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113 お嬢様と恥じらい

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「あ、ごめん」


俺の大声に、キョトンとした顔をしている二月さんに、軽い詫びを入れる。


ても、さすがに我が子の大きさを聞くというのは、正しく無作法というもの。それに、二月さんにそれを教えて嘲笑でもされたら普通に傷つくし。まあ、測ったことないんだけど。


「いや、まじごめん。でも、さすがに下の大きさは……ん?」


未だにキョトンとしている二月さんに謝っていると、恐らく玄関の方向から、扉が開いて閉まる音が聞こえた。


誰か来たんだろうか、二月さんの身内の人か、不審者――


「貴様、お嬢様に何をした」


俺が確認する暇もなく部屋に入ってきた女性は、語気が強くドス入った声で、俺の首元にひんやりする何か冷たいものを突き立てている。恐らく、言葉の内容的に刃物だ。


「お嬢様、やはり私が提案した通り、こんなやつの四肢は取った方がいいと」


まてまて、俺が寝てる間にどんな会話がされてたんだ。そんな、四肢を取るなんて会話、生きててなかなかしないだろ。


「まずは、こいつの首を斬って」


首を斬るはダメだろ。俺死ぬって!


「ストップ」

「ですが、お嬢様」

「ストップ」

「はい……」


俺の首を斬ると言ったこの人は、二月さんに1度とめられたけれど、食い下がった。けれども、二月さんの言葉の裏に隠れた圧を受けてか、俺から腕を離してくれた。


「それでいいんです。すみません、梶谷様わたくしのメイドが、こんなことを」

「ま、まあ俺も唐突に大声出しちゃったから」

「ですけど、喉から血が」

「え?」


二月さんに言われて、喉仏を触ると痛みが走った、それついでで手を見ると、血が手にうすく付着している。


痛みもなく俺の喉を斬ったのはなんだ、と思い後ろを振り返ると、高身長巨乳のメイドさんが立っている。その手に握られているのは、全身綺麗な光沢放つ、シルバーの投げナイフ。


「とりあえず、治療しないと」

「ならば私が」

「あなたは、下がりなさい」


メイドさんが、治療に名乗りを上げたけれど、二月さんに冷たく下がりなさい、と言われ悔しそうに「はい」とだけ答えて、メイドさんは部屋から出ていった。


「梶谷様、このハンカチをお使いください」

「いや、悪いよ」


首の止血に、と二月さんから、ハンカチを渡されたけど、あまり使う気が起きない。なんせ、見た目は普通でも、先程からのお嬢様発言から察するに、相当いいハンカチなんだろうし。


「いいんですよ、それくらい。梶谷様の血が着くんですから」

「いや、洗わないと使えなくなるし」

「構わないですよ。そこから、いろいろ調べるので」


一応、二月さんの親切なんだろうけど、そこから派生する行動が怖いな。


「なので、気にせず当てちゃってください。早くしないと、お召し物に着いちゃいますし」

「そ、そう?じゃあ、悪いけど使うね」


二月さんに貰ったハンカチを、悪いと思いつつ切れ口に当てる。


とりあえず、都度止まってるか確認で、何度もハンカチを離したりくっつけたりを行う。大量出血とまでは、いってないみたいで、ハンカチ1面赤みたいな感じにはなってない。


俺が止血をしている間、二月さんは俺をニコニコと俺を見続けている。


「止まった……かな」


傷口を撫でた感じ、手に血が付かずただ痛みが走るだけ。一応血は、止まったっぽい。


「なら、絆創膏貼りましょうか」

「貼るの?」

「はい、菌が入ると大変ですから」


そう言って立ち上がった二月さんは、俺の後ろにある棚から、絆創膏を引っ張り出して俺の目の前にやってきた。


「じゃあ、貼りますね」

「お願いします」


顔を上に向けて、二月さんに傷口を見せると、絆創膏を優しく貼り付けてくれた。


「ありがとう二月さん。…………」

「どうかしましたか?怪訝な顔をされて」

「いや、なんで俺顎クイされてんのかなって」


俺に絆創膏を貼った二月さんは、視線を首元から俺の目へ移して、顎クイを使って俺の視線を固定した。それもあって、今俺の目の前には二月さんの顔がドアップで、置かれている。


「あ、いえ、すみません。つい、見とれてしまって」


俺が顎クイを指摘すると、頬を赤く染めながら距離を離す二月さん。


この人行動は怖いけど、一丁前に初愛佳さん的なウブな面は持ってるんだな。


「えーコホン。さて、そろそろ行きましょうか」

「行くってどこに?」


頬に熱を持ったままの二月さんが、わざとらしく咳払いをして言ったことに、首を傾げる。


「買い物です」

「か、買い物?」



「梶谷様、手を繋ぎましょうか」


外に出てすぐ、二月さんが俺に手を差し出す。


「別にいいけど。俺、外出て良かったの?」


この状況なら、二月さんを振り切って逃げるくらいはできてしまう気がするんだけど。ていうか俺、あのまましばらく軟禁生活だと思ってたし。


「そこは大丈夫ですよ。わたくしの周囲は、メイドが見張ってますから。梶谷様は、逃げられません」

「あ、はい」


自分の無力を確認してから、二月さんの手をとって手を握る。


つまりは、俺が二月さんを突き飛ばして逃げようものなら、さっきみたいな感じで殺されかけるということだ。


「これは、ほんの戯言なのですが、さすがに緊張しますね」


急になんだと思って二月さんを見ると、先程同様に頬を赤く染めている。どうも手を握るという行為に、恥じらいが生まれてるみたいだ。


「それじゃあ、頑張ってくださいお嬢様」

「はい、頑張ります。これも、お嫁修行の一環です」


片手にバスケットを持つ二月さんは、元気よく頑張る宣言をした。


やっぱ、こう見ると怖い発言との落差がでかい。


「ところで、梶谷様はなにか好きな料理はありますか?」


二月さん先導の元、恐らくスーパーへ向かう最中、俺に聞かれたのは好きな料理。こういう時、なんて言うか迷うけど、とりあえずいつものあれでいいか。


「肉じゃが……かな」


そう、肉じゃが刈谷さんのを食べて以降、人の家の煮物と言うのに興味が出てきて、何か作ってもらえる時はこう答えようと決めている。


「肉じゃが?ですか、わかりましたやってみましょう」


ん?いま少し不安な返しだったけど、大丈夫だよな。さすがに肉じゃがは、知ってる……よな。

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