20 青空さんのお家にお宅訪問
「優、帰ろ!」
「今日は一段と早いな、いろいろと」
帰りのHRが終わった瞬間、俺の席の元へやってくる由乃。なんだか今日は異様に由乃の速度、距離がいつもより凄い気がする。
「別にいいけど、俺も帰ってやらなきゃいけないことあるし」
「そう、じゃあ早く準備して」
「お、おうわかった」
由乃に急かされ、急いでバッグに今日家でやる課題一式を詰め込む。
「それじゃ早く行きましょ」
「なんでお前そんなに急いでるんだよ」
「そ、それは…」
「ゆうくん待ってよ~」
「ほらきた…」
由乃と教室を出ようと来た矢先、朝同様に青空さんが後ろから抱きついてきた、とゆうか今回はすがりつく感じが近いかも。
「なんで、青空さんはそんなに俺達にくっつくの」
今日青空さんと話すきっかけの全部、俺か由乃に抱きついてからだったからな。
「ふふ、これで朝、昼、夜ではないけど、3回の抱きつき成功だね〜」
「何そのチャレンジ」
「まあ、そんなのはやってないんだけどね〜」
じゃあ、ただ単に捕まえる為だけに、俺と由乃に抱きついてるってことか。
「だってゆうくん、足早に帰ろうとするから〜、捕まえないとって思ってね〜」
「なんで私を見るのよ」
「いや〜、なんでも〜。ところでゆうくん」
「どうかしたの?」
由乃のことを何やら見ていた青空さんが、話を変えて俺に話を振ってくる。
「いや〜ね、釣り行かない?」
「今から?時間なくない?」
「案ずることなかれ、ゆうよ釣りは釣りでも、堤防ではなく釣り堀行かないって話」
どんな語り口調だ、と言いたいレベルで、今までの語り口調とは違う口調で、話す青空さん。
「釣り堀か…」
「僕の家の近くにあるんだよ、釣り堀。だからさ〜」
釣り堀自体行ったことないし、堤防の時より比較的マイルドで釣りやすそうではあるけど、俺には今日…
「青空さん、その誘いは魅力的なんだけど」
「え?僕が魅力的?」
「そうじゃなくて、俺も行けたら行きたかったんだけど、今日課題やんなくちゃ行けなくて。ほら提出あるでしょ?」
「あ〜、そういばそんなものもあったような」
これ言い方的に、青空さんも終わってなさそうだな。
「だから、俺帰ってやんないといけなくて。まだページ結構あるし」
俺の怠惰によって、残りページがまさかの10ページ。ガチでやれば、終わるぐらいだから、まじで遊んでる暇は無い。
「そうか〜、ゆうくんは課題か〜…僕の家来る?」
「急に来たわね」
「多分、僕も課題終わってないし〜、それに今日僕の家親居ないんだ」
やっぱ青空さんも、課題終わってなかったんだ。と言うか、ちょっと不穏な言葉が聞こえてきたような。
「だからさ、一緒にやらないかい?」
「別に、勉強だけならいいけど」
昼の時みたいに、妨害されなければ、全然行ってもいい。
「そうかいそうかい、じゃあ行こうか僕の家に。お家デートだね〜」
「それ、私も行ってい?」
「え〜僕はゆうくんと2人きりで勉強したいんだけどな〜」
「いや、俺は由乃に来て欲しい」
青空さんは刈谷さんみたいなことする人じゃないけど、親居ない環境は、由乃と言う3人目がいた方が俺は助かる。
「そ、そうありがと…ほら、青空の愛しの優が言ってるんだから、いいでしょ?」
「しょうがないな〜、ゆうくんに免じていいよ。変わりにゆうくんは僕にキス1回ね」
「なんで、俺が代償を支払うことになってんの」
なんとか由乃を勉強会に引き込むことに成功し、そのまま青空さんの家で勉強することとなった。
「さあ2人とも、ここが僕のお家です」
青空さんの後をついて行って、しばらく歩いたぐらいで、青空さんの家に到着した。
「そこそこ歩いたけど、毎日この距離歩いてんの?」
「まあそうだね〜」
青空さんの家は、学校へ行くのに歩きだと少し遠いと感じるぐらいの距離感だった。
これを毎日と考えると、俺はなかなか耐えられん。
「電車とか使えばいいのに」
