29 お昼でも食べながら
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「いやー、いいの買えた気がする。ありがとね、優」
「俺は適当に意見いっただけだけどな」
「それで、次どうする?」
「時間もいいし、一旦昼でもたべるか」
スマホで時間を確認すると、11時と昼には少し早いけれど12時に行くと、めちゃ混雑するし、これくらいがいいだろう。
「それなら、私も行きます」
「でも黒嶺さん、友達とかと来てるんじゃ…」
「私、友達いませんから」
「…なんかごめん」
こういうと悪いけど、確かに黒嶺さんレベルの勉強超人のなると、友達はいなそう。
「でもそしたら、なんであそこにいたの?友達いないなら意味なくない?」
由乃の言うことごもっともだけど、ド直球すぎないか、あまりにも。まあ、黒嶺さんが海とかで楽しく遊んでるとことかは、想像できないけど。
「そうですよね、私もここに来るのは、不本意なんですよ」
由乃に理由を聞かれると、珍しく黒嶺さんの顔が不調気味な感じになった。
「それはなぜ?」
「急にに父と母が旅行にいくといい始めまして、私は勉強したかったので拒否してたんですけど、もう予約取ってるといわれまして。それの準備として、無理やり今日ここにいるんです。ほんと、自分の娘の勉強を邪魔してくる親ってゴミですよね」
自分の親にそこまで言うのか。普通旅行に行くって言われたら、勉強そっちのけで食いつくものだろう。
まあ、黒嶺さんにそれを求めるのは間違っているのかもだけど。
「ねえ優、この勉強超人誰?」
黒嶺さんの話を聞いて、恐怖に軽く震えながら聞く由乃。
「黒嶺さんは、俺と塾が同じ子だね。ここだけの話、めちゃくちゃ頭いい。しかも黒女に通ってるって」
「え、すご。黒女」
あらためて考えると、黒嶺さんほんとにすごいな美人だし頭いいし。俺を殺そうとすることをのぞけば。
「てか黒嶺さん、ご両親と来てるならそっちいかなくていいの?」
「別に、どうせ行っても服だとかを見るだけですし。一応2人とも、私が面倒と思ってるのはわかっているのか、適当にぶらついてていいとは言ってましたし。というか、そんなに私といたくないんですか?」
またばれた、まだ包丁持ってなかったら一緒にいたかったかもだけどけど。包丁もってるんだもんなー。
「てか、なんで黒嶺ちゃんは包丁もってんの?ここ持ち込めないというか、外でも持ち歩きだめでしょ」
「それは、今日母に買ってもらったんです。普段梶谷さんのために、台所から持ち出してたんですけど、少々不振に思われまして」
あれ、マイ包丁とかじゃなくて家から持ってきてたんだ。そりゃ不審に思われるわな。
「それで、料理のためと言って買ってもらったんです。しかも、そこそこいいとこのやつを。私勉強以外でものをねだらないので、簡単に買ってくれましたよ」
その新品のいい包丁を食材ではなく、人の調理に使うとは黒嶺さんのお母さんも思うまい。
「まあ、そういうことなので。今日も言葉と行動には、気を付けてくださいね」
「お、オールオーケー」
今の黒嶺さんからは、殺せるなら絶対殺すという覇気を感じる。
ちなみに、この話のなさ事がよくわかっていない、由乃は頭にハテナを浮かべている。
「てか、黒嶺さんその水着どうすんの?友達いないのに」
正直海とかプール行かないなら、マイクロビキニ買った意味ない気がするんだけど。まあ、普通外でも着ないと思うけど。
「そうですね…そうなると、部屋着でしょうか。最近暑いですし」
「部屋着!?」
あのギリギリ水着を部屋で着るのか、親に見られたらめちゃくちゃ気まずいだろうに。
「あの、黒嶺さんご両親とかに、見られるのでは…」
「いえ、心配しないでください。私の両親は基本、部屋に入ってこないですし、入る時もノックして私の許可で入りますから」
どうやら黒嶺さんとご両親の仲は、そこまでよくないらしい。いや、どっちかというと黒嶺さんが、突っぱねているのか…
「それか、梶谷さんが誘ってくれればこれ着ていくんですけど」
「いやーその水着は…」
周りの目とかもあるだろうし、そもそも黒嶺さんは恥かしくないのか。
「あーそうですか。梶谷さんは、私みたいな、妖怪胸なし女は嫌ですか」
黒嶺さんは俺の腕を握って、人目があるというのに黒嶺さんの胸に、俺の手を当てる。黒嶺さんの胸は、ゼロに等しいため手に球体の感触はなく、完全に壁に手をつく感覚。普通の胸をちゃんと触ったことあるわけじゃないから、その他との違いは分からないけど。
