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151 映画の感想戦

「鍵島くん」

「優香」


スクリーンの中で、カップルの高校生ふたりが仲良さげにお互いを求め合う。求め合うとは言っても、濡場という訳ではなく、もうちょいソフトな感じである。まあ、それでも水無口さんは苦手なようで、顔を隠してチラチラと見る感じになっているけど。優來は、いつもと変わらない顔で、スクリーンを見続けている。

映画の内容としては、彼女との最後の悲しくも暖かいそんな時間を描きつつも、The青春と言った風合いもある感動作と言った感じ。さすが水無口さんの好きな作品なだけはある。前の映画と比べても、断然面白い。



映画がおわって、周りの席の人達は思い思いに感想を口にし始める。今回の映画は、普通に拍手がしたくなるいい作品だった、


「さて、2人とも行こ――水無口さん!?」


席から立ち上がって、優來と水無口さん2人のことを交互に見たら、優來はお気に召さなかったのか、ちょっとうとうととしていて、水無口さんは涙をぽつぽつとこぼしている。


「え、えっと何か。優來、ハンカチかなんか持ってない?」

「ティッシュ」

「まじか、ありがとう。水無口さん、これ使って」


優來からポケットティッシュを受け取って、水無口に渡す。


(すまなかっまたな。最後の展開は、わかっていたのだが、映像となると臨場感があって、つい涙が)

「結構感動モノだったもんね。俺は、泣いてないけど」


水無口さん見たく、泣くはなかったけど少しばかり目元が潤んだ。


「ちなみに、原作の方は泣いたの?」

(今ほどでは無いが、少しは泣いたな。母君に見られ、心配されたが)

「あらら」


涙は消えたけれど、思い出してたまにこぼれる水無口さんを心配しつつ、俺らは劇場を後にして前回同様にファミレスの方へ行くこととなった。


「そういやここの店、俺たち要注意人物のリストに入れられてる可能性ない?」

「やらかした?」

「そうっちゃそうなんだけど」


あの時のやつは、やらかしなのだろうか。当事者である以上、やらかしか。


(まあ大丈夫だろう。我らの言い分も、わかってくれていたしな)

「そうかなぁ?」


俺の中で心配がうずまきながらも、予約欄に名前を書いて待っていると、意外とすんなり行けた。俺の心配は杞憂に終わった。


「さて、なに食べるか。水無口さんは、またお子様ランチ?」

(何をいう。今回われは、ポップコーンは食べていないからな、普通に食べることが出来るぞ)

「優來はどうする?お子様ランチか?」

「普通に食べれる」


小さい2人にそんなちょっかいをかけながらも、俺は俺で食べるものを決める。今日は普通にステーキでいいか。


「さてと、やるか。映画の感想戦」


料理も注文し終わり、ドリンクバーから飲み物を持ってきたことで、俺は場を仕切って感想戦を始めようとする。


「優來、なにかあるか?眠そうにしてたけど」

「お兄、からじゃないの?」

「俺は結構良かったと思うぞ」

「浅い」


眠そうにしてたやつに言われたくないな。


「じゃあ、優來はどうなんだよ」

「テンプレ感」

「優來、わかるのか」

「なんとなく」

「なんとなくかい」


優來は優來で、前の俺と同じレベルで読書しないもんな。そういうのはなんとなくか。


(そうだな、テンプレと言えばテンプレだったかもしれない。ただ、ただテンプレだけという訳ではなく、あの作品は10人に10人が青春だ、と感じることが出来るテイストがしっかり加えられているのだ。ただ、テンプレ通りじゃなく、しっかり味付けがされているというのが、あの作品の良さなのだ)

「なるほど」


実際俺も見ててそんなことを思った。ということは、そのテイストがしっかり効いていたということなんだろう。


「いわれてみれば」

(そうだろぉ)

「てか水無口さん、そこまでの読み込みしてるのすごいよ」

(まあ2回も読んでいれば、これくらいできたりするものだ)


