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136 蒸し暑い体育準備室で

さて困った。何者かのミスによって、体育準備室に閉じ込められた俺ら3人な訳だけど、この調子じゃ誰か熱中症で死にかねない。しかも、スマホで救急車も呼べない最悪。


「あつ〜い汗かいてきちゃった」

「どうにかしな――さ、佐藤さん!?」


扉を見ていたところから、後ろをふりかえって佐藤さんの方に視線を移すと佐藤さんの胸元が綺麗に透け、白にちょっとした装飾の着いたブラが見えている。


「ああ、これね暑いと汗は出るしちょっと蒸れるしで、ね」


少し恥ずかしそうに頬をかく佐藤さんだけど、胸を隠そうとする様子は全くなく、なんなら満更でもなさそうだ。


「その佐藤さん、そういうのは隠すなり別の方向むくなりしなよ。恥ずかしいでしょ」

「いやぁ別にだよ。別に梶谷くんにお願いされたら見せちゃうし」

「ダメだからね!?」


目のやり場に困るから佐藤さんの肩をつかみ、無理やり反対方向を向かせる。


この佐藤さんの言葉は、優しさゆえなのかな。だとすると、佐藤さんは優しさゆえの逆ビッチみたいなことになる。


「ほんと、そういうこと人に言わない方がいいよ」

「別に誰にでも言ってる訳じゃないよ」

「はいはい。でも、言うのはやめようね」


佐藤さんの肩を押えて、振り向こうとするのを止める。


「そういや、如厨奈ちゃんは大丈夫?」

「ふふ、案ずるな我は体をオーラで覆っているからな、暑さはほぼもないのと同じだ」


如厨奈は自信満々そうだけど、俺以上に汗をかいている。汗で服は透けてるけれど、見えているのはキャミソールだ。別にキャミソールも下着っちゃ下着なわけだし、見られてもいいってわけでもないけど。


「ほんと、何か策は……ねえ、2人とも」


頭を抱えながら周囲を見渡して、気になるものが目に入った。これが、俺の暑さによる幻覚じゃなければ、脱出、出来るかもしれない。


「どうかしたか主よ」

「いやさ、そこのやつって換気用の窓みたいなやつだよね」


俺が指さす窓は、唯一この準備室に設置されていると思われる正方形の窓。


「ほんとだ。開けられるかな」

「佐藤さんはここで待ってて」


2人から幻覚では無いというお墨付きを貰い、急ぎ換気扉の窓まで走り窓を開ける。窓を開けると、外からの涼しい空気がこの中へ入ってきて、気持ちがいい。


「ちょっとは涼しくなったね」

「でもちょっととはいえ、ありがたい」

「そうだな、我もエネルギーを充電したかったところだ、とても気分がいい」


3人横並びになって、窓からの風を感じる。というか、このおおきさ如厨奈ちゃん頑張れば行けるくないか?


「如厨奈ちゃん、頑張ってあそこから外に出れたりしない?」

「我か?わからないな。主の命ならば、挑戦はしてみるが」

「やるだけやってみようか」


暑くなるけれど、如厨奈を持ち上げて開けた窓の枠を掴ませる。枠を掴んだ如厨奈は、体を持ち上げ頭を窓の外へ出す。


「ギリ行けそうだけど、だいじょぶそ――やべ」


窓から体を出そうとする如厨奈は、現在ほぼ壁尻状態そのせいで、如厨奈の下着が余裕で見える見える。


「ああ、なんとか、なりそうだ――て」

「え……大丈夫?!」


ギリギリの幅だったからか、窮屈そうにしながら肩を外へ出した如厨奈だったけれど、肩を出したまま腕が耐えられず外へそのまま滑って出て行った。如厨奈の体が見えなくなると、外の方からパンという人の体がコンクリートへ打ち付けられる音が聞こえてきた。


「あ、ああなんとか。案ずるな主よ、すぐ助けてやろう。これは、我にしか出来ない、重要な使命なの、だから」


ここからだと姿は見えないけど、声がつっかえている感じ、如厨奈は涙目になってる可能性がでてきた。


「それでは、行ってくる」

「気をつけてね」


如厨奈を見送ったことにより、俺と佐藤さん2人だけが、この暑い準備室に残されることとなった。最初は涼しいと思った外の空気も、慣れてしまえば暑いの1部。しかも、夏特有の風の吹かない気候のせいで、体を冷やすためのご褒美がない絶望。如厨奈に早く来てくれと願うしか他ない。


