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144 甘えたがりシスターとストーカー少女

「いや〜、疲れたな。優來」


テストも終わり伸びをしながら優來と校舎を出る。これで、夏休みまでは午前授業、しかも授業一コマの授業時間も短縮だ。テスト返しとかいう、不安要素はあるけれど。


「優來はテスト、上手くいったか?」

「ふつう。前回と、変わんない」

「そう。よかった」


そう2割ばかり優來の真似をすると、優來はムッとした顔を俺に向けてきた。そんな優來に「ごめんごめん」と謝りながら、前回通りの優來に安心する。優來の勉強は今回、俺が見ていて俺の教えも混じっている。その教えが、上手いこといっていたというのが俺の安心材料だった。


「さてと、優來。これからどうするか」

「帰る、だけ」

「おいおい、優來。お前はほんとに、高校生か?」


俺がそんなことを優來に聞くと、優來はなんのことやらみたいな顔をした。


「いや、単純に今日母さん昼居ないらしいから、昼どっか食いに行かねって話なんだけど」

「そういえば」


今日、母さんは何やら由乃の親含めた、何人かの母親どうしでお茶に行くやらなんやらとの事で、今日は居ないと、朝言っていた。


「さ、それでどうする?」

「なんでも」

「正直、俺もなんでもいいんだよな」


さて、困った。母さんに優來と昼を食べて、と言われお金は渡されてるし、適当にコンビニとかで――


「そういや、メイドカフェ行きたかったんだよ。今から行くか?お触りに」

「厳禁」

「冗談冗談。ま、普通にコンビニかな。近くあったっけ」


そんなふうにここら辺のマップを頭にうかべていると、強めの風がビュウっと吹いた。それと共に後ろから、スマホが落ちてカラカラと言ったような音が聞こえてきた。


「あ、ヤバァ」

「「ん?」」


後ろから聞こえてきた焦りの声に、俺と優來が同時に振り返る。


「あ、忍さん」

「ち、違。私、通りすがりのストーカーで」

「もっとダメじゃん」


俺と優來の後ろにいたのは、ただ偶然電柱の後ろに隠れていた人ではなく、忍さんだった。


「またストーカー?」

「またって。それを言うなら、梶谷くんだって」


口をもにょもにょと動かす忍さんは、目線を俺から優來の方へ移した。


「ああ、そゆこと可愛いでしょ」

「か、可愛いけど」


なんとも優來の可愛いを肯定しにくそうな忍さんに、「安心してよ」と声をかける。


「優來は、俺の妹だから」

「あ、そうなの?」


俺が優來のことを話すと、忍さんはハッとしてけれども、疑問符を浮かべたのか首を傾げた。


「えっと、悪いんだけど、義理?」


もう、何となくそんな気がしてたよ。これを言うのは、何度目なんだろうな。とりあえず、と息を大きく吸って、それを一気に吐き出すのと同時に腹から声を出す。


「実妹だよ!」


俺の大声に対して、ビックリしている忍さん。にしたって、そんなに俺と優來は似てないのか。まじで、連敗記録更新しまくりだ。


「ん?どうした優來」


俺の大声に忍さんが固まる中、優來が俺の手を握ってきた。そんな優來になげかけた質問に対して、「なんでも」とそっぽを向きながら返答を返した。


「そうか。あ!そうだ、忍さん俺らの昼飯決めてくれない?」

「お昼?」

「そう、lunch」


俺が忍さんにそう頼むと、忍さんは顎に手を当てしっかり考え始めてくれた。


「えっと、ラーメン。とか?」

「結構普通なのにしたね」

「普通」

「別にいいでしょ!」


忍さんが大声を出す中、俺と優來は母さんを合わせ、お互いの目を見る。


「じゃあ、ラーメンにするか」

「普通でごめんね」

「根に持たないでよ」

「じゃあ、行くか。せっかくだし、お店の食べたいし、探すか」


ラーメンしかも、母さんが家にいないと来たら、どこかで食べたくなるのが運命だろう。ということで、スマホを取りだしラーメンと、適当にマップに検索を入れる。


「あの、梶谷くん」

「どうかした?ストーカーはやめてよ」

「やらないよ。その、私も着いて言っていいかな。実は、まだお昼食べてなくて」

「俺は別にいいけど。優來は、大丈夫か?」

「ストーカー」


忍さんがストーカーと聞いて、あまりいい印象は抱いてないらしい優來が、忍さんのことを訝しんで見ている。


「べ、別に悪い1つじゃないよ〜」


そんな優來をおさめるように、柔らかい声で話しかける忍さん。


「ほんと」

「まあ、悪い人ではないのかな」


一応、この間ピンチの時助けてくれたわけではあるし。


「そういうこと」

「まあ、あれだよ。変な癖がある人って感じ」

「酷い」


実際忍さんは、俺をつけたとて盗撮するわけでも、殺しにくる訳でもない。存在としては、無害そのものなのだ。


「たぶん話してればわかるよ」

「わかった」


俺の説得に優來も納得、その結果忍さんも昼に同行することとなった。


「思いのほかだな」


3人でラーメン屋に来たはいいけれど平日の昼だと言うのに、割と人が並んでいる。服装的に見ても、サラリーマンだけではなく、大学生なども結構いる。


「人気、なのかな」

「評価高いとこにしたからね」


俺が選んだラーメン屋は、近場の中でも評価数が多いなおかつ星が高いという場所を選んだ。それでも、30分待ちは予想外だった。


「2人ともどうする?」

「私は並んでもいいけど。優來ちゃんと話したいし」

「いいよ」


それなら、と俺たちは列の1番後ろに並ぶ。忍さん、優來といて無言でも気まづくはないからいいけど、とりわけ暑すぎる。


「ちなみに梶谷くん。ここって、何系ラーメンのお店なの?」

「えっとね、煮卵と坦々麺」

「煮卵?」

「ここのお店の名前検索に入れると、サジェストにでてくるんだよ」


どうやらこのお店は、普通のラーメンに入った煮卵と坦々麺が人気みたいだ。煮卵に関しては、結構な長時間煮込んだものらしく、とてつもなくだしが染み込んでいるらしい。坦々麺は、鰹だしをベースとしたその他の魚介スープが人気の坦々麺らしい。


「そうなんだ。じゃあ私は、煮卵のやつにしようかな。辛いのって苦手だし」

「俺もそうかな。優來は、どうする」

「坦々麺」


1単語ではあるけれど、そんなことを言う優來に俺と忍さんは、驚きの声を上げる。


「お前、辛いの行けたっけ?これ、めちゃ辛そうだけど」

「味覚、美味しそうって言ってる」

「そうか?ならいいんだけど。一応食べれなそうだったら、言えよな。俺も食うから」


俺もある程度なら辛いものは食べられる。激辛は専門外だけど。

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