんだ2人は、優が遊びたいと言い出し、お互いの親には禁止されているものの、用水路のようなとこで遊んでいた。
「優くん、くらえ~」
「つめてー。こっちだって」
ここで遊ぶ2人は、このように水をかけあったり、用水路内にいる生物を取って遊んでいた。
前述した通り水辺は危ないため、お互い親に遊ぶのと近づき過ぎるのを禁止されていたのに。
「ほら、思いっきり濡らしてやる!」
優が力いっぱいに水をすくって、綾に思いっきりぶっかける。
「つめた。あたしだって」
優にやり返そうと、前かがみになって水をすくおうとするも水の流れもあってか、バランスを崩して前に倒れた。
「綾ちゃん大丈夫!?」
「いてて。足擦りむいただけだから、大丈夫大丈夫…」
運のいいことに倒れたのは、水のおかげで、ケガの大きさはそこまででは大きくはない。けれども足は痛いのか、水から上がる綾の足は、少し歩きにくそうである。
「ほんとに大丈夫なの?」
「ほんとだって。それにあたし体大きいから、これくらい…いてて」
優に大丈夫なとこをアピールするために、思いっきり立ち上がるも、ケガの部分が痛みを訴えた。
「いや、綾ちゃんダメそうじゃん」
「ほんとに、大丈夫だって」
「綾ちゃん上手く歩けてないし。とりあえず帰って、絆創膏はろ」
もともと、この水遊びに誘ったのは優であるけれど、本人はそこにあまり責任は感じておらず、綾の歩きにくそうな姿を見て心配している。
「でも、優くんまだ遊びたいでしょ?」
「綾ちゃんいないと、遊んでも楽しくないから、今日は帰ろ。おぶってあげるから」
そう言った優も、水の中から上がって、綾の前に行って中腰程度かがむ。
「別にそんなにじゃないよ」
「ここから、おばあちゃんのとこ遠いから。ほら綾ちゃん早く」
「優くんがいいなら、いいけど」
少しためらいながらも、優の背中に乗って優の首に腕をまわす。
「重かったら、すぐおろしていいからね」
「大丈夫!慣れてるから」
優よりも8センチほど高い綾を担いで帰る家まで、歩み始めた。虫取りに使った虫かごと、虫取り網を置いて。
「優くんあたし、重くない?」
「大丈夫、俺こう見えて力あるから」
多少の痩せ我慢はあるかもしれないが、優の中では平気ぐらいの重さである。
「でもあたし、優くんより身長も体も大きいし…」
この時の綾は、早くも自身の身長がコンプレックスとなっていた。
それは、周りの男子から「お前デカすぎ」やその他いくつかの、いじりを受けていたからだろう。
まあ、もしかするとそれは、小学生特有のあれだったのかもしれないけれど。
「それでも、別に気になるほどじゃないよ。綾ちゃん身長大きいけど、それはいい事だと思うし。太ってるのは、気のせいじゃないかな」
「ほんとに?」
「ほんとだって。綾ちゃん普通に可愛いし」
「え、かわ…」
家族以外の男の子に言われた、可愛いの一言。綾周りの何人か男子は言わない素直で、ただまっすぐな一言。その言葉だけで、綾の心を持っていくのには十分だった。
「でも、綾ちゃんの身長が高いのは、ちょっと悔しいかな」
「でも優くんはまだ伸びるだろうし、あたしのことなんて、すぐ抜いちゃうよ」
「そしたら、おんぶもやりやすいね」
「やっぱやりにくいんじゃん!」
「まあまあ、走るよ!」
唐突に家の方向へ走り出す優。綾のケガの治療をした後、もちろん2人とも怒られたわけだが、綾の心の中は優のことで完全に上の空。まじめな説教など耳に入るはずなく。
ここで少し小話。
綾は高校入学から、4ヵ月すでに3回告白をされている。
中学の頃も何度か告白されているけれど、このペースでいくと中学の記録を超すこととなるだろう。
綾の高校での男子からの評価は、大体こんなことになっている。
「おまえ、このクラスで付き合うなら誰がいい?」
「そうだな、やっぱ安定で白狼さんかな」
「まあ、白狼さん優しいし尽くしてくれそうだもんな」
綾と同じクラスの男子が、体育後の教室で喋りあっている。
「そういうお前はどうなんだよ」
「聞いたな、やっぱ俺は」
「俺も白狼さんかな」
「おい、わって入ってくんなよ」
自分の好みを話そうとした男子の話に割って入り、綾の名をあげるもう一人の男子。
「で、お前はなんで白狼さんがいいんだ?」
「お、いいのか俺はなー、やっぱああいう普段はおしとやかな高身長女子に、押し倒されてみたいからだな」
「お前、そっち方向だったんだな」
「でも、考えてみろよ良くない?」
「「…確かに」」
この会話で、三人の中で綾は付き合う女子ランキングで、軽い殿堂入りを果たした。
こんな感じで、大体の人から押し倒されてみたいと思われたりしている。別に告白してきた全員が、こういうような気持ちだったわけではないが。
では、そんな綾はなぜあの夜のようなことになったのだろうか。
まあ、それは次回わかるはず




