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15 ヤンキー少女と殺人願望少女

「それでは、お疲れ様でした」


前にじゃんけんに負けて選ばれた図書委員の集まりがようやく終わり、委員の人がぞろぞろと図書室を後にしていく。


かく言う俺は、今日持ち帰ろうとしていた、ワークを教室に置いてきていたのを思い出して、昇降口方向ではなく教室方面へ移動する。


て言っても、教室が空いている確証は無い。


「おう、優じゃねえか」

「初愛佳さん、こんにちは」


教室方面へ歩いていると、何故かこんな変な時間に、廊下を歩いている初愛佳さんとバッタリ出会った。


「なんだ、優も居残りか?」

「俺は委員の仕事ですね。てゆうか居残りって…」


ついに初愛佳さん、授業出なさすぎて個別で呼ばれ始めたのか。


「いや、違うぞ俺はちょっと自習してから帰ろうとしてただけでな」

「なんだ、てっきり補習かなんかなのかと」


まあ、初愛佳さん見た目と行動の割に真面目だし、自習しててもおかしくは無いけど。


「で、なんでお前はこっちに戻ってきてんだ」

「実は教室に忘れ物しちゃって」

「ドジだな、じゃあ一緒に帰ろうぜちょうど出会ったとこだし」

「いいですけど、家の方向は」


俺の家は比較的近いとこにあるけど、初愛佳さんの家の位置によっては校門でさよなら説全然ありえる。


「あーそうか。まあ、いいんだよそんなのは後で、気にすんな」

「まあ、そうですね、気にしててもしょうがないですし、とりあえず教室行きましょうか」


初愛佳さんの言う通り、家の方向とか気にしててもしょうがない。今は、教室が空いていることを願おう。



「てか、この時間教室空いてんのかよ」

「実は俺もそこが心配で…お、良かった空いてる」


教室内には誰もいないけれど、運良く教室のドアが空いていたのでそのまま教室に侵入。ロッカーからワークを入手した。


「優、なんか校門通るやつらが全員同じ方向見て通り過ぎてんだけど、なんかいんのかな」


俺がロッカーから、ワークを取りだしている間、窓から外を見ていた初愛佳さんが、よくわかるな、と思うようなことに気がついて、教えてくれた。


「ほんとですね」


窓に近づいて、初愛佳さんの指さしたところを見ると、確かに校門を通る人達が同じところを見てから帰っている。


ここからはよく見えないけど、とりあえず黒髪の人が立っていることだけは何となくわかる。


「有名人でも立ってんのかな」

「さすがにそれはないでしょうけど、気になりますし見に行きますか」


有名人はないだろうけど、通る人皆の目を奪うと考えると相当なイケメンか、美人がそこに居るのだろう。


「それにしても、そんなに凄い人を待たせる人ってどんなやつなんでしょうね」

「さあな、普通に彼氏、彼女なんじゃね。それか、弱みを握ってるとか」

「それは、漫画の世界とかの話では?」


昇降口から出て初愛佳さんと校門方面へ歩く。ちなみにうちの学校は、下駄箱はあるものの少し前に1足制になったらしく、上履きの履き替えは必要ない。


「さーてどんな奴がいるのかなー」

「ちょっと初愛佳さん走らないでください」


昇降口を出た途端に校門前に立つ人が気になりすぎた初愛佳さんが一気に走って行く。


「さーてこんにちは…おー」

「初愛佳さん急に走らないでくださいよ…こんにちは」


校門前に立つ人を見た初愛佳さんが関心している中、僕は少しの恐怖を覚えた。なんせそこに居たのは、黒嶺さんなのだから。


「あ、梶谷さんようやく来ましたね。これ昨日塾で…」

「初愛佳さん逃げますよ!」

「お、おいなんだよ優」


一瞬で黒嶺さんの言っていたことを、思い出したため初愛佳さんの手を引いて校舎内へ戻っていく。


「なんなんだよ優」

「とりあえず急いで逃げますよ!」


このままだと前に黒嶺さんの言っていた、俺だけじゃなくて近づいた女の子も殺すが叶ってしまう。


「わ、わかった優が言うなら」

「ちょ、ちょっと初愛佳さん!?」


まあ、確かに初愛佳さんの方が俺よりも身長高くて力もあって運動神経もあるかもしれない、でもさ男の俺がお姫様抱っこはなんか男として恥ずかしいものがあるんだけど。

