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118 ようやく

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「梶谷様酷いです」


俺と忍さんに拘束された二月さんが、演技っぽい涙で訴えてくる。


酷い、か。軟禁については、どうなんだと、といただたしたいな。


まあ、そんなことはいい。


「さて、話し合いをしようか。夫婦のこれからについて」

「梶谷様……」


比喩のつもりで言ったけど、二月さんにとってはガチなようで、感激的な目で俺の事を見ている。


「あと忍さんもね」

「わ、私!?」

「そりゃ、そうでしょ」


なんでここにいるのかは、聞くしかないだろう。


「まあ、とりあえず二月さん。俺、家に返してくれないかな」

「でもー」

「でもって言ったって、俺にも生活があるから」

「そこは大丈夫ですよ。わたくしと一緒なら、幸せになれますから」


その自信は一体どこから出てくるんだ。やっぱ、金なのか。


「とりあえず、今日明日には帰らせてもらうからね。無理なら、心苦しいけどこれ当てるから」


二月さんを脅すため、さっき拾っておいたスタンガンを目の前で、起動する。


「そんな、梶谷様がそのような猟奇的な思考をお持ちだとは。わたくし、悲しいです」


なにが猟奇的だよ。最初にやり始めたの、二月さんだって言うのに。


「でも、梶谷様がわたくしを傷つけながらヤリたいというのであれば、やぶさかでも……」

「か、梶谷くん」

「いや、何もしないからね!?」


ダメだ、この2人異様に相性がいいぞ。俺のペースになかなか持っていけない。


「一旦いいや。で、忍さんはなんでここにいるの。てか、よく特定出来たね」


このまま続けてても、話が進む気がしなかったため、1度二月さんの説得は諦めて、忍さんに話を聞くことにした。


「それじゃあ、少し前から話すよ」

「お願い」

「まず、梶谷くんと約束してた日は、ドタキャンされて帰ったんだけど」

「それはごめんなさい」


そうか、俺は忍さんとの約束をそのまますっぽかしてたんだった。


「いいのいいの、それは。その後、2日後なんだけど偶然買い物してたら。梶谷くん見つけて」

「なんという偶然」

「ここ、私の家近いから」


あ、なるほど。そりゃ見つかるわけだ。そこは、運が良かったな。


「それで、いつも通りストーカーをして」

「ここを特定した、と」


いやぁ、助かった忍さんが俺のストーカーでよかった。言い方悪いけど、犯罪者が犯罪者を捕まえることってあるんだな。


「あの、お聞きしたいんですが」

「どうかしたの?」


さっきまで静かに話を聞いていた、二月さんが忍さんに質問を投げた。


「玄関の方に、メイドがいたはずですけどそれはどう突破を?」

「え、メイド?」


聞きなれない言葉を聞いたからか、忍さんはメイドと聞いて、ここにいる訳でもないのにキョロキョロと周りを見渡し始めた。


「その様子ですと、いなかったんですか?」

「え、うん普通の玄関だったけど……」


あの、二月さんを溺愛してそうなメイドさんが、護衛から離れることがあるのか。もしや、なにかとてつもない脅威が近づいている?


