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125 教室でそれはちょっと

「と、まあそれが我と主との関係だ」

「へ〜、そうなのね」


俺の横に座る由乃が、俺の事が如厨奈の言う主本人だとわかっているからか、あからさまな感じで俺を見てくる。


「て、ていうか。中3の時の俺にそんな、ことがあったとは気づかなかったな。はは……」


ここはあれで行こう。あの人格は、常に出ていた訳じゃなくて、入れ替わっていたことにしよう。


「そういえば、たまに記憶が飛んでたような」

「そのようだな。我は常にこれなのだが、主は強すぎるが故にいくつか封印されていたようだし」

「へ、へ〜」


クソ!心が痛すぎて死にそうだ。


「ま、まあ。如厨奈ちゃん――」

「呼び捨てでもいい。一応、そなたは先輩なのだから」

「そう。じゃあ、如厨奈はいろいろ頑張ってね。俺にも、なにか手伝えることがあれば手伝うから」


急いでここから逃げるために、「それじゃ」と言ってバッグを持ちそそくさと離れるよう行動を開始する。


「す、少し待ってくれ」

「は、はい」


なんだ、また俺の心を削るようなものじゃないよな。


「もし良かったらなんだが、また頭を撫でてはくれないか?」

「ま、まあそれくらいなら」


如厨奈の方に近づき、さっき同様頭に手を置き優しく撫でる。


「そなたが、主では無いのはわかっているのだが、頭を撫でられると妙に落ち着くんだ」

「そう。それなら良かったよ……」


逆にここで俺が主でそんな設定なんてない、なんて言った場合如厨奈はどういう反応するんだろう。俺を恨んだ目で見るのか、俺に悪魔が取り付いているのように厨二病設定で怒ってくるのか。


とりあえずは、やめておこう。夢はそう簡単に壊すものでもない。それは、ただの俺のエゴで逃げなだけだと思うけど。


「あ、そうだ。如厨奈ちゃん」

「だから、呼び捨てでも良いと」

「なんか、ね。如厨奈ちゃんって、何組?」

「我か?我は、3組だが」


そうか、それならちょうどいい。俺が主出ないという証明ついでに、また同じお願いをしよう。


「俺の妹、優來って言うんだけど、同じ組だから友達になってやってよ。あいつも、あんまし会話得意じゃないし」


こうやって、もう1つの人格と同じお願いをすれば、如厨奈の中では俺と主が違う存在だとして処理されるはず。


「そうか。それは、主にも言われたことだ。やっておこう。だが、あまり期待はするなよ。あと……」

「あと?」


俺が如厨奈へ聞き返すと、そっぽを向いて恥ずかしそうにしながら、俺の撫でる手を両手で掴み口を開いた。


「ちゃんと出来たら、また撫でてくれないか?」

「それぐらいなら全然いいけど」


俺がそう返すと、如厨奈は顔ではさっきと変わらず恥ずかしそうにしているけれど、嬉しいようで足がなにやらうずうずしている。


「そうか。なら、頑張ってみよう。それじゃあ我は帰る。良い報告を期待するがいい」


そう言った如厨奈は、厨二病っぽいバッグを背負った早足で帰ってしまった。


ここで1つ提起しておくと、恐らく如厨奈は俺のことが好きなんだ。俺とは言っても、もう1つの人格の方だけど。だから、撫でられると落ち着くというのは、俺が主と同じ見た目(本人だからそりゃそう)だからなんだろう。


「あんた、あの子どうすんのよ」


話を黙って聞いていた由乃が、如厨奈が立ち去るなり俺の胸ぐらを掴んで聞いてきた。


「それな。高校生活中、感じに解毒出来ればいいんだけど」


正直あれは、モロ宗教にハマった人だ、解毒は難しいを極めるだろう。1つの方法としては、好きの対象を主から俺へ移せれば、どうにかなるとは思う。


「そこじゃなくて。頭、撫でてあげるのかって聞いてんの」

「あ、そっち。お前には、関係なくね?」

「そ、そうだけど。ちょっと気になっただけよ」

「まあ、さすがに撫でるよ。別に撫でるくらい、造作もない。お前も撫でてやろうか?」

「誰があんたなんかに。でも、あんたが撫でたいなら、いいわよ」


気の強い言葉を胸下で手を組み、そっぽを向きながら言葉にする由乃。そこんとこ、由乃の髪は触り心地がいいからな、本人の許可も出てるし触るだけ触っておくか。


「あぁ……」

「どうかしたのか?」


俺がそっぽを向く由乃の頭を触ると、なにやら由乃から掠れたような声が出てきた。


「な、なんでもない。やっぱ、やめて気持ち悪い」

「そこまで言うか」


いつも通り平常運転だから、慣れては来たけど、心には来るな。さすがに気持ち悪いは、厨二病の話ほどじゃないけど、ねぇ?


