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106 幼馴染と媚薬入りチョコ

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「ごめんな由乃、遅くなった」

「あ❤優くんきたー❤」

「お、おう遅くなった……」


キンキンに冷えた牛乳を、コップに注いで部屋に戻ると、何故か勉強机の椅子に座る由乃が、すごい速度でこっちを見てきた。


「ここに置いとくぞ牛乳……」

「どうかした?」

「い、いやなんでも」


どうもおかしい、由乃に近づいてわかったけど、由乃の顔が赤い。しかも、口調がいつもと少し違うし、声が妙に甘い。


「とりあえず、牛乳でも飲みな」

「ええ?優くんのミルクー?」


うん、反応が完全に酔っ払いだな。多分だけど、石橋さんのチョコでも食べたんだろう。ベッドの上に、食べかけの石橋さんのチョコが置かれてるし。


「はは、俺からミルクは出ないから、乳牛ので我慢しような」

「何言ってんのー、出るじゃんミルク。ここー❤」


甘い声を出している由乃は、俺の下腹部付近に近づいて、匂いを嗅ぎ始めた。


「あの、由乃さん。あまり、おふざけはよろしくないかと……」

「ふざけてないよー、私は優くんのミルクが飲みたいのー」


変に駄々をこねて、執拗に俺のミルクを欲する由乃。あまりにも、子供っぽすぎる。


「そんなこと言われても、俺からミルクは出ないから、ほら牛乳飲んで」

「あ❤おいしー」


完全酔っ払いとかした由乃に、牛乳入りのコップを渡すと、その場で一気に飲み干して、感嘆の息を漏らした。


「由乃さん、できればいつも通りにしてくれると嬉しいんですけど……」


今の由乃は、いつもと違って、すごい尻軽そうで何か危ういものを感じる。


「えー?でもー、優くんが悪いんだよー。私の知らないところでー、たくさん女の子と関係持っちゃって。このこの」


由乃はこの色男めとでも言うように、俺の上半身に肘をぐりぐり押し付けて、茶化してくる。


「まあ、今は私が優くんを独占できるけどー❤」

「お、おい急に……」


酔っ払いの由乃は、俺を独占とか言うなり、俺に思いっきり飛びついて、俺と共にベッドの上に倒れ込んだ。


「いてて……急に抱きつくなよ」

「えへへー❤ごめんごめん」

「何も無かったから、よかったけど……お?」


倒れた状態から、姿勢を戻すために、手を横に伸ばしたら、よもや俺のものとは思えない感触の、片目の布に手が触れた。


「あ、あのー由乃さんこれは……」


固めの布を掴んで、由乃の目の前に持っていき、何かを聞く。俺の掴んだこの布は、水色のレースの装飾が着いている、直近で見覚えのあるものだ。


「あ❤それ?私のしたぎー、可愛いでしょ」

「あ、はいそうですか……」

「暑くて、脱いだんだよ。本当は、下も脱ぎたいんだけど」

「それは、やめて」


とりあえず今日の由乃が、パンツスタイルの服装で良かった。


あと、何となく石橋さんがチョコに何をしたか、確定したな。8割がたお酒、残りの確率で媚薬的なものだろう。それか、両方か。


「ええー?わたし暑いのにー。あ❤優くんこれいる?」

「いらないよ」

「可愛いのにー」


まあ、確かにデザインがいいし、由乃が着けてる姿を考えるとそそ…………やめておこう。


「というか由乃さん。一旦どいてくれません?ちょっと、苦しいので」


今の状況は、完全に由乃が俺に覆いかぶさっていて、ちょっと苦しい。


「ええー?やだー❤ギュー」


めんどうくさいな……


俺がどく事をお願いすると、離れたくないのか、そのまま俺に寝たまま抱きついてきた。


「苦しいからせめて、起き上がらせて」

「やだー、離れたくない。寂しいの」

「寂しいって……」


今の由乃は、完全に幼児退行して6、7歳そこらの子供並みの知能をしている。


「え?どこが寂しいって、ここー」


聞いてもないことを説明し始めた由乃は、一旦俺から離れて、お腹の当たりをさすっている。


「ねえ、優くん❤私のこと、満たしてよー。寂しいの❤」


なんか、軽い病んだ敵の幹部みたいなこと言い始めたな。


「ねえ、いいでしょ❤おねがーい」


俺にオネダリをする由乃は、また俺に強く抱きついてきて、正しく今はだいしゅきホールドをされている。


「て、言われてもさすがに……」

「カブー!」

「いった!」


由乃の言っていることが、明らか綾ちゃんと同じだと判断して、はぐらかそうと試みていたら、由乃に首筋を甘噛みされた。


「あぁ❤噛み跡できちゃった❤」


由乃は、俺に跡が残せた嬉しいからか、妙に小悪魔的な声で、恍惚とした顔をしている。