「あの、つかぬ事お聞きしますが。今のお時間は、どのくらいでしょうか」

「え?時間?」


二月さんに時間を聞かれた忍さんは、なんで急にと思いつつも、スマホを取りだして「12時半ぐらい」と答えた。


それを聞いた二月さんは、少しの間考えたあと、ハッとして口を開いた。


「思い出しました。メイドは、この時間休憩でした」

「メイドって、休憩とかあるんだ」

「仕事には、休憩義務がありますから。メイドは今、スウィーツを食べに行ってるはずです」


メイドさん、そこそこ優雅な休憩してるな。


「てか、それならあと1人ぐらい連れてくればよかったのに」

「いえ、さすがにわたくしの私情で、おつきのメイト以外を連れてくる訳には行かないですから」


ちゃんとそこの配慮はできるんだよな、二月さん。俺への配慮は低いけど。


「なんかすごいね。お嬢様って感じ」

「実際そうなんだけど」

「え、すご」


そんな話をすると、忍さんは驚き、二月さんはどうも自信満々そうだ。


「とりあえず、それはいいや。忍さん今のうちに逃げちゃお」

「つまり、駆け落ちってこと!?」

「違うよ……」


どうせ駆け落ちしたところで、二月さんに見つかるだろうし、駆け落ちするぐらいなら普通に家に帰る。


「まず、俺のスマホ探そ。それが1番先」


スマホがあるだけで、一気に俺ができることの幅が増えるし、先決はスマホだろう。


「わかった。目星とかあるの?」

「とりあえず、ここには無いことはわかる」


実の所、俺は完全に逃げ出すのを諦めていた訳では無い。一応、たまに二月さんがどこかえ消えるタイミングを見計らって、軽く家の中を物色してスマホを探したりしていた。


けれども、リビングに自室と俺が調べられる範囲は調べてみたけど、全く見つからなかった。


「それじゃあ、どうすんの?」

「目星は無いわけじゃない」


そう、俺がこの家を探索した中で1個部屋が残っている。


「それは、ここの部屋」


自信満々に俺が指を刺したのは、俺の部屋の隣に位置する二月さんの寝室。


「ここの部屋?じゃあ入ろうか……あれ?」


入ろうといった忍さんが、ドアノブに手をかけるけれど、下まで下がりきることはなくガチャガチャと音が鳴るだけ。


「その部屋、鍵かかってて入れないんだよね」

「じゃあ鍵は……」

「そりゃねぇ」


鍵と言って、俺と忍さんが無言で二月さんのことを見る。


「わたくしですか?」

「ここ、二月さんの部屋だし」


さらに言うのであれば、毎度鍵を使って扉を開閉してるの見てるし。


「二月さん、どこに鍵もってんの」

「さあ?梶谷様が、わたくしの身ぐるみを剥いでみれば、わかるのではないでしょうか」

「忍さん、どうする?」


剥ぐはないにしろ、とりあえずポッケとか調べるのが妥当かな。スタンガンが入ってたとこも怪しいし。


「服を剥ぐの?いいんじゃない、そしてその剥がれた姿に欲情した梶谷くんが」


意見を求めたところ、唐突にも忍さんは妄想を始め、その妄想はどんどん加速していく。


「ストップ、ストップ。()がないから()かないから」


妄想を加速させる忍さんに急いで静止をかける。静止をかけると、何故か「そう」と少し残念そうに妄想を停めた。


「もう。とりあえず、ポッケとか調べるから手伝って」

「はい」


全く、ムッツリな忍さんにも困ったものだ。というか、拘束した女の子の体をまさぐるのって、なんか犯罪臭……


「ない、ね」


思いつく限り、二月さんの服についているポッケやらを、まさぐっては見たものの鍵っぽいものは出てこない。なんなら、何も出てこなかった。


「二月さん、どこにしまってんの」

「どこでしょうか。やっぱり、わたくしの服を――」

「やらないよ。可哀想だし」

「紳士的ですね」


そうは言っても、どうしたものか。明らかタイムリミットがあるし。この際スマホは諦めて逃げるか。


「ここまでくると、体内に入れてるしか思いつかないよ〜」


時間が迫ってきているからか、今の現状を見て弱音を吐く忍さん。


ん?体内?