「そういえばさ、初愛佳ちゃんってどんな感じ?」

「ああ、初愛佳さん?本人から聞かないの?」

「最近はよく遊ぶようになったけど、教えてくれないんだよね」


初愛佳さんが佐藤さんに学校生活のことを話さないのは、佐藤さんに心配をかけさせないためのものだろう。


「話してくれないって言ったって、そんなにかわんないよ。あ、でも前より少しわだかまり?は無くなったような気がするよ」


初愛佳さんは体育祭があったあの日から、数名ではあれど軽い挨拶をする程度の距離感には、関係性が変化していた。


「そうなの?それなら良かった」


何となくではあれど、現状の初愛佳さんの状況を聞いて、ほっとしてくれたみたいだ。


「ていうか、ほんと暑いね〜。汗が――」

「と、大丈夫?佐藤さん」


この暑さにワイシャツの胸元パタパタで対抗していた佐藤さんだったけれど、さすがにそれも限界なようでふらついて倒れかけてしまった。


「少し、視界がぼやけてるけど大丈夫」

「まずいな、どうにか冷やさないと」


とりあえず、水はないことは無いしそれを飲んでもらうとして。


「あ、そうだね涼しく、すずしく……」

「待って待って!」


暑すぎて頭のにつぶった佐藤さんは、自身の衣のボタンに手をかけ、ゆっくりとその薄い衣を体から離していく。


「え?」


ワイシャツを脱ぐ佐藤さんの顔は、頬が赤く頭が回らないからかうっとりしている。


「ワイシャツは脱がないで。とりあえずほら、飲みかけで悪いけど水飲んで」

「ああ、うん」

「こぼしてるこぼしてる」


俺の渡した水筒を飲もうとした佐藤さんだったけれど、口元が緩かったのかほぼ全ての水をワイシャツにこぼし、胸元の透け感がました。


「冷たい。気持ちいい〜」

「それなら良かったけど。少しでも、飲んで」


残った水をしっかり佐藤さんの口に入れ、飲ませる。


「梶谷くんありがとね〜」

「別に――え、ちょっと」


水を飲んだ佐藤さんは、俺にお礼を言ってから佐藤さんの全体重を俺にかけもたれかかってきた。


急なことに俺は後ろに倒れ、マットの上に尻もちを着いてしまった。尻もちを着いて目を開けると、目の前には俺の上で四つん這いになる佐藤さんの顔があり、俺の顔に佐藤さんの汗がヒタヒタと落ちてくる。


「ごめんね。ちょっと、気を抜くと力が。やっぱり体を冷まさないと」

「いや、だから脱ごうとしないでって!」


四つん這い状態から、俺の上に馬乗りになった佐藤さんは、またワイシャツを脱ごうとボタンに手をかける。


「でも、暑くて暑くて」

「まってまって!多分もう少しで、如厨奈ちゃん来るから。少し待って」

「でも体が」

「でも、じゃなくて。ほんと、あと少しだから」


如厨奈、早く来てくれこのままだと佐藤さんにまじで、服を脱いでもらうしか方法が無くなる。


「梶谷さん!大丈夫で……す」

「あ、せんせ――なんで閉めるんですか!?」


佐藤さんがギリギリというタイミンで、俺の担任の先生が扉の鍵を開け助けに来てくれた。かと思えば、扉を閉められてしまったけれど。理由としては、おおかたこの佐藤さんの透けた服に馬乗りというあきらか、風紀を乱す見た目のせいだろう。


「えっと、大丈夫ですか?」


俺を見捨てたはずの先生が、恐る恐ると言った感じで扉を開け、覗き見るように顔だけをひょこっと出す。


「俺は大丈夫ですけど、佐藤さんが」

「と、とりあえず保健室行きましょ」


急ぎやってきた先生から、タオルを受け取って馬乗りの佐藤さんにかけてあげ、至急保健室へ向かう。



「お、佐藤さん起きた?」

「ん?うん」


保健室へ佐藤さんを運んでからの佐藤さんは、簡単な水分補給をしてからすぐ眠ってしまった。そこから30分ほどたって、今何があったのかわかっていないふうではあれど、起き上がった。


「ほんと良かった。何も無くて」

「えっと、私……あ」


あの時のことを思い出したみたいで、佐藤さんの顔は準備室の時のように顔がどんどん赤くなっていく。


「ご、ごめんね梶谷くん。あんなの」

「しょうがないよ、暑かったし。とりあえずは、如厨奈ちゃんの救助要請が間に合ってよかったよ」

「でも、済まないな我は先に保健室でぬくぬくしていて」


先生が準備室に駆けつけてきた時、如厨奈はおらず佐藤さんを保健室に運んだ時に如厨奈を見かけた。どうやら、如厨奈は職員室に閉じ込められた話をしたところ先生に保健室に行くようにと言われ、先に行って俺たちを待っていたとの事。


「如厨奈ちゃんも、汗は凄かったし妥当だよ」


頑張ったご褒美的な感じで、如厨奈の頭の上に手を置き撫でる。撫で始めると、如厨奈は最初少しびっくりしていたけれど、しだいに受け入れてくれたようでそのまま黙って撫でられ続けられる。


「まあそんなとこ。先生ご両親呼ぶから、起きてもそのままでいいってさ」

「わかった」

「それじゃあ、俺は帰るよ。佐藤さん今日はご安静に」

「うんじゃあね。あと、ほんとにありがとう。あとごめんね」

「別にいいって。あと、誰にもそう簡単に下着は見せないでよ」


俺がそう注意すると佐藤さんは、「誰にでもは見せないよ」と少し怒ったように言葉を返した。こういうことが言えるってことは、健康状態自体は良好そうだな。ベットの上に座る、佐藤さんに手を振りながら如厨奈と保健室を退出し、いつもと変わらない感覚で昇降口へ向かう。俺は記憶に焼き付けられた、見事な下着で気分は絶好調だ。

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