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128 黒嶺さんの弱いところ

「さて、どう死にたいですか?私なら、痛みを感じずに殺せますよ」

「もうプロじゃん」

「いえいえ、梶谷さん専門ですよ」


意味のわからない恐縮をしながら、包丁で俺の全身を見る黒嶺さん。


「私的には、梶谷さんの体は残しておきたいので、首切りをおすすめしますけど」

「首切りか〜。怖いから、もうちょい優しいのがいいな」

「そうですか、首切りですか。いいですよ、ちゃっちゃとやっちゃいますか」

「話を聞いて!」


話を聞く気のない黒嶺さんは、俺の首をよく触りどこを切ろうか探し始めた。


「ここが頸動脈。しっかり、脈打ってますよ少し早いですけど」


俺の頸動脈を触った黒嶺さんは、「緊張してるんですね」とふふっと笑って俺の首を絞める体制に入った。


「あの、何を……」

「首を絞めて、意識を薄くしてから、一刺しと思いまして」

「それなら恐怖も――えなるかー!」


クソ、なんで殺される手前でとノリツッコミ披露せねばならんのだ。


「それでは、おやす――」


俺の首に手をかけた黒嶺さんが、手に力を入れようとしたら、黒嶺さんの後ろから手が出てきて、その手は黒嶺さんの服の中へ滑り込んで行った。


「可愛い、体」


その手の持ち主は石橋さん。石橋さんの手は、服の上からでもわかるくらいに、カサカサと黒嶺さんの体をまさぐっている。


「なんですか、急にうっとおしい」

「へへ、エッチしよ」


黒嶺さんに隠れて顔は見えないけど、多分今の石橋さんは声的に蕩けた顔になっていることだろう。


「離れてください、刺しま――あ❤」


黒嶺さんが石橋さんを脅そうと、包丁を俺から石橋さんへ向けようとしたら、よもや黒嶺さんからは出たとは思えない色気のある声が出た。


「小さい、お豆さんはっけーん❤」

「ちょ、ちょっと離れ――あ❤」


いつもは、なんだこれと思うけど、あの無機質な黒嶺さんからこの声が出るというのは、珍しいから今回はすごい見応えがある。


でも良かった、さすがの黒嶺さんにもそういうのを感じる感覚があったのか。さすがに、人間の3大欲求の1つは超越はしてなかった。


「ちょ❤梶谷さん、見てないで助けてください。あ❤」

「気持ちいい?❤」


石橋さんはどうやら、黒嶺さんの小さな首を集中攻撃してるようで、黒嶺さんの胸の当たりが不自然に膨らんでいる。


「ほおほお、黒嶺さんは首が弱点、と――ヒッ!」

「早く、してください」

「は、はい」


黒嶺さんの弱点をメモろうと、スマホを取り出したら、恨むような目で俺を見る黒嶺さんからローファーがすご勢いで飛んできて、俺の右頬を掠めた。


「て言ったって、どうしよう」

「いい❤から、とりあえず引き剥がして……」


黒嶺さんは、ほんとにまずい状態なのか、声がどんどん弱くなっていく。


でも、この人間味溢れる黒嶺さん(しかも色っぽい)を、俺の手で終わらせていいのだろうか。百合を愛好する人に、殺されかねない。百合の間に挟まるのは、ご法度だから。


「まあ、ここはしょうがない」


百合愛好家さんたちに謝りながら、黒嶺さんの後ろに回って、石橋さんの脇を掴む。


「ほら、石橋さん。そんな、壁つまんでないで、離れな〜」

「今、何か言いました?」

「いえ」


石橋さんをなだめながら、黒嶺さんと距離を置く。


黒嶺さんから引き離される石橋さんは、顔を反らせ俺の顔を見るなり、暴れ始めた。それもそのはず、石橋さんの薬は飲むと、キス魔の酔っぱらいのごとく、視界に入るものにセンシティブなことを仕掛ける人格にね変貌するものなのだから。