「そうなんだけどね〜、ほら学校の近くの駅行ったって15分は歩くだろ〜?だから、歩いた方がまだ時間かからないんだよ〜」
「確かに…そうなのか?」
一応学校からここまで来るのにだいたい25分、ここから最寄りの駅の時間は分からないけど、仮定で10分ぐらいにすると、時間は同じな気がするけど。
「まあまあ、そんなのはいいからさ〜とりあえず上がりなよ〜。僕の部屋は暑いだろうけど」
「おじゃましまーす」
「おじゃまします」
面倒な計算は辞め、青空さんのお家へ上がらせてもらった。
「姉ちゃんおかえり」
「弟よただいま〜」
「……」
玄関で出迎えてくれた、青空さんの弟らしき子が俺の方をめちゃくちゃ見つめてくる。
「ど、どうかしたの?」
「あ!姉ちゃんが彼氏連れてきた!」
「あ、ちょっと待って…」
俺が訂正するために、引き留めようとするも、お構い無しにドタドタと走り去って行ってしまった。
「あの子は由乃が見えてないのか…」
由乃のことが見えていれば、青空さんの彼氏が俺という勘違いはしなかったはずなのに。運悪く、俺と由乃が被ってて、見えなかったのか。
「まあ優、別にいいじゃない子供なんだし」
「そう…かもな」
家族ではあるけど、シスコンとかじゃなければ、姉の彼氏なんて忘れることだろうし、とりあえずいいか。
「ところで弟くん何歳?」
「えっと〜小5だから〜、今は10歳かな〜」
「へー元気だね」
確かに青空さんに比べるとろ声と行動が結構活発なタイプのように感じられた。
「そうなんじゃないかな〜、運動会じゃリレー出てるらしいしね〜」
「ほんとに真逆ね」
「それ、バカにしてるでしょ〜。ま、ここで立ち話してても、何も無いし〜早く僕の部屋行こうか」
靴を脱ぎ、2階にあるらしい青空さんの部屋まで案内された。青空さんの部屋には、釣竿がいくつか置かれている。
「そこそこ綺麗ね」
「そうでしょ〜、僕が綺麗にしてる訳じゃないけど」
「自分の部屋ぐらいは、綺麗にしなさいよ」
由乃の言う通り青空さん部屋は整理整頓されており、床に何かが散らばっていという訳でもなく、普通に綺麗な部屋だ。
「これも、一重にお母さんの頑張りのおかげだね〜。ところで、2人ともお茶でいいかい?」
「あ、おかまいなくー」
青空さんがお茶を取りに行くのと同時に、俺達は青空さんが出してくれた小さめのローテーブルの上に、勉強道具を広げ始めた。
「由乃は漢字やんのか」
「そうね、明日小テストあるし」
「姉ちゃんは…居ないな」
バッグからいろいろ取り出して準備していると、こっそりと先程の青空さん弟が部屋に乗り込んできた。
というか、さっきリビングに行ったはずなのにここにいるって、どんなマジックを使ったんだ。
「なあ!お前姉ちゃんの彼氏なのか?」
わざわざ、隠れてここまで来て、やることが彼氏チェックなのか。
「いや、普通に俺は青空さんの彼氏じゃないよ」
「え?違うの?学校で平山田くんが、女が男を家に呼んだら八割型彼氏、て言ってたのに?」
一体どんな会話をしてるんだ小学5年生。
「それでも、俺と青空さんはそんな関係じゃないよ」
「えーなんだつまんないの」
そういうと、いじけたような顔をして残念がり始めた青空さん弟。
人の関係をつまんない呼ばわりは、普通に酷くないか。恐ろしいな、小5。
「じゃあそっちの人と、お兄さんが付き合っきあってるってこと?」
今度は、しっかり由乃が目に入ったみたいで、俺と由乃の関係について問いただしてきた。
「それも違うかな」
「そ、そうそう私達はただの幼馴染だからね」
「なんだお兄さんつまんないね」
まじで、この子は俺に何を期待してるんだ。まだ恋愛に一喜一憂したり、人の恋愛話でわくわくする歳じゃないだろ。
「そうだよ〜、その2人は付き合ってないよ〜。それに、僕とゆうくんは〜、彼氏彼女な単純な関係じゃなくて〜夫婦だから」
「ね、姉ちゃん…」
俺が軽くイラついていると、後ろからおぼんにお茶を乗せた青空さんが立っていた。
「あと〜君は、人の部屋に勝手に入らない」