「急に噛むのはやめませんか?」

「ええ?無理ー」


ほんとにどうしよう、この酔っぱらい。いい感じに、寝てくれると嬉しいんだけどな。


あ、そういうことか。


「あのー由乃さん。笑ってるとこ、悪いんですけど、一緒に寝ません?」

「同衾?いいよー、優くん一緒に寝よ」


よし、予想通り。今の由乃は、ほぼなんでもOKガールだから、一緒に寝るのを許可してくれた。


「ほぉら❤優くん来て来て」


由乃は、同衾を許可するなり、すぐ俺から離れて、寝る体勢へ入った。そして、今はこっちに来てと由乃の横をトントン叩いている。


「はいはい、今行きますよ」

「なんか、嫌そう。もうちょっと、嬉しそうにして!」

「え、いやぁ?」

「いいから!早く!」


まじでめんどうくさいな。そもそも、なんで石橋さんは、遠隔で薬を盛ろうとしてたんだ。意味ないだろ、石橋さん居ないと。


「おやすみ、由乃」

「うん。おやすみー❤」


とりあえずでそれっぽく、おやすみといったら、由乃は満足してくれたようで、そのまま俺の横で目を瞑った。


思いのほか、すんなりいったな。チョロ。



由乃と寝始めてどれくらいたっだろうか。多分そこそこたってはいるんだろうけど、由乃は目を瞑ってはいるけれど、寝てない。なんで、俺がそれをわかるのかそれは……


「あの、由乃さん。さっきから、俺の下腹部を撫でないでくれますかね」

「や〜だ❤さっきも言ったでしょ、私寂しいの」

「どうだっていいよ」


そう、由乃は俺の横で寝ようとする振りをしながら、俺にずっと誘惑まがいなことをしてきていた。例を挙げると、足を絡めてきたり、服の中手を突っ込んできたりetc……


「ね?お願い、私のこと満たして❤エッチ❤エッチ❤」


目の中にハートを浮かべながら、簡単な単語を連呼する由乃。


つには隠さなくなったなこいつ。


「お願いエッチしよ、先っぽでいいから」

「言うやつ逆だろ!」


普通そういうお願いは、女子側じゃなくて男側がするものだと思う。そう考えると、由乃も必死だな。


「じゃあ、優くんが言ってくれるの!?いいよ、奥までズッポ――」

「言わなくていいよ!」


なんだよほんとに。いつもの由乃から、性格変わりすぎだろ。


「じゃぁチュウ、チュウだけでいいから」

「おいちょっと待て、顔近づけんなって」


俺の承諾なしに、無理失理顔を近づけてくる由乃。せめて、キスをするなら、シラフの由乃がいい。


「じゃあ、エッチ、エッチがいい!私を満たして!」

「だから…………」


今の由乃は、いつの間にか寝るのをやめ、俺を押し倒したような形で、子供っぽい声で何度も大人なな内容の駄々をこねている。


俺が何をしても、堂々巡りな由乃に頭を抱えるしかない。


「それは、ただの気の迷いだから。それは、由乃の本心じゃないだろ」


実際、俺と由乃は仲がいいけど、腐れ縁で仲がいいと言うだけで、この由乃の俺とエッ……そういうことをしたいというのは、石橋さんの薬の効果でしかないはずだ。


「そんなのじゃない!これは本心!優くんが、ほかの女の子と仲良くしてると、私は妬いちゃうの!」


少し涙目になりながらも、必死で俺に訴えてくる。


どうもガチっぽい感じで言ってるけど、やっぱ薬の存在がチラつくから、信憑性がないな。


「だから、お願い。私を安心させて!好きで満たして」

「ああ!ストップストップ」


完全馬乗り状態となった由乃は、俺の上で下着をつけていない上の服を脱ぎ始めた。


「いいじゃん、好きなだけ吸っていいし、あともつけていいから!」

「それは出来な――」

「お兄、入る……」


よし!優來いいタイミングで来た。優來にお願いして、由乃を剥がしてもらおう。


「あ、優來ちょっとヘル…………プ」

「またあとにする……」


部屋に来た優來は、俺が知らないと言ったチョコ持っている。そして今の状況を見てか、軽蔑した目をして部屋を出ていってしまった。


今の俺は、優來が感情をしっかり出せるようになりつつあるというのと、チョコを作ったという感動と、いろいろと選択ミスをした後悔と複雑な心境だ。


「優來ちゃんに、見られちゃったぁ❤恥ずかしい」

「そうだな、恥ずかしい恥ずかしい」


さすがにそろそろ、由乃をしっかりめに寝かせるかなにかして、薬を抜かないと。そろそろ、俺もまずい気がしてきた。


にしても、方法がない。首を絞めるというのもあるけど、それはさすがに気が引けるし。


「てなると、これしか!」

「あ、優くんそんな❤」


馬乗り状態の由乃に、抱きつく形で拘束する。これなら、由乃は何も出来ないし、どこかで諦めて寝てくれるはずだ。


「ほら、由乃寝ようか。これなら、少しは満たされるでしょ?」


