112 俺が強制的に隣を歩かされてる二月さんは俺にLv100おままごと(軟禁)をしてくる
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「いやー、あたたかい」
3月下旬春休みに入って、外に出ると暖かい陽の光が出迎えてくれる。2月は寒波だ何だと言われ、アホみたいに寒かったけど、さすが3月暖かい。
「さーて、忍さんと約束してるしは――」
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「ん?ここは……」
とてつもなく見覚えがあって、親しみのある真っ暗な部屋。それでも、絶対にここは違うとわかる。なんせ、何故か俺は椅子に縛られているんだから。
窓は、カーテンが閉められていて外は見えない。ただ、カーテンの隙間から光が入ってきてることから、日中であることだけはわかる。
たしか、俺は家から出て忍さんとの約束で本を見に行く予定だったはず。けれども、家を出てから以降の記憶が全くない。
「とりあえず、なにかできないか試してみるか」
無理とわかっていても、とりあえず腕や足に力を入れてみる。
入れはしたけど、手には手錠、体には縄と厳重に拘束されていて動けない。
「う〜ん、どうにか。あ」
まずった、体を横に動かして椅子をカタカタして遊んでたら、横に倒れた。自分じゃ、起き上がれないから誘拐犯を待つしかない。
「いま、凄い音しましたけど……あ!起きましたか旦那様」
「ん?」
俺がたてた大きな音に反応して、部屋に女の子が入ってきた。
部屋の入口が、背中側にある関係上、誰かわからないけど、旦那様という彼女の声はなんとなく聞き覚えがあるような気がする。
「よい、しょ。おはようございます、旦那様」
「え?」
倒れた俺を起こし、目の前に来たこの子は、見覚えのある綺麗な髪に黒嶺さん並に整った顔。誰かと言うと。
「二月……さん?」
「覚えていてくださったんですね、旦那様」
どうやら俺の記憶はあっていたみたいだ。しかも名前を呼んだだけで、二月さんの顔は一気に明るくなった。
「えっと、この状況は一体。それに、今何日?」
見た感じ俺を誘拐したのは、二月さん本人だ。わざわざ、そんな犯人が目の前にいるんだ、とりあえず状況整理をせねば。
「今日は、27日ですね」
「えっと、俺が外に出たのが24だから……3日も寝てたの!?」
「そうですね、実は電気ショックからの睡眠薬が、聞きすぎてしまっまたみたいで」
二月さん、俺が3日も寝たことについて謝罪してるけど、絶対そこじゃない。ていうか、3日って忍さんに悪いし、母さん達心配してないかな。
「そうそう大丈夫ですよ。旦那様のご家族は、こっちの方で説得とご旅行に行って貰っているので」
「え〜」
よく、母さん達それを飲み込めたな。一応とはいえ、自分たちの子供だってのに。まあ、二月さんがどんな説得したのかは、わからないからそこまで母さん達は責められないけど。
「なので、最低でもしばらくはここに居ても大丈夫ですよ」
「は、はぁ」
会話してる感じ、二月さんはなにか俺に恨みとかそういうので拐った感じではない。まあ、そこに関しては旦那様の呼びから分かってはいたけど。
「ですから、旦那様はしばらくここで生活しましょうか」
「と、いうと?」
「私と同棲です」
同棲か、なんとも言えんな。まあ、二月さんはそこまで俺に対して危害は加えないだろうけど。急に同棲と言われると、怖いものは怖いな。
「ですから、旦那様よろしくお願いしますね」
そう言いながら、俺の後ろに回った二月さんは、俺の腕に着いていた手錠と、縄を外してくれた。
「あれ?良かったの?外しちゃって」
俺が恐怖で震えてたら、このまま逃げ出しそうなものなのに、こんなあっさり解放してくれるとは。
「じゃないと、同棲にならないですから。それに、玄関前には見張りを置いてますし」
