24 忍さんの考え
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忍(高校1年)は、いわゆる本の虫だ。
クラスに友達と呼べる人はいるけれど、親友と呼べる人はおらず、ほどほどの距離を保っている。
本人自体会話が苦手なため、自分から友達に話しかけに行くことも少なく。基本的に彼女の学校生活は、読書か勉強をするくらい。
そんな忍は普通に怪我をした、それは不慮の事故というものではなく、本人の不注意で。
「忍ちゃんほんとに気をつけなよ、今階段なんだから」
「うーん」
友達の話よりも、読書ということで、フル無視しながら読書を続ける忍。
「私は心配だよ、忍ちゃんが本の虫すぎて」
「うーん」
「聞いてる?」
「うー…」
「あ、忍ちゃん!?」
本を読んでいた忍は、階段を踏み外し階段の下へ落っこちた。幸い足で着地はできたものの、足をくじいたらしく、上手く立ち上がることが出来ない。
「あー普通に骨折だねこれ。しばらく入院ね。あとちゃんと周りは見ること」
「はい、気をつけます…」
全治2週間、それが忍の受けた言葉だった。とはいえ、忍には本があるため2週間という長い期間には退屈しなかった。
そんな彼女にも、新しく友達ができた梶谷優。
けれどもやはり会話は苦手、しかも異性と来た。そうなると忍にとって、なかなか難しいものがあった。
「わ、私にですか?」
「はい、忍さんにです。というかどっちかって言うと、おすすめの本はありますか?」
(なんで、私なんかにこんなの聞くんだろう。でも、聞かれたんだしちゃんと答えてあげないと)
会話は苦手ではあるけれど、全て拒絶するのではなく、頑張ろうとはする。
「お、おすすめの本ですか。ちょ、ちょっと待ってください」
急いで家から持ってきていた、沢山の本が入っているバックから1冊の本を手に取った。
「大丈夫ですか、忍さん」
「は、はい。これ、どうぞ」
カーテンから手を伸ばして、優の元へ適当に選んだ1冊の本を手渡す。
「ありがとうございます。ちなみになんですけど、少しだけこの本のこと聞いてもいいですか?」
「は、はい拙いかもしれないですけど私のでいいなら」
「お願いします」
忍は前に読んだ記憶を頼りに、優に手渡した「悪魔の十戒」の概要を一生懸命伝えた。
「おー」
忍が語り追えると、語り終えて少し息の上がっている忍に拍手を送られた。その拍手とともに忍は、自分がオタク口調で語っていたことに気がついた。
「ご、ごめんない。早口キモかったですよね」
(やっちゃった!絶対、キモイオタクだとか思われるちゃったって。恥ずかしい恥ずかしい!)
そんな自責の念に駆られているなか、優から帰ってきた言葉は意外なものだった。
「いや、キモイだなんて…普通に聞き取れたし。それに、説明がうまかったからこれ読みたくなったしね」
「そ、そうですか、ありがとうございます…」
「それじゃあ、なるべくすぐ読むんで感想でも語り合いましょう」
「は、はい頑張ってください」
(思ったより私、意外と顔が見えなければ、男の子と話せるのかも。それにこの人優しい…)
まあ、なんやかんやあったものの優と忍との仲は着々と深まっていき、忍の退院日が近づいてきた。
この日忍は、優に退院する旨を伝えるのと気になっていたことを1つ聞こうとしていた。
「あと、最後にもう1つ聞きたいことがあって」
「最後?別に、何個でも聞いていいけど」
「その、なんで私に本のこと聞いたのかなって。正直、私の感性なんかより、ネットとかで調べた方が確実性あるのに」
忍がずっと気になっていたのは、この事だった。今は優と普通に会話はできるけれど、前の忍は、会話ベタでまともな会話などできるはずもなかったのに。なぜはなし続けてくれたのか、それがずっと気になっていた。
「その話ね、簡単だよ。初日挨拶した野読書中の忍さんの顔が、楽しそう、というか可愛く見えたから、相当本が好きなのは読み取れたし、あとは単純にネットの声よりも実際の声の方が熱量はあるからね」
この時までの忍の中での優への評価は、気になる人という感じだった。恐らく、この心への特大ダメージのでる言葉のせいなのだろう、忍の優への評価は、好きへと変化した。
だがしかしそんな、普通の女の子忍は、優のストーカーだ。彼女がそんな考えに至ったのは、忍退院から2日経った日の事だった。
この日忍は、優に会えると完全に浮かれた状態で受付を通って、少し急ぎ足で優の病室へ向かっていた。
「い、いやそういう訳じゃなくて」
優の部屋に着いて、なにか揉めてるような声が部屋から出ているけれど、今の忍に聞こえるはずもなく。
優のベットの周りのカーテンを、ピシャリと音を立てるくらいの強さでカーテンを開く。
「梶谷くん!本持ってきたよ………あ、ごめんなさい」
「ちょっと待って!」
カーテンを開けるとそこには、頭に包帯を巻いた優の体に、ほとんど凹凸のない体を密着させる美人の姿があった。
「忍さんちょっと待って」
「待ってって、今何してるの…」
「い、いいからこっち来て」
(あんなに体を近づけてたってことは、もしかして梶谷くんの彼女さんとかなのかな…)
「でも、梶谷くん大変そうだし、とりあえずこの本だけ置いて帰るよ」
「違うから、とりあえず近くにいて。今忍さんが必要なんだよ!」
「っ…」
(なんでこの人は、そう簡単に恥ずかしいこと言えるのかな!?)
