五
それから、食べ損ねていた昼食を交替でとった。普段なら食事時でもいちいち停船しないものなのに、今日に限って帆を完全に閉じ、波に揺られ続けている。全員の食事が終わっても一向に航行を再開する様子はなく、ヴィトーリアはメインマストの見張り台に上ったきり下りてこない。
「姐御ー! なんでずっと停まってるのー? 襲わないならほっといて先進めばー?」
上に向かってステラが叫ぶと、ヴィトーリアは船首楼甲板の上を指した。そこにはカルロスの姿があり、どうも彼に聞けと言っているように思えた。
「カルロスさーん」
船首楼甲板に上がりながら、背の高い後ろ姿に声をかける。カルロスは前方を見たまま、振り返りもせずに答えた。
「襲うタイミングを待ってるんでさあ」
驚くべき言葉がその口から飛び出て、ステラは慌てて駆け寄りカルロスの横に並ぶ。手すりの向こうに見える海の上には、先程の商船と思しきものが戻ってきていた。一度捨てた積み荷を拾いにきたのだろう。
「襲うってなに!? え、見逃してあげるんじゃないの? 騙し討ちとか最低!」
先程の感動は何だったのか。結局は悪逆非道な海賊なのだと思い、ステラはカルロスに食って掛かった。苦笑いを浮かべながら両肩を押さえつけられ、宥められる。
「まあまあ。それはお嬢の勘違いでさあ」
「だから、私が思ったようないい人たちじゃないってことでしょ!?」
肩に置かれた手を振り払いつつ、ステラは睨み上げる。
「旦那は相変わらず口下手だなあ。それじゃ余計に勘違いしちまう」
声のした方を振り返ると、オスバルドが上がってくるところだった。
「どういうこと、オスバルドさん?」
「獲物はあの船じゃあないってことだよ、世間知らずの嬢ちゃん」
世間知らずという言葉に反応して、ステラがふくれっ面になる。知っているわけがない、海賊の言う世間など。
「じゃあ、何を狙ってんのさ?」
オスバルドはステラの目の前まで来て、上から見下ろしながら問う。
「嬢ちゃんは、魚を釣ったことはあるか?」
当然釣りくらいはしたことがある。海に囲まれた港町の出身だ。ステラは首を縦に振った。
「そん時、何を使った?」
「えっと……針と糸。それから竿。――あ、そういうことなんだ!」
ステラの顔が明るく輝く。もう一つ必要なのは、餌。あの船は餌なのだ。
「お頭は、あの船はカナリア諸島に向かうと考えてんだろ。あの辺りは海賊の狩場の一つだ。新大陸帰りのイスパニア船なんかも結構通るから、同業者が沢山いるのさ。あの船を追いかけていけば――」
「海賊が釣れるってわけだね! そして、お宝奪っちゃう!」
「そういう算段ってわけよ」
満足そうにオスバルドが笑い声を上げた。しばらく高笑いを続けた後、腕組みをして見下ろしながら、ステラに問う。
「どうだ、俺っちのこと見直したか?」
「は? なんで?」
半眼になって見上げながらステラは続ける。
「それ考えたの姐御だよね? なんでオスバルドさんを見直すの?」
「お、俺っちは、別にお頭に聞いてきたわけじゃねえっつーの。深慮遠謀を察してだな――」
「はいはい。前にも同じことやったって言うんだよね? 記憶力だけは褒めてあげる!」
意地悪そうな笑みを浮かべて、ステラはそう言ってのける。オスバルドの後ろでは、カルロスが笑いを堪えるのに必死なようだった。
「てめー、今朝助けに行ってやったのに、この恩知らずめ!」
「あははははは!」
掴みかかろうとしてくるオスバルドの手を避けて、ステラは逃げ出す。手すりを飛び越えて主甲板に下りると、ゆらりと船が揺れて、前に進みだした。いつの間にか帆が半開になっている。
再び階段を上って船首楼甲板に戻ると、手すりに飛びついて前を見た。積み荷の回収が終わったのか、商船も帆を張って動き始めていた。
「ステラ、てめー今日こそは――」
「黙って、オスバルドさん! こっからは慎重にいかなきゃ駄目でしょ? 大騒ぎして見つかっちゃったらどうすんのさ?」
追いかけてきたオスバルドを、ステラが至極真面目な顔でそう窘める。きょとんとした表情でそれを聞くオスバルドに、カルロスが言う。
「オスバルド、お前さん一応戦いの準備をしとけ。任せたぞ」
「へ、へえ……」
すごすごと引き下がり、砲列甲板の方へと向かうオスバルド。カルロスはそれを見送ると、上を指して口を開く。
「お嬢はあの上に」
その言葉を聞いてステラの顔が不満気に歪む。口からも気持ちが声となって漏れた。