「ふう……さあ、梶谷さん心中しましょう」

「無理があるよ」


深呼吸をして一拍置いた黒嶺さんが、いつもの無機質な表情と声で、さっきの続きをしようとしてきた。


「あんなの、見られたら人生の汚点ですから。さ、心中しましょう」

「なるほど……」


完璧主義な黒嶺さんにとって、あの色気のある反応は見られたら不味いものだったか。


「さあ、死にましょ。そこの人に、梶谷さんの返り血が着くのは少し不憫ですけが」

「まだ、その調子で行くんだ」


ほんとにさっきの状態から、今の調子は落差がありすぎて、その心中しようが嘘にしか思えない。


「何言ってるんですか、黙ってください早く心中しましょう」


とぼけながら、包丁片手にゆっくり俺へ近ずいてくる黒嶺さん。正直、さっきの見たから対処法は既に思いついている。


「ほら、石橋さんしっかり前見て」


抱える俺の顔を追って、赤ちゃんみたいにジタバタ暴れる石橋さんの頭を、黒嶺さん方向に向ける。


「それ、行ってこい」

「一体何を……」


暴れる石橋さんが、黒嶺さんを目に入れたのを確認してから、猛獣を解き放つように黒嶺さんの方へ押す。


そんな俺の行動に、珍しく黒嶺さんは動揺してくれている。そして、石橋さんはと言うと、勢いよく黒嶺さんの下へ潜り込み、服の中へ頭を突っ込んだ。


「ママァ❤」

「離れ❤ン❤」

「チロチロチロ〜❤」


多分頭を入れてるあたり、石橋さんは黒嶺さんの小さな首を舐めてるんだろう。気持ち悪い効果音とともに。


「あま〜い❤」

「梶谷さん」


黒嶺さんの小さい首を舐める石橋さんをどうにかしろと、黒嶺さんが俺を見る。


「黒嶺さんは、甘いのかメモメモ」

「こうなッ❤たら」

「よし!きたぁ!」


痺れを切らした黒嶺さんが、包丁を俺から石橋さんへ向けたのを確認して、一気に黒嶺さんに近づいて腕を掴む。


黒嶺さんから包丁を奪って、離れたところへ投げ捨てる。


「よし!成功」


これが俺の思いついた対処法。これによって、人畜無害な黒嶺さんが完成した。


「なんですか、成功って。というか、今の私に何ヲ❤するキ❤」

「さすがに助けてあげるよ、包丁取りに行くようなら石橋さん解き放つし」


今の石橋さんは、黒嶺さんにとって最高の武器だ、そう簡単に黒嶺さんは動けないはずだ。


「石橋さん、甘い壁とか舐めてないで、お兄さんと抱き合いっこしよ」

「さっきから、貶してますよね。別にいいですけど」

「別に貶してなんて」


とりあえず、暴れる石橋さんをひきずって、階段に座る。それと共に、黒嶺さんも俺の横に座った。


「そういや、なんで黒嶺さんはここにいるの」


何となくの来た経緯は、わかるけど理由の部分が知りたい。


「まあ、例のごとく母に服を買わないかと誘われたわけなんですけど、今回は参考書が欲しかったので、しょうがなく着いてきました」

「物に釣られたんだね」

「まあ、そうイ❤」

「ごめんごめん。わるか……たから、首……」


本当に黒嶺さんの弱点は、小さい首なのか気になって、失礼とは思いつつも爪でカリッとしたら、黒嶺さんはビクッと震え、俺の首を絞めてきた。そして、ほんとにまずい。


「す、ストップ……」


まずいため、黒嶺さん止めに石橋さんを解き放つ。


「梶くん❤」


運の悪いことに、今の石橋さんの対象は俺だったみたいで、解き放たれた石橋さんは俺に抱きつき顎下を舐めてくる。てか、石橋さん異様にさっきから犬っぽすぎる。


とは言っても、石橋さんに舐められても手が空いたため、首から手は離せる。


「ハァハァ、死ぬとこだった」


俺の首に巻き付く黒嶺さんの手を取り払う。それと共に、肺には空気口からは咳が出てきた。


「唐突にあゆなことするのが、悪いですよ。あんなの、少し考えればわかることだと言うのに」

「ごもっとも」


俺を死にかけまで首を絞めて、黒嶺さんも満足してくれたみたいで、また何かをしてくる様子は無い。次に俺の首を舐める石橋さんを、また拘束して取り押さえる。


「とりあえず、石橋さんの狂乱状態が治るまでここで待機かな。黒嶺さんは、お母さん達のとこ言ってあげなよ」

「嫌ですよ。梶谷さんが何するか、わからないんですから。その時は、すぐ行動したいですからね」

「あ、はい」


「どうせ行っても、面倒なりますから」と、付け加えてため息を着く黒嶺さん。そんな黒嶺さんの顔は、少し火照っている。

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