126 厨二病少女と甘えたがりシスター
眼帯をした1人の少女は、窓際の席で深呼吸をしながら、2個横の席の少女を見つめている。
彼女、如厨奈は如厨奈のもう1つの顔である悪魔の使い(123話参照)の主である闇の支配者光への反逆者(123話参照)のに命にしたがって、優來と友達になろうとしている。
「よ、よし」
息を整えたあと、席を立ち上がり優來の席へ思い足取りを進め、優來の席少し前で息を吸い声を出そうとする。
「そこの――」
「優來ちゃ〜ん。次の授業の移動しよ〜」
「わかった」
如厨奈が口を開き声を出した瞬間、元気よく割り込んできた遊雌に友達作戦が邪魔されてしまった。
遊雌に移動教室に誘われた優來は、教科書を机の中から取り出して、遊雌と共に教室を出ていってしまった。
(し、仕方ないまた次の機会に)
そう思った如厨奈も、教科書を持って優來の後ろをつけるように、教室を出ていく。
「気おつけ礼」
号令係の人が号令をかけて、授業中の静かな空気から、昼休憩に入ったというのも相まって一気にガヤガヤとした空気に変わる。
如厨奈は、移動教室から帰ってきて、タイミングが掴めずにただ優來を眺めるだけになってしまっていた。
「優來ちゃん、お昼食べよ」
横目で見ていた優來が遊雌によって引き止められたのを確認した如厨奈は、また息を整えてから席を立ち上がり優來の席の方へ向かう。
「でさぁ、昨日食べた中華料理が美味しくてね」
(む、ムリだぁ)
優來の席の方へ歩く如厨奈だったけれど、そのままスーっと通り過ぎて廊下へ出ていく。
如厨奈は、何度も言っている通りあまり人とかかわり合うのが得意ではない。しかも、何度か話しかけるのに失敗して、軽く心が折れていた。
こんなのを繰り返して、話しかけようとして話しかけないを繰り返していたら、いつの間にか帰宅の時間になってしまった。
(まずい、我が主との命が……)
そんなことを考えていたら、優來は荷物を持って遊雌と教室を出ていった。それを見た如厨奈は、さらに焦り頭を抱え始めた。
そんなことをしていたら、頭にあることがよぎった。如厨奈の頭によぎったのは、如厨奈と主、闇の支配者光への反逆者(123参照)との契約の義の時、主が言っていた言葉「何かあれば、これを思い出すがいい。きっと、心の支えになるはずだ」この言葉だった。
そんなことが頭によぎった如厨奈は、自身の手の甲を見つめ、しばらくしたらそこに重ねるようにキスをする。
それをしただけで、如厨奈の中になかった勇気が湧き出てくる。キスをしたあと、如厨奈は席から立ち上がり急いで優來を追って教室をでる。
「ねえ、優來ちゃん。どこか寄り道しない?オトナのうちが楽しいとこ連れてってあげるよ」
「楽しいとこ?」
「か、梶谷さ――い、いや、優來!」
走って下駄箱のところについて、優來の名前を大声で呼ぶ。
声が大きかったからか、優來と遊雌だけではなく、他の人も如厨奈の方に視線を向けている。
「えっと、如厨奈さん?だよね。優來ちゃんに何か用?」
「そうだ。優來よ、我がそなたと友達、いや我がそなたのナイトになってやろう」
「えっと、如厨奈さん?」
遊雌にとって如厨奈は、新しい人種の人だったようで、如厨奈の言葉に困惑が隠せないと言った様子。対する優來は、如厨奈を上から下へ見たあと如厨奈へ近づき肩に手を置く。
「わかった。なろう」
「ゆ、優來ちゃん!?」
如厨奈に目を合わせて、サムズアップ如厨奈を見てワクワクしているのか、目が少しばかり輝いている。
「そうか、そうか。だが、友達ではなくナイトだ。我は、ある方からの命を受けてここにいるのだからな」
「わかる。それは、大事」
「そなた、もしや信じていないな」
「信じてる。だから、気にする、な」
如厨奈のことを見た優來は、そういう時期は人にあるよなという気持ちで、如厨奈のことを受け入れる。
遊雌に関しては、未だに状況が呑み込めないようで、呆然としている。
「ほ、ほんとか?」
「ほんと。如厨奈の、能力が、気になる」
「そ、そうか。なら、とくと聞くが良い」
見せるわけでもなく、自信満々に設定した自分のチカラというのを優來に解説をする。如厨奈の中で優來は、珍しく自分を受け入れてくれた存在だからか、一気に好感度が上昇した。
「遊雌」
「な、なに?」
「如厨奈も一緒、に来てもらいたい」
「うちは全然いいけど」
そう言った遊雌は、横目で如厨奈の方を見る。
「ふん。まあ、我はそなたを守るのが役目だからな。同行してやろう」
「そ、そう。じゃあ行こうか」
遊雌の困惑が未だに抜けない中、遊雌先導のもと3人は寄り道の遊びに出た。
「如厨奈さん」
「さんはやめてくれ。我らは、同じ暦を歩くものなのだから」
「そう。じゃあ如厨奈ちゃん。如厨奈ちゃんは、誰の命令で優來ちゃんのとこに来たの?」
遊雌は気になっていた。さっき如厨奈の言っていた「命」の一言か。
「フッ。それは秘密だ。我らの存在は、俗世の者たちには話せないのだ」
優來に存在が受け入れられたのと、友達ができたのにウキウキな如厨奈は、絶好調で厨二病を発揮する。
「そ、そ〜か〜」
「そういうことだ。だから、我のことを深く知ろうとはするな。そなたらに危険が及びかねないからな」
そんなことを言う如厨奈にやはり信じられんといった様子の遊雌。
「如厨奈、は何が好き」
「好き、か。そうだな、言うのであれば我が主、闇の支配者光への反逆者(123話参照)だな」
何とも自然に平然と、自信満々に自分の好きな人を言う如厨奈。
「もしかしてそれが、如厨奈ちゃんに命令を?」
「あ……な、な訳なかろう」
「てか、好きな人?ええー?」
人の恋路と聞いて遊雌は、興味津々なようで如厨奈へ質問をしまくる。
「写真とかないの?どんな人?かっこいい?」
「それも秘密だ。さっきも言った通り、我らは秘密の存在だからな」
「ええー。いいじゃん教えてよ〜」
もったいぶる如厨奈にしつこく聞き続ける遊雌。さっきまでの厨二病への困惑は消えつつあるようだ。