「痛い痛い、ごめん姉ちゃん」
青空さんが軽くほっぺをつねると、そのまま逃げるように部屋を出ていった。
「いや〜ごめんね〜弟が」
「そこはいいんだけど、嘘を家族にまで広めるのやめてくれないかな」
「え〜、ほんとじゃないか〜」
まだ周囲の人ならギリギリ許せるけど、家族にまで広まるとほんと収集つかなくなるから、ほんとにやめて欲しい。
「まあ、とりあえず勉強やるよ。俺、提出まずいんだから」
「はーい頑張ってね〜、僕はおやすみー」
「ちょっと青空さん」
青空さん弟については、後でどうにかしようと思い勉強を再開しようとしたところ、青空さんが勉強をするのではなく俺の硬い太ももを枕に寝始めようとする。
「青空さんも、提出まずいんじゃないの?」
「僕かい?僕は、さっき確認したら終わってたし〜、その他の勉強道具も学校だしね」
つまり青空さんは、俺をいろいろとからかって、俺の膝枕で寝ると。
「だから僕は寝るよ〜、帰る時教えてね〜」
「でも冷房ついてるから、風邪ひくよ」
「だい…じょうぶ…その時、は…ゆうくんが暖めて…」
「もう寝た」
俺の膝枕に制服のまま寝て目を瞑ると、ほんの数秒で眠りについた青空さん。俺の膝枕そんな寝心地いいものじゃないだろうに、よく寝れるな。
「由乃これどうする?」
「とりあえず、そのまま放置しといたら?寝ててくれるなら、勉強には集中出来るだろうし。あとは、適当にこれでもかけておけば」
由乃が青空さんのベットから、タオルケットを引っ張って青空さんの体にかける。
「こんなもんでしょ、さ勉強勉強」
「慣れてるな」
「そう?普通こんなもんじゃない?私も知らないけど」
青空さんにタオルケットをかける由乃の動きは、手馴れていてさながら母親のように見えた。
「ゆうくん…すきだよ〜…」
「………」
「口も塞いだ方が良さそうね。どこかガムテープか普通のテープないかしら」
「ストップストップ、それはやりすぎだって」
青空さんが寝言でも俺をからかってきたところ、由乃が青空さんの勉強机からテープを探し始めた。
てか、寝言でも俺をからかおうとするって、青空さんすごい精神をお持ちのようで。
今気づいたけど、青空さんすっごい、幸せそうな顔!
「青空さん、青空さん起きて」
「ん…んん。んんん!」
由乃によって口の塞がれた青空さんが、少し怒りながら起き上がった。
「ちょっと、これはないんだい!これでも、僕ここの家のものなんだぞ!」
「あ、ごめん。あまりにも青空の寝言がうるさくて」
俺に好きと言ったあと、何故か数分おきに寝言を言っていて、由乃がそれに耐えきれなくなり、青空さんの口にテープを貼って黙らせていた。
「ゆうくんも、ゆうくんだよ。きみのお嫁さんがこんな姿になってるってのに、黙って見てるなんて〜」
「いや、青空さんどんな反応するか気になって」
いつも大体のことに対して、そんなに反応を示さないから、こういうことしたらどうなるのか好奇心が勝って、由乃の行動を見守る方向にシフトした。
「もう、なんなんだきみ達は」
「青空も怒るのね」
「僕だって怒る時は怒るよ!」
青空さんの怒りに軽く笑いながら、俺と由乃は片付けをし、そのまま玄関へ降りていった。
「もう、やっぱ由乃ちゃんは断っとくべきだった」
「ごめんごめん」
「もういいから、バイバイ。あ、ゆうくんは行ってきますのチューがいいかい?」
寝起きで、しかもさっき怒っていたのに、平常運行をかましてくる青空さん。
「じゃあね青空さん、まだ学校で」
「つれないな〜、恥ずかしいなら、恥ずかしいって言ってくれよ〜」
そのまま靴を履いて青空さんの家の玄関の扉を開け、外に出る。時刻は18時ではあるけれど、夏のためまだ夕日が見えている。
「にしても、ほんとに青空はずっと寝てたわね」
「俺は、それのせいで少し足が痛い」
青空さんが俺の膝枕で寝たのは、勉強時間と同じく2時間ほど、そのせいで正座をしていた俺の足はいま超痛い。