「み、見張り?」
二月さん笑顔で、普通風にものすごいこと言ってるな。つまりは、俺のために雇ったってことか。二月さん、もしや金持ちか。
「にしても旦那様、対して怖がってないですね」
「まあ、そこは、ね」
俺が恐怖で震えてないことに関しては、今年に入っての色んなことが、俺を強くしたからだろうな。
「とりあえず、旦那様この部屋から出ましょうか」
「あ、はい」
わけもわからず、二月さんの後ろを着いていき、俺の部屋っぽい部屋を出た。
俺がいま軟禁されてる場所は、一般的なマンションの一室のようで、見た感じの部屋数はリビングと俺の部屋もどき、それにもうひとつの3部屋。
リビングの中は、カーテンが締め切られていて、そこそこ暗い。
「そういや、スマホとかは」
「すみません。そちらは、没収させていただいてます。外部と連絡を取られると、少々面倒なので」
やはりそこは、軟禁。外部との連絡手段は完全に、経たれてるみたいだ。
「てか、二月さん悪いんだけど。呼び方変えてもらっていいかな」
「呼び方、ですか?」
「ちょっと、旦那様は……」
今まで呼ばれたことないからなんだろうけど、ものすごい背中がゾワゾワする。
「それもそうですね、まだ結婚してませんし。それじゃあ、梶谷様で」
「様は、変わんないんだね」
まあ、様ぐらいならいいか。メイド喫茶も、様呼びだし。
「で、これから何するの?」
「これからですか?まず、お互いのことを知りましょうか。私は知ってますけど」
自己紹介しましょう、と言った二月さんは食卓のとこの椅子に座り込んだ。正直、さっきから会話の節々怖い部分があるけど、そこは自己紹介ついでに聞こう。
「さ、まずはわたくしからしましょうか」
そこそこ暗い部屋の中で、俺と二月さんの自己紹介が始まる。
「とは言っても、名前は知ってますしそこは省きましょうか。では、わたくしになにか、聞きたいことがあれば聞いてください」
圧倒的効率的な進み方をして、まさかの質問タイムへ移行した。
「それじゃあ、聞くけど俺と二月さん話したことない……よね」
そこんとこ、あまり自信が無いから確定とは言えないけど、俺と二月さんは対面で話したことがない。そもそも、初めて会ったのは黒嶺さんのミスコンの時のはずだし。
「さあ、それはどうでしょうか。わたくしは、運命が2度導いてくださったと思ってますが」
「2度?」
不思議な笑みを浮かべながら、二月さんは2度と言った。2度ということは、俺と二月さんは過去に1度あったことがあるということでいいんだよね。
「とりあえず、次でいいや。俺の部屋、あの異様な再現率なに?」
俺が最初いた部屋は、どこからどう見ても俺の部屋だった。たぶん、縛られてなければ普通に気づかなかったレベル。
「お恥ずかしながら、梶谷様について沢山情報収集をしたので。あれぐらいなら、簡単ですよ」
ん?情報収集で俺の部屋の配置完全把握ってことは、それ以下の情報はわかりきってるってことか?なんか、背中に悪寒が……
「ま、まあとりあえずはいいかな。何か聞きたいこと出来たら、また聞くから。じゃあ次、二月さんいいよ。俺に質問して」
正直調べ尽くされてるなら、もう聞く情報すらなさそうなものだけど。
「えっと、それなら……」
俺への質問を解禁すると、二月さんの頬が急にぽっと赤く染って、もじもじし始めた。この反応は、嫌な予感しかしない。
「別にいいよなんでも」
「なんていうか、その下品なんですが梶谷様のそこの大きさを……」
「大きさ?」
二月さんが、俺から目を逸らして指を指した方向を見る。そこにあるのは、俺の清潔を守り抜いてきた我が子。
フフ、お嬢様はしたないですよ。そりゃあ、はしたないお嬢様には、こう返そう。
「教えないよ!」
少々、声が大きすぎたからか、二月さんがキョトンとした顔で固まってしまった。