「とりあえず帰るか。俺は早く帰って、この傷を癒したい」

「それは、あんたの自爆でしょ」

「はは、笑える」



「あぁ、疲れた」


体育終わりってのもあるんだろうけど、昨日の1件もあって精神的にも疲れている。


「優くん、お疲れ様です。よければ、私が癒してあげましょうか?」

「遠慮しておくよ。ん?どうかした?」


疲れたという愚痴をこぼすと、刈谷さんが膝をぽんぽんと叩き甘そうな膝枕に誘われたけど断った。膝枕を断ったところ、誰かに肩を指でちょんちょんとされた。


「済まない、前を向いてもらっても良いか」

「ゆ、如厨奈ちゃん」


誰かと思い後ろを振り返り、そこに居たのはどうどうと先輩達の教室に入ってきていたらしい如厨奈。


「まあいいけど」


如厨奈の指示通り振り返って、如厨奈と対面する。軽く周りを見てみると、如厨奈の存在に気づいてる人達は、後輩+厨二病眼帯つきてのもあって、面白そうに見ている。


「すまないな。チュ❤」

「あ!」


俺と対面した如厨奈は、昨日同様に俺の手を持ちわざとらしく音を立てながら、手の甲へ契約のキスをした。


「優くん、また別の子ですか?それにキスだなんて」

「これは別だから。ちょっと、如厨奈ちゃん来て」

「ちょ、ちょっと急に手をとるな」


俺の前に立つ如厨奈の手を引いて、廊下へ避難する。


「さっきの、急にやんないでくれない?」

「でも、あれは我が主の復活の儀式で。いつ復活するかわからないから、日々思考していくしかないのだ」


てことは、あの奇行を毎日か。中学の頃の俺、どんなことやってんだよ。厨二病とはいえ、手の甲にキスって。


「会いたいのはわかるけど、さすがに毎日はやめて。せめて、1週間に1回にして」

「わかった、善処しよう」


俺の注意が効いたようで、如厨奈はシュンとしながら俺の話を聞き入れてくれた。


「我は一旦帰る。それでは、また」


それだけ言った如厨奈は、とぼとぼと歩いて教室の方へ戻って行った。


「優くん酷いですよ」

「なにが?」

「私に黙って、他の子だなんて。それに、ちゃん付けだなんて、私未だにさんなのに」

「それは、しょうがないでしょ」


刈谷さんに関しては、完全に癖的な部分が強いから、どうしようもない。


「それよりも、キスだなんてずるいです。私も優くんの、首元にしたいです」

「サラッと上行かないでよ……」


俺と如厨奈の一部始終を見ていた刈谷さんに、それっぽい言い訳をして何とか切り抜けた。



「如厨奈ちゃん帰り?」

「そうだが」


帰りのHRも終わって、下駄箱から後者の外に出ると、わかりやすく厨二病バッグが目に入り、呼び止めると案の定如厨奈だった。


「学校には慣れた?」

「中学の頃とあまり差がないから、直ぐに慣れたな」


世間話を如厨奈としていると、なにやら如厨奈がさっきからうずうずしているような気がする。


「どうかした?」

「な、なにがだ」

「いや、なんか話したそうにしてる気がして」


俺がそのことを指摘すると、「その」と言いにくそうに言い淀んでいる。


「そのさっきはほんとうに、済まなかった。唐突にあんなことを」

「別にいいよ。そこまで、誰かに見られてた訳でもないし」


刈谷さんに見られてて、謎の首キスコールに発展したのは、面倒だったけど。


「そ、そうか。あと、ちょっとしたお願いなのだが」

「なに?またキスならしないよ」

「ち、違う。簡単な話で――」

「危な!」


何かを言おうとした如厨奈は、自らの足に自分の足をひっかけてしまい、俺の横で転びかた。如厨奈が倒れ始めたのに、早い段階で気づけた俺は、如厨奈の手を掴んで転ぶのを防ぐことが出来た。


「大丈夫?足元ちゃんと見ないと」

「大丈夫だ。それで、さっきの話なんだが」

「そのまま続けるんだ」


転びかけてから、俺に抱えられた如厨奈がポッケからスマホを取り出し話を続けた。


「これから、契約の義の許可を取るために連絡先が欲しいのだが」

「連絡先?まあいいけど」


そう言って俺も、スマホを取りだして如厨奈に俺の連絡先のQRコードを見せる。


「読み取ったぞ。それじゃあ、次の時はまた連絡をする」


抱えられていた如厨奈は、俺から離れ走って校門から出ていってしまった。


俺は、走り去る如厨奈の後ろ姿を見ながら、如厨奈のLIMEへ適当なスタンプを投げておいた。


少し気になったのは、俺から走り去る時の如厨奈の顔は、頬を赤くしていたような気がしたことだ。スマホで隠れててよく見えなかったけど。

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