しかも絶妙に初愛佳さんの胸部が俺の上半身に当たってるし。


「で、どこに逃げんだ」

「とりあえず図書室に逃げましょうか」

「わかった任せろ」


初愛佳さんの走る速度は早く、結構なスピードで階段を駆け上がりあっという間に図書室に到着した。


「ここからどうする?」

「とりあえず俺を下ろしてください」

「あ、すまん」


俺が下ろしてくれと言うと、ゆっくりと慎重に地面に下ろしてくれた。


「まあ、隠れるなら受付カウンターの下ですかね」

「そこ入れるのか」

「人2人は余裕で入れると思いますよ」


カウンターの下なら黒嶺さんにもバレにくいだろうし、頃合いみてこっそり帰ろう。次塾であったら何されるかわかんないけど。


「てゆうか優さっきの女」

「黒嶺さんのことですか?」

「もしかして優とそう言う関係なのか?」


なぜか少しもじもじしながら俺と黒嶺さんの関係について質問をする初愛佳さん。


「正直に言ってくれ、もしかしたら俺が悪い可能性あるわけだし。そしたら俺も一緒に謝るからよ」


多分だけど初愛佳さんから見て俺と黒嶺さんは、付き合っているという可能性が出てきてて、そして俺が浮気してる所を見られたと言った感じになっているんだろうか。


「いや、違いますよ。そもそも俺が、あんなとてつもない美人と付き合えるわけないじゃないですか」


実際告白されてるからそこのとこなんとも言えないけれど。


「そうか?じゃあなんで逃げたんだよ」

「それはですね…まず、誰か来たとりあえず隠れてください」


そんなことを話していると、誰かの足音が図書室の方へ寄ってきたため、初愛佳さんをカウンター下へ詰め込む。


「あれ?空いてるのに誰もいない。本借りたかったんだけどなー、まあいいか明日にしよ」


近づいてきたのは、黒嶺さんでは無い別の人だったらしい。


「それで、なんで付き合ってないのに逃げるんだよ。それに今だって隠れてるし。な、ホントのこと言えよ優」


ホントのこと言うにしても、凄い言葉に困る。だって、あの人が俺のこと好きでしかも殺そうとしてくるって、あまりにも2次元的すぎるでしょ。


「えっとですねー俺と黒嶺さんは…」

「梶谷さんこんなとこで何してるんですか?」

「ああああああああぁぁぁ!黒嶺さん」


そんなに大きい声出してた訳でもないのに、黒嶺さんの足音全く聞こえなかったんだけど。なに?黒嶺さん忍者かなんかなの?


「いや、そのこれはですね…」

「とゆうかはいどうぞ梶谷さん、学生証」


カウンター下を覗き込む黒嶺さんから、俺に学生証が手渡された。


「梶谷さん私見るなり逃げるのでさっき渡せなかったんですよ」

「ありがとうございます。でも、学生証くらいならまた塾で渡してくれれば良かったのに」

「そ、それは私にだっていろいろあるんですよ…」


なんだ、てっきり俺を殺すのを早めたのかと思ってたけど、ちゃんとした理由があってこっちに来てたんだなよかったよかった。


「ところで梶谷さん、先程からいるそこの不良さんは誰ですか?」

「う…」

「そうだ、優この美人さんとの関係はなんなんだよ」


一気に2人に挟まれた、初愛佳さんへの説明はどうにかなるだろうけど、1番の問題は黒嶺さんだ実に困った。


「えっとですね。まず黒嶺さんは、俺と同じ塾に通ってる人で俺たちは一切付き合ってないです」

「そうですねー()()付き合ってないです」


黒嶺さんの「まだ」という部分を聞いてか、初愛佳さんの顔が少し困惑したような顔に変化した。


「で、こちらの初愛佳さんは一緒にお昼を食べる中と言うか、そんな感じです」

「ま、まあそんな感じだな」

「へーお昼を…」


黒嶺さんはちょっと不穏だけど、何とか黒嶺さんの俺殺人願望を隠しつつ2人との関係を説明できた。


「でもさ優、他校の生徒勝手に学校の敷地内に入れていいのか?」

「「あ…」」


完全に抜けてた、勝手に学校関係者以外を校内に入れると校則違反で、俺の友達は1週間ぐらい特別指導送りをくらっていた。つまりこれがばれれば、俺と初愛佳さんは特別指導行きになる。


