36 狼少女とストーカー少女
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「あなただーれ?」
ゆっくりと頭を上げて、物凄い形相で忍さんを見る綾ちゃん。
「え、怖。てか、何してんの梶谷くん!」
今の状況を見て、顔を一気に赤くする忍さん。
「いまなら!」
「痛!」
解放された両手を使って、馬乗り状態の綾ちゃんを押していい感じに突き放す。一応当たり所は、悪くなさそうだな、よし!
「とりあえず、忍さんにげるよ」
「え!?わ、わかった」
土足で入った忍さんの手を引いて、急いで部屋を出て外に逃げる。部屋を出るとき肩を本棚にぶつけて、少し肩が痛いけど。
「梶谷くんどうすんの。てか、さっきの何」
「それはこっちも聞きたいし、それと忍さんに聞きたいこともあるけど、とりあえずにげるよ」
「優くん、逃がさないよ。いまなら、気絶はさせないから。イイコト、しよ」
気絶しないとはいえ、怖すぎる。絶対逃げきらなきゃ。
暗くてほとんど道が見えない道を、微妙な記憶と少しの月の光を頼りに忍さんと一緒に走る。後ろからは、忍さんの足音と綾ちゃんの足音が聞こえる。
「梶谷くん…どうすんの…私、体力持たない」
「俺もおなじく」
俺は自分からは運動しないのもあって、体力が絶望的に低い。それは、忍さんも同じなんだろう。
「ていうか、その子誰?写真の子たちじゃないよね。もしかして…その子が本命!?」
そこそこ走ってるのに、普通に話す体力あるとか。綾ちゃん、体力無尽蔵なのか?
「梶谷くん…私そろそろ…」
「わかってる。ここ!」
俺曖昧な記憶でも、なんとかたどり着くことが出来た。俺が目指していたのは、誰もいない駅。
駅に入ってからは、急いで線路上に降りて隠れた。
「優く~んどこにいるのかな~?」
駅のホームを怖い声で歩く綾ちゃん。声から感じるものは、黒嶺さん殺意に近いけれど、それとはまた違うもののように感じる。
「もしかして…線路のとこに…」
あ、まずいかもしれん。
「いや、流石にそれはないか。電車が来たら危ないもんね」
綾ちゃんには田舎の常識がなかったらしい。マジで助かった。ちなむと、最終の電車は22時までらしい。
「逃げられちゃったかな。まあ一応、言っておくと明日覚悟しといてね」
それだけ言った綾ちゃんの足音は、駅のホームの外へ消えていった。
「行ったみたいだね」
「ちょっと待って、このまま戻っても鉢合わせするかもだから、もうちょいここで隠れよう」
ホームに上がろうとする忍さんを引き留めて、そのまま線路上に戻す。
「言われてみればそうかも、梶谷くん頭いい」
「そんなそんな。で、話をかえて。何でここに居るの?」
「えっとーそれは…」
話を振ると、めちゃ話しずらそうな反応をする忍さん。
「実は、私も今日おばあちゃんちに行こうとしてて…」
「忍さんのおばあちゃん家、ここら辺なの?」
「違くて。そ、そのーほんとは新幹線で、あと2個先なんだけど。たまたま、梶谷くんみつけたからそのまま…」
ついてきたってことか。というか、新幹線2個先はそこそこ遠くないか?そう考えると、忍さん行動力の鬼だな。
「で、夜ご飯とか食べたの?」
「一応コンビニで。でも、ここほんとに田舎だね」
「それは同感だけど。忍さんさぁ…」
ここまでストーカー魂に磨きがかかってくると、尊敬超えて呆れてきた。そもそも、ストーカーは褒められたものじゃないけど。
「そういや、荷物は?」
「一応、ここに隠してあるけど。私ほんとに驚いたんだよ、梶谷くんのおばあ様の家特定で済ませようとしたら、1日3本しかないんだもん」
それは3本目で帰ればよかったのでは…たぶん、変な答え帰ってくるから聞かないけど。
実際、そのおかげで助かった訳ではあるんだけど。
「で、忍さん今日どうすんの?」
「そういえば…考えてなかった」
「ほんとに、見切り発車というか…まあ、いいや泊まっていきなよ」