「だから!黒嶺さんは、もうちょっと羞恥心を…」
「そんなのあったって、無駄じゃないですか。私、恥ずかしが程のモノを、持ってるわけじゃないんですから」
なんとも言葉を返しずらい。
「ま、まあ2人ともフードコートついたから、早く席とりましょ」
「お、おうそうだな」
いい感じのとこでフードコートについてくれたので、3人用ぐらいの席を探しそこに座った。
フードコート内は、今人がぞろぞろ来始めたぐらいで、席を探すのに苦労はしなかった。
「優は何食べるの?」
「そうだな、そうめんにでもしようかな」
「私みたいに、つるつるなそうめんですか」
ここまでくると自虐ネタとか、ヒステリック構文に近いものを感じるな。
「そ、そういう黒嶺さんはどうするんですか?」
「私はあまりおなかすいてないので、コーヒーとかを軽く飲もうかと」
それだけなら、なんで俺たちに着いてきたんだ。
「なので私は、あとでいいので先にお2人どうぞ」
「そう、ありがとね黒嶺ちゃん」
由乃と同時に立ち上がって、お店の並ぶ方向へ向かう。
「で、由乃は何食べるんだ?」
「私はねー、クレープとかかき氷にしようかなって」
「お前も、黒嶺さんと同じ感じなんだな」
「別にいいでしょ、食べたいんだから。それに…あんたとシェアできるかもだし…」
「なんか言った?」
「なんでもない!」
そこで由乃とは一旦別れて、俺はそうめん、由乃はスイーツ系のお店に向かった。
「ただいまもどりましたー」
「おかえり」
「由乃早かったな」
フードコート内のスイーツ系店舗は、現物をもらってから戻ってくる印象があるから、由乃がベルを持ってここにいるのは少し予想外。
「なんか機械故障しちゃって、治るみたいだけど、少し時間がかかるって」
「ならやめればよかったのに」
「いいでしょ、食べたかったんだから」
「さすが、ほしいもののためなら何でもするJK」
「それほめてる?」
これに関しては、俺の偏見と憶測がめちゃくちゃ入り混じってるけど。
*
優の持っているベルが音を出しながら、強めに振動した。
「お、きたきた取ってきまーす」
待ってました!というような顔で立ち上がった優は、小走りでそうめんの受け取りに向かった。
(少しだけど、黒嶺ちゃんと一緒かー。少し気まずいかも)
由乃は黒嶺と一緒で少し気まずい中、黒嶺の顔に視線を合わせる。
(やっぱすごい美人だな。やっぱり優もこういう…)
黒嶺は、普通に可愛いと比較すると、けっこうな美人ではあるけれど、由乃も普通に可愛いの部類に入るくらいに顔は整っている。
「ゆのさん…ですよね」
「は、はい」
話しかけられるとは思ってなかった由乃は、突然の出来事におどろいたような声で返事をする。
「あなた、梶谷さんとはなんなんですか」
「なにって、言われてもただの幼馴染ですけど…」
「へーそうですか」
由乃を見る黒嶺の表情は由乃の言った何かに、不信感を抱いているような表情をしている。
「な、なに」
「いえべつに。あなた、梶谷さんのこと好きですよね」
「は、はぁ!?」
黒嶺から言われたことに驚き、大きい声とともに立ち上がる由乃。
「うるさいですよ」
「ご、ごめん」
由乃の大声でフードコート内の視線は、由乃たちの席に集まっている。
「で、でもなんで…」
「いや、なんとなくですよ。違ったなら別にいいんですが」
(違うわけないじゃん、正解も正解大正解だって!)
「そういう黒嶺ちゃんは…」
「そりゃ、好きに決まってるじゃないですか」
顔を少し赤く染めている由乃に対し、全く動じない顔でいつ通りの色白の顔で答える黒嶺。
「少し気になっただけなので、この話はこれで終わりですが」
「ただいまー。由乃すごい声だしてたけどどうした」
話が終わるのと同時に、お盆にそうめんを乗せた優が戻ってきた。
「い、いやなんでも」
「私もそろそろ行きますので、荷物お願いします」
「はいはーい」
聞くことだけ聞いた黒嶺は、立ち上がってフードコート外すぐ近くにあるコーヒーショップへ向かっていった。
「てかあんたちょっと遅かったわね」
「ちょっとしたトラブルがな」
そんな会話の中、由乃の頭の中であることが思い出された。
(そういえば、刈谷さんと青空も優のこと好きっだったような…)
「優の女たらし…」
「え、なんだよ急に」
由乃の持っているベルが鳴らないまま、時間はどんどん過ぎていく。
この後優の水着で黒嶺とひと悶着あったけれど、それはまた別の話。




