表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/156

107 幼馴染と謝罪大会

1/2

「由乃、おはよ」

「…………」


朝、偶然では無いけれど、普通に出会った由乃に挨拶をするもフル無視をかまされた。


それもそのはず、昨日しっかり許しもらうことなく。殴られ、怒り心頭のまま由乃は帰ってしまったからだ。


まあ、最後の蛇足のせいではあるかもしれないけど。


「由乃、一緒に学校行こうぜ。今日は、いい天気だしさ」


ダメだ、全くもって話を聞いてくれる様子がない。由乃に話しかけてるけど、目で俺の方を見るでもなく、ずっと前を見て俺を透明人間かのように扱っている。


ここで、胸触ったらどうなるんだろ…………ダメだ、こんな考え持ってたら一生許して貰えなくなる。


「な、なあ由乃。昨日はごめんな。ちゃんとした話したいから、話を聞いてほし……ちょ、ちょっと由乃さん!」


しっかりとした話をしようとすると、由乃がものすごい早歩きで去っていってしまった。


これは、まじでまずいな。今まで、何度か由乃を怒らせたことはあるけど、ここまでのことは無かった。これを放置したら、多分関係の糸が完全に切れるな。



「そこのおねーさん。今日時間ある?もし良かったら、俺とお家デート、しない?」

「ッ……!チっ」


学校に着いてから、朝のHRまでの10分程の時間を使って、由乃を口説くけれど、舌打ちされた。


まず1回目は、失敗か……


「なあ由乃、この辺にぃ、旨いラーメン屋の屋台来てるらしいからさ、一緒に行かね」

「…………」


クソ、今度は舌打ちすらなかった。俺の想定では、速攻で行こう、ぐらい言われる予定だったのに……


2回目も失敗。


「由乃さん!どうか、僕の話を少しでいいので、聞いてください!」


恐らく移動教室中の由乃の前に、走っていき速攻で土下座を披露する。


「はぁ……」


え、今ため息疲れたよな。これは、どっちだろうか、呆れのため息か、根負けなのか。


「由乃ちゃん、行っちゃうの?梶谷くん、話があるんじゃないの」

「いいのあんなの、ほっといて。どうせ、まともな話じゃないし」


あ、そりゃ呆れのほうだよな。


3回目も失敗。いよいよ、手が無くなってきた。


「あぁ……全然だめ」


あれから2回ら思いつく限りで由乃へ謝罪を試みたけれど、全て無視されてしまった。


それもあって、今の俺は完全に意気消沈。力なく、自席に座り込んだ。


「元気なさそうですけど、どうかしましたか?」

「あ、刈谷さん。わかる?良かったら、相談に乗ってくれないかな?」

「珍しいですね、優くんが私を勉強以外で頼るなんて」

「まあ、今は四の五の言ってらんないからね」

「あらひどい」


いつもは、刈谷さんにあまり借りを作りたくないのもあって、助けを呼ぶのは避けてるけど、今はそんなの言ってられないからな。


「それで優くんは、私に何を求めるんですか?」

「ああ、そうそう。人への謝り方を教えて欲しいんだけど」

「謝り方、ですか?」


俺の相談内用を聞いて、刈谷さんの顔が何当然のこと聞いてるんだ、見たいな顔になった。


「それって、普通にごめんなさいじゃ、ダメなんですか?」

「ダメっていうか……その、当人に話を聞いて貰えないって感じで」


謝罪以前に、そこに至るための通路が完全に絶たれてるから、ごめんなさいができない。


「それって、謝る必要ありますか?だって、そのかたが拒んでるんですよね」

「そうなんだけど。多分今謝らないと関係が消える気がするんだよ」


このままの関係だと、気まずい空気が一生続いて、お互いが自然に会わなくなるようになる気がする。


「それなら、諦めればいいんじゃ……」

「そうするしかないか……」


でも、仲直りを諦めたとこで、最低でも高校の間は親同士の仲がいいから、強制的に合う日がある気がする。


「それか、相手のことなんて気にせず、無理やり謝るかですね」

「えっと、それはどういう……」

「要は、相手の方が逃げられない所においやって、無理やり謝罪をするってことですね。まあ、それをしたところで、相手の方に許してもらえるかは微妙ですけど」


そうか、そういう手もない訳では無いのか。ミスったら、本格的に由乃と縁が切れるけど、上手く行けば仲直りはできる。


2分の1の状況ではあるけど、やってみる価値はありそうだ。


せめて確率をあげるとすれば、しっかりと由乃の怒りの原因を解析して、そこを謝るぐらいか。


「おっけ。ありがとう刈谷さん。なんとなくの、方針は決まったよ」

「そうですか、力になれたようで良かったです。もし、謝罪に失敗して、落ち込んだら私のとこに来てくださいね、慰めてあげますから」

「それは、普通のやり方でだよね」


刈谷さんの助言もあって、とりあえずのやり方は決まった。あとは、時間を待つだけだ。その間になんとなくの、謝罪文を考えておこう。



「よし、そろそろ行くか」


機は熟した。今日この日、俺にとって一世一代の勝負が始まる。このために、授業なんてフル無視で言葉を考えてきた。勝率は、少しは上がっているはずだ。


「まずは、運の勝負だ」


由乃の家の前に立って、インターフォンをおす。ここで由乃が出た時点で、俺の負けは濃くなる。


「優くんどうかした?」


よし!まずは上手くいった。由乃のお母さんなら、8割の確率で家へあげてくれる。まだ、風呂を食うには早いがとても、食いたい。


「いや、その由乃に用事があるんですけど、上がってもいいですか?」

「ほぉ……全然いいよ。鍵空いてるから、お好きにどうぞ。由乃は部屋にいるからね」


なんか、納得の仕方が気になるけど、良かった普通に第1関門は突破……なんか、由乃のお母さんがめちゃニヤニヤしてる。


由乃のお母さんのニヤニヤはともかく、とりあえず由乃の部屋の前にまで来ることができた。俺がやるべきことは、由乃を逃がさないことだ。


それさえできれば、俺の謝罪が円滑に進んでくれる、はずだ。そうだと嬉しいな。

自分で書いてて思ったんですけど、ものすごい早歩きってなんでしょうかね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