「いいの!?」
一応、命の恩人?なわけだし。それに、1回泊めたことあるし、忍さんなら安心できる。
「でも、また1本目で帰って貰うからね」
「わかってるって。前回と同じだね」
今日はほんとにいろいろあった。久々に会った女の子が、性欲モンス…襲ってきたり。忍さんの、ストーカーレベルがわかったり。
「とりあえず、そろそろ帰ろうか」
「綾ちゃんは…居ないね」
恐る恐る、ドアを開けて部屋の中を確認する。部屋の中は、俺達が出ていった時のまま。
俺が逃げる時本棚に方をぶつけたからか、本が散らばってるけど。
「いいよ、入ってきて」
「おじゃましまーす。あー、本が散らばってる。適当にしまっちゃって…」
部屋に入ってきて、落ちた本を回収し始めた忍さんの動きが止まる。忍さんの指先を見ると、そこにあるのは古のグラビア雑誌。
「か、梶谷くん、これなに?」
手をふるわせながら、古の雑誌をこちらに向ける。
「違うからね!それ、俺のじゃなくて父さんのだから」
「そんな、否定しなくたって。梶谷くんも男の子だもんね」
「いやいや、それ明らか古いでしょ」
「でも、梶谷くんが古い雑誌を集めるのが趣味な可能性だって、否定できないし」
どんな趣味だよ古いグラビア雑誌集めるって。いるには、居るんだろうけど、俺はグラビアは好みじゃない。
「確かに、読もうとはしてたけど、俺のじゃないから」
「読もうとはしてたんだね…あ、えっと…わ、私の以外の女の子に、目移りしちゃめっ!だからね。……」
「恥ずかしいなら、言わないでよ」
何を思いついたかと思えば、聞いてて俺も少し恥ずかしくなるようなことを言った忍さん。言った本人は、恥ずかしくて顔を赤くして下を見ている。
「と、とりあえずこれは禁止!読むなら私も読む」
「それ、忍さんが読みたいだけなんじゃ…」
「ち、違うから」
まあ、忍さんが帰ってから読もうかな。
「ていうか、私結構汗をかいちゃった」
「そういえば、俺も」
全力疾走に、緊張のあるかくれんぼ。さすがに、普通に運動した時ぐらいの汗をかいた。
「風呂入る?」
「い、一緒に!?」
「違うよ!」
やっぱ、忍さんって少しムッツリ気味だよな。
「どっち先でもいいけど、忍さん入りたいならいいよ。多分湯船はぬるいだろうから、入りたいなら、沸かし直すし」
「それなら、お願いしてもいいかな。あ、でも服が」
そういえば、駅に置いてあるらしい忍さんの荷物回収するの忘れてたな。
「いいよ、俺の貸すから」
「梶谷くんの、彼シャツ!?」
行為の名称間違ってないんだけど、本人ストーカーなのが、雰囲気をぶち壊すな。
「これが、シャンプーでこれがボディーソープね。じゃあごゆっくり」
「いろいろありがとね」
風呂を沸かしてら、忍さんに風呂の説明をしてから脱衣所から出る。あとは、服を置いて終わりだな。
「忍さん入るよ」
返答は帰ってこないということは、風呂の中にいるんだろう。
「忍さん、ここに服とビニール袋置いとくから、後で脱いだやつ入れといて」
「何から何までありがとね、梶谷くん」
まてよ、脱いだ服もしかして忍さん下着が…
「梶谷くん、その…下着見たいなら見るのはいいんだけど…汚さないでね」
「そ、そんなことしないって」
さすがに汚しはしないけど、忍さんに読まれていたらしい。見るのはやめておこう。
てか、忍さん下着見られるのはいいっちゃいいんだな。
「いいお湯でした」
「それは何より」
彼シャツ姿の忍さんが、部屋に戻ってきた。ドライヤーは使わなかったのか、髪は濡れている。まあ、それが良いかもというのは否定できない。
「俺も入るから、何もしないでね」
「さすがに何もしないよ」
忍さん何もしないは、今までの経験からか、信頼があるにはあるな。
「ただいま戻りました〜。なにしてんの?」
俺も風呂に入り終わってから、部屋に戻ると忍さんが何やら分厚い本を見ている。
「暇だったから、本棚から1冊参考書取って見てたの」