「とりあえず早くここから退散しますよ。とりあえず黒嶺さん暑いかもですけど、これ羽織ってください」


申し訳程度のカモフラージュとして、教室の冷房対策に持ってきたブレザーを黒嶺さんに着てもらう。大きさはぶかぶかで彼シャツ状態異常になってるけど、学校から早く逃げれば無問題。


「ありがとうございます…」

「おい、それ大丈夫なのかよ」

「わかりません。だから早く逃げますよ」


急いで図書室から出て、先生に見つからないようなるべく身長に校門を目指す。1番面倒なことに、門が2個しかないのが辛いしかも綺麗に北門と南門。


「慎重になるべくゆっくりですよ」

「わかってるって、俺も特別指導は面倒だからな」


噂によれば特別指導は、一生念仏を唱えるように漢字を書かされるらしい。一見簡単そうだけど、俺の友達いわく精神的に辛いらしい。


「おう!そこにいるのは優じゃないか。女2人も引っ掛けて何してんだ」

「夜梨!?」


図書室を出てすぐ、なぜかほんとに何故か帰ろうとしている夜梨と遭遇した。


「なんでこんな時間にいるの?」

「忘れ物して1回帰ってきたんだよ。お前こそ何してんだよそんなこそこそ、しかも2人もおん…あーわかったぞ。優、お前も男になったな」

「いや、勝手な勘違いやめてくれる!?」


夜梨には、俺が誰もいない学校でこの2人とちょっとした展開になったとでも思ったのだろう。


「てゆうか、お姉さん美人だね。でも、こんな美人いたっけこの学校に」

「夜梨が知らないだけじゃない?」

「いや、そんなことは無いはず。こんな美人忘れるわけないし、しかも付き合いたい女子ランキングにも乗ってなかったし」


ここに来て足を引っ張ってくるいつぞやの付き合いたい女子ランキング。


「おい!お前」

「そうかもう1人…その金髪は…」


初愛佳さんに呼ばれ顔を見るなり夜梨の顔が、何となく青ざめていく。


「し、失礼しましたー」


その言葉と共に走って、下駄箱方向へ向かう夜梨。ちょっと、夜梨には悪いけど今回はしょうがない。


「ありがとうございます、初愛佳さん」

「まあ、俺に出来んのはこんくらいしかないからな。もしもん時は任せろよ」


初愛佳さんがめちゃくちゃ恐れられてるヤンキーでよかったと、初めて思える気がする。



「よーし到着!」


夜梨との1件以降、誰にも見つからず安全に黒嶺さんと校門を出ることが出来た。


「黒嶺さんも今度からは気をつけてくださいね」

「私としたことが今回は迂闊でした」


正直学校侵入よりも、俺の事を殺そうとしてくるのを普通に辞めて欲しいんだけど。


「とりあえず黒嶺さん、ブレザーを」

「それなら私洗って返しましょうか?少し汗もかいちゃいましたし」


そうは言うけれど、黒嶺さんを見ても全く汗をかいてるようには見えない。なんなら肌が白すぎて、少し寒そうに見える。


「いや、いいですよ女子高生の汗は需要あるんで」

「優、お前…」

「違いますよ、冗談ですって。それじゃあお願いしてもいいですか?どうせしばらくは、本格的な夏が始まって気ないと思うので」

「わかりました、このブレザーは私が吸って…じゃなくてちゃんとクリーニングしてから、返しますね」


おい、なんか今不穏なこと言いかけてなかったか?


「まあ、今日は帰りましょうか。いろいろと疲れましたし」

「そうだな。そうだ優、ちょっとコンビニでアイス買ってこうぜ」

「いいですね、疲れを癒すために甘いものを。黒嶺さんはどうしますか?」

「私も着いていきますよ、勉強には糖分が必要なので」


そのままの勢いで3人仲良く学校近くのコンビニでアイスを食べた。

その間も黒嶺さんは、ブレザーを着てたけど暑くないのかな。

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