「ごめん二月さん。口開けて貰っていいかな」

「なんでですか?」

「いや、とりあえず」


二月さんに口を開けるのをお願いするも、恥ずかしいだのなんだのと、言って誤魔化される。これは怪しいな。


「いいから、開けて」


二月さんの顎を持って、無理やり開けようと力を込める。


「後でハグでもなんでもしてあげるから」


こうなりゃ最終手段だ。甘い言葉で誘おう。


「べー」


甘い言葉で二月さんを誘うと、直ぐに口を開いてくれ、舌の上に乗った鍵を出してくれた。


「早いな」

「ハグ、お願いしますね」


とりあえず、鍵は手に入ったし今すぐ部屋に入ろう。ハグに関しては、何かしらで消化をするとして。


「じゃあ、急いで探すよ忍さん」


二月さんから鍵を受け取って、急いで部屋に入る。二月さんの部屋は、リビングみたいな質素な感じからは考えられないくらい、豪華な部屋をしている。


それはさておき、部屋の見れるところをどんどんみていく。


「梶谷くん」


部屋を物色していたら、ベッド付近を見ていた忍さんに呼ばれた。


「これ」

「金庫?」


忍さんが見つけたのは、電子ロック付きの小型金庫。金庫をシェイクすると、恐らくスマホと思われる音が聞こえる。


「パスワードなんてわかるわけないじゃん」

「教えましょうか?」

「「え!?」」


金庫のパスワードなんて知るか、と思っていたら何故か後ろから、縄を解いた二月さんが立っている。


「な、らなんでいるの。しかも、縄……」

「縄ですか、わたくし沢山お稽古をしているので、その一環で」

「け、稽古」


いくら習い事って言ったって、限度があるだろ。そんな、拘束状態から逃げる方法って。


てか、それが出来てわざと捕まってたって、俺と忍さん弄ばれてたな。


「それで、どういたしますか?」

「そりゃ教えてほしいけど」


わざわざこっちに来るってことは、何かを引き合いに出した上でコードを教えてくれる気がする。


「それじゃあ、そのハグしてください」

「あ、え〜」


緊張を持った頬で、二月さんがゆっくりと言葉にしたのは、ハグだった。


もうちょいワンランク上のお願いが来ると思ってたから、案外しりすぼみ感。


「まあ、いいよハグなら。逆にいいの?」

「なにがですか?」

「いや、さっきの分のハグもあるし、もう1個ハグをお願いするのって、無駄じゃない?」

「いえ、これはさっきの分です」

「じゃあもう1個は?」


俺がもう1個のハグのことを聞くと、二月さんに優しくほほえみけ口を開いた。


「それは、なしでいいです。今日までの分のお返しとでも思ってください」

「ありがとう。じゃあ、しようか」


お礼を言ってから立ち上がり、二月さんと目を合わせる。


「ほら、早く」


二月さんの前に立って、ハグの構えもとい手を広げて待つけど、二月さんがなかなか近寄ってくれない。


「すみません。いざとなると、やはり緊張してしまって」

「なるほど。じゃあ――」


二月さんが緊張してしまうならしょうがない。俺からやるしかない。


「か、梶谷様急にそのようなことは」

「いや、二月さんが行ったことじゃん」


俺がハグをすると、二月さんは急なことに動揺してしまったみたいで、反応と心拍数がものすごいことになっている。


「こんなもんでいい?」

「は、はい」

「ねえ、私はどうすればいいの」

「忍さんもしてあげようか?」


無言で俺と二月さんのハグを見ていた忍さんに、ハグしてあげようか聞くと、「いや、いいや」と静かに答えた。


「じゃあ、二月さん開けてもらっていいかな」

「お任せ下さい」


二月さんに小型金庫を渡すと、すぐにポチポチとボタンを押して、ロックを解除そこから俺のスマホがでてきた。


「どうぞ」


二月さんからスマホを受け取って、電源が着くか試してみるとギリ、バッテリーが残ってて電源わついた。


「うわ、凄」


電源をつけて通知を確認すると、由乃から電話やらメッセージがものすごい数来ていた。


とりあえず、これは後で返信しておこう。


「さ、スマホも手に入れたし、急いで帰ろ」