「勤勉だね」
雑誌にしか目がいかなかったけど、本棚をよく見てみると参考書の量が多いな。父さんもしや、勉強オタクだったのかな。
「でも見てよ、これ結構わかりやすいの」
「ほんとだ」
忍さんの読んでいる参考書を見てみると、計算の解説には途中式が細かく書かれていて、さらにこの問題のポイントの説明文が、超絶分かりやすく書かれている。
「すごいねこれ、そこそこ前のものなのに」
「でも、そこの本棚呪われてるらしいけどね」
「え…」
「あの、雑誌隠すための嘘だけど」
「なんだ、びっくりした」
こっちも、あの嘘信じるとは少しびっくりした。忍さんはよく本読むし、そういう呪いとかは結構寛容なのかも。
「逆にここまで勤勉というか、真面目そうなのにあの雑誌はなんなんだろうね」
「さあ、あれなんじゃない?人生を捧げることを決めた雑誌みたいな」
「そんなに、凄い内容ってこと!?」
俺の正答率の低い考察聞いて、興奮しないで欲しいんだけど。グラビア雑誌はよくわかんないけど、そこまで過激じゃないだろうし。
「はい、グラビアどうこうは置いといて、寝ようか。時間もそこそこ遅いし」
「そうだね、走って疲れたし」
「いや、分けるよ」
俺が寝ようと言うと何食わぬ顔で、ベッドの中に入る忍さん。
「でも、前回一緒に寝たし。それに布団敷くとおばあ様方が来たとき、怪しまれるよ?」
「そういわれると…」
怪しまれるというよりかは、俺にイマジナリーフレンドがいるんじゃないかと心配されそう。
「てじょ、だから、一緒に寝よ?」
「わかった、もういいいや」
「やったー!」
もう考えるのはやめよう、疲れた。それに忍さんは俺に何もしないだろうし。
「電気消すよ」
しゃあなしで、忍さんをベッドに連れ込んで、昔ながらのスイッチを押して部屋の電気を消す。
ほんとに疲れた。ベッドに入ると、今日の分の疲れが一気にやってきた。
「梶谷くん、流石に…密着すると暑いね」
頭に入れてなかったけど、父さんの元ベッドは、俺のやつより小さいせいで、忍さんと密着する形になっている。
密着しているから、忍さんの体温、体の柔らかさが背中にダイレクトで伝わる。それに忍さんは、下をつけていないのか、ほどほどの大きさの胸の柔らかさが…
寝れん!
「忍さんもうちょい奥いけないの?」
「ここが限界かな。後ろ壁だし」
いつもなら、ふいうちとかでそんなに緊張はないんだけど。今回は綾ちゃんのこともあるし、ノーマル添い寝のせいで緊張感が強い。
「流石に添い寝は緊張しちゃうね。前回は大丈夫だったのに」
それは俺が一番聞きたい。忍さんこういうの苦手そうなのに、よく前回はできたな。
「私心臓バクバクだよ。ほら」
俺の背中に胸を押し当て、心臓の鼓動を示すほぼ
俺も心拍上がってるからほぼわかんない。
「どうしたの急にたちあがって」
「布団、敷く」
「急、だね」
深くは言わずカ立ち上がって、部屋を出ようとドアに手をかける。理性を抑えるのもあって、言葉が少しカタコト気味になってしまった。
「一言で終わらせるけど、男性的力の問題」
「ん?あ、あ〜。わ、わかりました敷きましょうか」
下を見てなんとなくなっしてくれた、忍さんは敬語で布団を敷くことに了承してくれた。
「でも、布団敷いたら何か言われるんじゃ…」
「どうにか言い訳すればいいし。ていうか第一、忍さんが出る時片付ければいいでしょ」
「たしかに」
よくかんがえてみれば、それだけですむ話だった。今までの俺の苦悩は、なんだったのか。
「それじゃ、今度こそおやすみ」
「今日はありがとね」
いつもばあちゃん家で俺が寝ていたとこから、敷布団を引っ張ってきて床に敷いた。
俺はベッド、忍さん敷布団という形で睡眠に入った。ベッドの寝心地は、家のやつと大差なく普通にぐっすりと寝れそ…
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