そう、この状況は俺が精神攻撃に耐えれば、話が着く話だ。そう、俺が何もしなければいいだけだ、石になれ梶谷優。


「うん❤優くん大好き❤寝よ〜」


俺にハグをされて嬉しいようで、完全密着状態の中、2人仲良くハグをしながら睡眠体制へ入った。


とりあえず、由乃を離さないよう自分の意識を、睡眠の世界へ送ろう。


「チュウしたい❤」

「それはダメ!」



「……う…………優!起きなさい、よ!」

「いった!!」


遠くから誰かの声が聞こえるかと思ったら、唐突にデコに激痛が走った。どうやら、思いっきり由乃に頭突きをされたみたいだ。


あんまし開けたくない目を開けると、目の前には顔を赤くした由乃の顔がドアップであった。


「顔、近い」

「そんなの、私が聞きたいわよ!」


由乃の反応を見る感じ、石橋さんのチョコの効果はしっかりと抜けてくれているみたいだ。


「ね、ねぇ顔近いから、手、離して……」

「ああ、ごめん」


俺は寝ている間も由乃は、離さなかったようで、未だに由乃にハグをしている。


「なんで、私とあんたが添い寝してんのよ。しかもチョコ、口に入れてから記憶ないし」

「まあ、おいしすぎたんだろ」


チョコのことを話して、さっきのことを思い出されてもめんどそうだし、上手くはぐらかしておこう。


「なにそれ。ま、まあいいや。気分悪いから、帰る」

「そうか、じゃあな」


帰ると言った由乃は、すぐに起き上がって、軽く髪を直し始めた。


やっぱ由乃は、そうだよな。あのチョコの状態は、やはり迷走状態だったみたいだ。


「…………?」

「どうかしたか?」


ベッドの上に起き上がった由乃が、何か違和感があったのか、体全体を手で撫で始めた。


「ない……ついてない」

「え?」


なにか焦り始めた由乃は、俺の部屋全体をキョロキョロと見渡し始めた。


そして、部屋を見渡したかと思へば、床の方を見てから視線が止まって、赤かった顔が一気に青ざめて言った。


「け、ケダモノ!」


そう言った由乃は、服を着ているというのに、体全体を掛け布団で隠し、俺の事を軽蔑したような怖がるような顔で見ている。


「ケダモノって……あぁ」


由乃の視線が止まった方向を、見てみるとそこには由乃自信が脱ぎ捨てた水色の下着が落ちている。


「最低!優、最低!」


最低と叫びながら、俺をデカイ枕で殴ってくる由乃。


「ちょ、ちょっとまって、弁明させて勘違いだからら、由乃の柔肌にはノータッチだから」


そういや弁明とは言ったけど、材料がないな。


「ほんと?」

「ほんとほんと、気になるなら確認してみなって」

「確認って、なにを?」


未だに俺が襲ったと思っているのか、由乃の声は震えていて弱々しい。


「そりゃ、処女ま――」

「最っ低!」

「グウェ」

「私帰るから」


由乃は俺を1発殴って、怒り心頭のまま部屋を出ていった。とりあえず、超顔は痛いけど疑いは晴れたっぽい。俺の信用が、地に落ちた可能性はあるけど。


「とりあえず、優來に謝りに行こう。ついでに、チョコを冷蔵庫に入れよう……」


床に置かれたチョコ回収して、由乃の下着は机の上に置いてからしてリビングへ降りる。道中歩く振動だけで、頬が痛かった。


ていうか、これどうしよう。多分今由乃に渡すと、また殴られそうだし洗濯してから、返そうかな。それはそれで、殴られる気もするけど。


「お兄、頬赤い」

「これは……まあ、気にすんな。たまにある事だ」


正直痛すぎて喋るのも辛いけど、優來に謝罪をするためだ、痛みに耐えるしかない。


「そんなことより、さっきはごめんな」

「なんのこと……」

「いろいろとだよ、嫌なとこ見せたし、やったしで」


今日の俺は、選択ミスのオンパレードだった。いや、1つの選択ミスが、その後連鎖的にほかの事象と被ったという可能性もあるか。


「気にしてない。お兄も、男の子……」

「お、おうそうだな」


優來にド健全な男子高校生と思われるのは、少し嫌なとこもあるけど、納得してくれたようでよかった。


「そんな、お兄。あげる」

「おう、ありがとう。ちなみにこれは、優來の……」

「手作り」


おお、やはりこれは優來の手作りか、嬉しさか痛みかわかんないけど、泣きそうだ。


「じゃあ、さっそくいただきます」


不躾かもしれないけれど、優來の目の前で、封を開けて口にチョコを入れる。チョコを噛むたび、頬がめちゃ痛いけど美味しい。


「うん、上手いな。頑張ったな、優來」

「お兄、涙」

「おお、すまんすまん」


優來のチョコを食べて、涙が出たけど、こうは思える。


明日も頑張ろう。

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