137 殺人願望少女とお嬢様
「黒嶺さんこんにちは」
今日も今日とて塾。ということで、教室に入ると既に黒嶺さんは席につき小テストに向け、勉強を行っている。
「やっぱ黒嶺さんは早いね」
「梶谷さんは、ギリギリすぎるんじゃないですか?」
「そうかな。て言っても5……分。やば!」
時間を確認して、焦りを感じ急いで席につき教科書を開いて、テスト範囲のやり方を確認する。
「黒嶺さん、少し教えて」
「普通、家でやってくるものでは?」
「そうだけど」
別に勉強はしてなかった訳では無い。実際、宿題が範囲なのだから。とはいえ、この数学単元難しくて、復習しないと居残り再テストになりかねないんだ。
「まあいいでしょ――」
「それなら、わたくしがお教えしましょうか?」
「あ、ほんと。ありがとう。じゃあ、わかんないとこあったら訊くよ」
残り5分、運のいいことにここでは聞き覚えのない声の人に手がさしのべられ、聞きたいことを聞くことが出来た。
「梶谷、何点だ」
「10点です」
小テストも終わり俺の取った点数は満点の10点。これは、隣の人に大感謝だ。
「さてと、ありがとね二月さん。で、なんでいるのかな?」
テスト中に気づいて、一旦無視をしていたけれど、横にいるとなると気になるというもの。そもそも、二月さんの家って、前と同じであればここからそこそこな距離にあるはずだし。
「なぜ、と言われましても。梶谷様をおってきたんじゃないですか」
「お、おって……」
まずいな、お嬢様の権力によって俺の身元が調べられた結果、お嬢様がどんどん俺の生活に侵食してくる。
「なので、これからは塾でも一緒ですね。わからないことがあれば、わたくしになんでもお聞きください」
そう二月さんは、自信満々に俺へ宣言をする。これは、俺の命が危ないやつ。
「そ、そう。でも俺は聞くことないかな」
命の危機を感じ、暗に断りを入れると、後ろの殺気は少し薄くなった。
「え〜、もったいないですよ。せっかく、ここの株を沢山買って入塾したというのに」
「ん?ちょ、ちょっと待って」
頬に手をつけ悩むような仕草をした二月さんに静止をかける。明らかスケールがおかしい。なぜわざわざ株を買った?理由isなに?
「えっと、まあうん。何かあれば、訊くよ」
「ほんとうですか?なら、遠慮なくお聞きください」
「お、おっけー」
まずい。二月さんの入塾方法が特殊すぎて、断るに断れなくって受け入れると、薄くなっていた殺気が明らか濃くなった。
「そこ、静かにしろ――あ、やっぱいいや」
おい!おかしいって。絶対二月さんの株の力で、先生静かになってるって。二月さん無敵の人じゃん!
「く、黒嶺さん?」
「どうかしましたか、蝉さん」
おっと、これはお前の命はあと1週間以下だ、ということの意なのかな。
「これは違くてね」
「別にやり方を聞くのは構いませんよ。ただ、行動には気をつけてください」
「あたりまえだよ」
毎度言われて毎回気をつけるけど、ほぼ相手側の無知で殺されかけるんだよな。今回こそ……は無理そうだな二月さんがいる感じ難易度が高い気がしてならない。とりあえず、言い訳を考えておこう。
「えっと、じゃあここを梶谷わかるか?」
「ちょっと待ってください」
まずい。数学が始まって早々ピンチと言うやつだ。さて、問題がわからないとなってどっちに聞くか、いやここは素直にわからないというのが得策か。
「梶谷様、わからなそうですね。答えは、3x+4ですよ」
「え、えっと3x+4です」
「正解。それじゃあ、解説するぞ」
二月さんに助けられ、何とか事なきを得た。二月さんにありがとうと返すと、何も言わないけれどいえいえ、とでも言ったような笑顔で返された。
「二月さん助かるよ」
授業終わり、授業中の手助けの感謝を伝える。二月さんは、俺の顔を見てわかっていなそうなら、手を差し伸べてくれた。
「いいんですよ、それくらい。わたくし、家庭教師の方から先の範囲まで教えて貰っていますから」
家庭教師いるのに塾来るって、ますます俺目当てとしか言いようがないな。
「何を予習ぐらいで。普通の事じゃないですか」
二月さんの言葉を聞いて、横の黒嶺さんが二月さんには聞こえないくらいの声で、小言を吐く。
黒嶺さん様子を見るに、めっちゃ怒ってるという訳では無いけれど、ご機嫌ななめみたいだ。
「で、でもほんとに助かるよ。ここら辺の範囲って、やる時ちょうど休んでたから、ほんとに危なくて」
「それはそれは、長い間病にかかられてたんですか?」
「うん。まあ、ちょっとだけある人に捕まってて」
「それはそれは、大変だったでしょう?」
すごく言いたい。あんたに捕まってたからだと。
「大変でしょうけれど、このわたくしに梶谷さんお任せ下さい。なんせ、わたくし梶谷様の奥さんなのですから、なんなりとお申し付けくださいな」
「妻?」
二月さんのどうどうの妻宣言を聞いて、教室内の視線がこっちへ集中する。それともに、背中の方から鋭く冷たい気配がではじめた。
「ちょ、ちょっと二月さん。違うでしょ」
「あ、すみません。わたくしとしたことが、まだでしたね」
わざとらしくまだ、の部分を強調して話す二月さん。例のごとく後ろのさっきやつが増すわけなんだけど。
「それも違うでしょ」
「違うんですか?おかしいですね、あの時もうわかってもらえたかと。それならまた、一緒に暮らさないとですかね」
まずいな、恐怖と狂気に挟まれてる。まだ、狂気はどうにかなるけど、恐怖はまずい気がしてならない。塾の中にいれば、安全だろうけど帰りがまずいな。
「さ、お前ら座れ。そろそろ、始まるぞ」
怖い空気が残る中、先生が教室に入ってきて次の授業が始まることとなった。
「梶谷様、大丈夫ですか?」
「微妙かな。絶妙に、この文法とこの文法の使い分けが上手くできなくって」
「この2つですか――」
「その2つなら、前後の文が過去か現在かで判断するんですよ」
説明をしようとした二月さんをさえぎり、横から手を出し指で文字をなぞりながら解説をしてくれる黒嶺さん。これは、まずいやつ。
「わかっていただけましたか?」
「なんとなくは。とりあえずやってみるよ」
黒嶺さんに教えてもらったやり方でやってみると、スラスラと解ける。やっぱこういうのって、ものの見方の問題っぽいな。
「それじゃあ梶谷、ここの問題」
「It is rainy」
「不正解」