「で、梶谷さんこの人は」
「この子は、同じ病室だった忍さん」
「さっき相部屋じゃないって言ってましたよね」
1回離れたかと思いきや、またもや優の体に体を密着させる黒髪美人。
「俺さっき、今はって言ったから嘘は言ってないって」
「そうですか、言われればそうかもしれなかったですね」
「あ、ごめん忍さん何かわかんないよね」
内心めちゃくちゃな不安で駆られている中で、2人の仲良さげなやり取りを黙って見ていた忍。
「この人は、黒嶺さん塾で隣の席の子。超頭いい」
「仲良さそうに見えたけど、お付き合いとかしてるんじゃないの?さっきだって、体を近づけて何かしようと…」
「してないしてない、俺と黒嶺さんはただの友達?だからほんとに」
「なんでハテナが入るんですか」
(よかった、友達だったんだ。でもその割には、結構仲良さそうだったな。とくに密着とか…)
忍の中でどうにも体を数回密着させる行為が、ただの友達には見えなかった。
「ほんとに友達?なんだよね」
「そう、ほんとにただの友達だから」
軽い不信を抱えながら、優に尋ねると何かを弁明するような声で返答が帰ってきた。
「そうなんだ、よかったまさか病室で背徳感のある…じゃなかった。と、とりあえず今日は日が悪そうだからまた来るね」
「ちょっとまって、ほんとに待って忍さんお願いここにて。いや、お願いしますここにいてください!」
「そ、そんなにすがらなくても」
(さっきから、梶谷くん様子おかしくない?私いようがいまいが、関係ないのにずっと私にすがって…もしや、梶谷くんこの子とはなにかあるのでは!?)
何かに感ずいた忍は、ある1つの目標を立てた。
(どうにかして、この子と梶谷くんを引き離そう!友達…いや、好きな人が困ってるから!)
そう内心覚悟を決めた忍は、自分の人見知りを上手いことなだめつつ、黒嶺を追い払うことに成功した。
「やっと帰ってくれた」
「私も疲れた」
覚悟は決めたものの、自分の短所を抑えながら短所をするのには、相当神経を使ったため忍の体力はそこそこ削られていた。
「忍さんも疲れたの?」
「だって、私初対面の人無理」
「じゃなんで」
「それは、梶谷くんが困ってたように見えたから。普通居なくなれの催促は、なかなかしないからね」
「それはすごいね」
忍の感は的中したらしく、いい感じに優に貢献することができた。
「それと、私今日思ったことがあるの。梶谷くんが変なことに巻き込まれないよう、私が見守らないとなって」
(梶谷くんに変な虫がつかないよう私が見守ってあげないと。そうしないと梶谷くん、すぐああいう可愛い子とくっついちゃうかもだし。それに私も梶谷くんのことを1日に1回は見ておきたいし)
それから忍は優の退院後、優への純粋な好きという気持ちからストーカーを始めた。
まあ、そんなにストーカーも早めにバレて失敗に終わってしまったのだけれど。