水無口さんはそう言うけど、俺は全く信じられない。水無口さんのやってることって、ほぼ授業みたいなことなわけだしそれをたった2回の読書でできてるのは、信じられん。


(きっと、優もいつかできるようになるぞ)

「俺は、ダメそうかな」

(何を謙遜しなくとも、優ならできる)

「そういうんじゃないんだよな」


なんか、そこまでの域に達するのが怖い。


「お兄、化け物ならなくていい」

「化け物って」

(我のこれは、異常なのか)

「異常じょないって、すごい能力だよ。やっぱ、目指してみような」


俺がそう言うと、少ししょんぼりしていた水無口さんの顔は、晴れ軽やかにペンを走らせ始めた。


(そうかなら、我と頑張ろうではないか。とは言っても、多量の本を読むだけだが)

「多量の本か」


それぐらいなら時間だな、その水無口さんの言う多量の本の冊数はわからないけど。


「頑張ってはみるよ」


そんなことを話していると、料理が運ばれてきた。ちょっと、優來が水無口さんに毒を吐くような、とは思いつつも、そんな考え料理の匂いで掻き消えたため無視して食べ始めた。



「水無口さんって、結構少食だよね」


水無口さんが今食べている、ハーフチキンを見てそう思い口に出した。


(まあそうだな。我はこの身長相まって、あまり胃は大きくない。だが、優來殿は優と同じくらい食べるのだな)

「そこそこ食べれる」

「そうだな、優來は割と食べれるんだよ」


そう言いながらなんとなく優來の頭を撫でる。


「優、くんは……た、たく、さん食べれる、子……の方、がす、好き?」


基本大事なことしか口に出さない水無口さんが、何故かこの質問を口に出して言った。ちょっとした国勢調査的なものかな。


「俺は、別にどっちでもいいな。あ、でも沢山食べる人って、見ていて気持ちいいってよく言うよね。だからって、容量以上食べるのはやくないけど」

(そうか。なるほど)

「逆に水無口さんは沢山食べる人って、どう思う?」


俺がそう聞くと、水無口さんはポッと顔を赤くしてから口を開いた。


「い、いい、と……思う、よ」

「ほんと?じょあ、吐くまで食べようかナ?」

「お兄、やりそう」

「なわけないだろ?俺は高校生なんだから、自分の容量くらいわかってるよ」


優來の言葉に笑いながら、返して肉をパクパクと食べる。沢山食べ人は、いい感じに見られるのか。一応、記憶しとこ。



「はー食べた」


会計を終わらせて、そこそこ満腹に近い状態で店を後にする。


(優よすまない、歩くペースを少し遅くしてくれないか?)

「もしかしてあれで、結構ギリギリな感じだった?」

(そのようだ。割と1歩1歩がキツイ)


まじか、水無口さん沢山ジュース飲んだ、とかそんなでもないのにギリなのか。ほんと少食だな。


「それじゃあ、おんぶないしお姫様抱っこでもしようか?」


歩くのがきついなら、これが一番だろう。


(だがそれは、優に悪い)

「別にいいって。水無口さん軽そうだし」

(そうか)

「そ、それじゃあ……おねが……いし、します」

「はいはーい」

「んん!?」


言われてすぐにお姫様抱っこすると、水無口さんは驚いておどろいた声をだした。


「それじゃあ行こうか」

「お兄、恥ない?」

「そんな、人を無機物みたいに言うなよ。ね、水無口さん。水無口さん?」


水無口さんの顔をみると、水無口さんはスケッチブックで自身の顔を隠してしまって、表情が見えない。その代わりか、スケッチブックに2文字だけ書かれている。


「無心」

私はいい感じの年齢なのに、容量は未だに把握仕切れてないです。基本、沢山食べるぞー、て思って意気揚々と食べると、6割ぐらいでキツってなります。

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