「それなら、お送りしましょうか?」

「え、ほんとに言ってる?」


俺が疑いの目を向けると、「ほんとですよ。信じてください」と二月さんはフフっと笑いながら俺にそう話した。


「梶谷くん、大丈夫なの?」

「う〜ん。二月さん自体、そこまで俺に酷いことする人では無いし」


正直なところ、二月さん自体にしっかりとした信用がない訳でもない。そう考えるのであれば


「送ってもらおうかな」

「そうですか」

「でも、いいの?俺を軟禁するんじゃ」

「何サラッとすごいこと言ってんの」


今日俺がここまで逃げようとしてたのは、二月さんが俺をガチめに軟禁しようとしてきたからで、二月さんの目的もそれだったはず。


なのに急に開放されるとは、どういう心変わりなんだ。


「はい。一旦諦めます。一応、当初の目的は達成してますから。あれは、わたくしのわがままみたいなものです」

「わがまま、ね」


理由を話した二月さんは、行きましょうかと言ったあと、玄関に向かってメイドさんを呼んだ。その瞬間、玄関が開いてすぐリビングへメイドさんがやってきた。


「お嬢様お呼びでしょうか」

「すぐに車の準備を。梶谷様を、お家へお返しするので」

「はい、わかりました。そんなことより、貴様何者だ」

「わ、私!?」


明らかここの部屋に置いて異物である忍さんを見たメイドさんは、俺首に突き立てたナイフを忍さんに向け、敵意を出している。


「こら、メイド。その方は、お客様ですよ」

「ですがお嬢様」

「いいから」

「はい」


メイドさんは、前回同様に二月さんに言われてとぼとぼと出ていった。


「忍さん大丈夫?クビ切れてない」

「う、うん大丈夫そう」

「すみませんうちのメイドが」


メイドさんは二月さんを守るためなんだろうけど、異様に血の気が多いから二月さんの静止がないと、俺と二月さんを普通に殺してきそうだ。


「い、いや私も悪いし」



「梶谷様、それでは」

「二月さん、忍さんに何もしないでよ」


俺の家から少し離れたところで下ろしてもらって、二月さんに注意をする。ちなみに忍さんが、俺と一緒にリムジンに乗っていたのは、俺が心配だからとの事。


「わかってますよ。そこは心配しないでください」

「ならいいけど。じゃあね、忍さん」

「うん。じゃあねまた今度」

「梶谷様は、あまりわたくし以外の女性の方と話さないでくださいね。妬いてしまうので」

「頑張るよ。はは……」


やっぱそこは、普通の恋する女の子感あるんだよな。


2人とも挨拶をしてから、リムジンは俺からどんどん遠ざかって行った。


1週間ぐらいここにいなかっただけでも、自分の住んでる町というのは、なんだか懐かしく感じる。



「由乃、何してんだ」

「な、何もしてないわよ」


もう家の前まで来た、というタイミングで由乃の家の玄関で今俺が歩いてる通りをチラチラ見ている由乃がいた。


「てか、あんた電話出なさいよ」

「いやごめん。ちょっと、充電切れしちゃって」


ていうか、なんとなく俺が軟禁中の通知見てたけど、俺が寝ていたであろう期間は、二月さんが俺になりすまして返信してたのに、俺が起きてる期間は返信してくれてなかったんだよな。


そこは、最後までやりきって欲しかった。


「あんたもドジね」

「不甲斐ない」

「ま、まあその調子じゃ、あんたが死んでないか心配して損したけど」

「心配してくれたのか。ありがとな。あ、だからそこでチラチラ――」

「な、なわけないでしょ!これは……そう雲を観察してたの、地動説を証明するために」


星ならわかるけど、雲を観察して地動説を証明できるのか?ていうか、なぜ地動説。


「もういい。あんたが、元気そうだし。それじゃあ」

「おう、ありがとな」


由乃に挨拶をしてから、家へ入った。俺が帰ると、少しばかり日焼けした優來が居て、俺がいない間大丈夫だったか、とかを聞いてお互いの健康状態を確認しあった。

ノーマルにストックが切れたので、ここら辺から投稿ペース下がると思います

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