「えー、またー?」
指差した場所は、フォアマスト上の見張り台。そこで見物していろ、戦いには加わらせない。そういう意思表示に違いない。実際、この船に乗った後、ヴェルデ岬諸島付近で一度海賊船に遭遇しているが、その時も見張り台の上から見ているだけだった。
ステラは考えを巡らせる。見張り台に上れと言われただけ。戦ってはいけないとは言われていない。あそこからなら戦ってもいい。そう解釈した。
急ににっこりと笑うと、ステラはカルロスに言う。
「わかったー。カルロスさんも気を付けてねー」
操船の指示のためか、主甲板へと下りていくカルロスの背にそう声をかけると、ステラは舷側にある索具に取りついた。横向きにも縄が張ってあり、梯子代わりにして登れるようになっている。フォアマストの見張り台へと辿り付くと、そこで見張りをしていた若い黒人船員に手を挙げて声をかけた。
「よろしく! えっと、名前なんていったっけ……?」
相手は何も答えない。不思議そうにステラを見つめた後、前方に視線を戻してしまった。
「あ、そっか、まだ言葉通じないんだっけ……」
見慣れない人種の顔は区別がつけにくい。よくよく思い出してみたら、ステラが乗せられていた奴隷交易船から救い出されたばかりの者だった。確か、故郷に家族はいるが、貧乏な集落なので、金を稼いでから帰りたいと言っていると、カルロスから聞いた気がする。
ステラは青年の肩を叩いて自分の方を向かせると、自身を指差して言った。
「ステラ」
「ステッ……ラ?」
ぎこちない発音で繰り返されたのを聞いて、頷きながらもう一度自分の名前を繰り返した。
「ステラ」
「ステラ! ステラ!」
ステラの方を指差しながら、青年は嬉しそうに連呼する。名前だと認識してもらえたと確信すると、今度は青年の方を指差した。名前を教えてくれという意味だと理解してくれたのだろう。青年は何事か口走った。
「ンディアエ」
「は?」
よく聞き取れず、思わず問い返した。
「ンディアエ」
ンディアエと言っているような気がするが、発音が特殊過ぎてよく聞き取れない。それが名前なのだろうか。少なくともステラには、正しく呼べる自信がなかった。
ステラが困惑していると、ンディアエと名乗っているように聞こえる青年は、しばし考えるような素振りを見せた。その後、何かを思い出したように頷くと、自分を指差して改めて口を開く。
「ドミンゴ」
飛び出してきた単語は、ポルトガルではありふれた人名のはず。そう判断すると、ステラは青年を指差して問い返した。
「ドミンゴ?」
「ドミンゴ! ドミンゴ!」
ンディアエ改めドミンゴは、また嬉しそうに自分を指しながら、名前を連呼した。カルロスがつけたのだろう。南西アフリカの人々の名前は、西欧人には発音が難しいものが多い。覚えられないのも呼べないのも不便なので、ポルトガルやイスパニア風の名前を付けられている者が多い。
「よろしく、ドミンゴさん!」
ステラが満面の笑みで返すと、ドミンゴも爽やかな笑顔を向けてくれた。
それからドミンゴが斜め前方を指差す。その先を追うと、先程の商船が切り返している途中だった。風上に向かって進む際に行う、タッキングと呼ばれる動作。
風に逆らって進む必要がある場合、風上に対して斜めに進む。どれくらいの角度をつけるかは、帆の種類やマストの数、風の強さや海流によって変わるが、いずれにせよ行きたい方向とはずれる。そのため、ある程度進んだら舵を切って、逆方向に角度をつけることで、進路を戻す。
この風上に船首を向けながら切り返す動作をタッキングと呼び、それを交互に繰り返してジグザグに進んでいく操船をビーティングと呼ぶ。
やはりあの商船は、カナリア諸島に向かいたいのだろう。ビーティングをして貿易風に逆らい、北東へ進路を取っているようだった。
こちらの船も、近づきすぎず、離れすぎずといった間合いを保って、同じようにして北東へと進んでいく。
しばらくそうしていると、ドミンゴが何事か叫びつつ風上の方を指した。
「え、なに? 何か見えるの?」
水平線近くに何かが見えるような気がするが、小さすぎてステラにはよくわからない。しかし後ろを振り返ると、メインマストの方の見張り台でも、同じようにして見張りとヴィトーリアが話をしている。優れた視力を持つ彼らには、何か見えるのだろう。
「総員、戦闘準備始め! 同業者を想定しろよ!」
メインマスト上の見張り台から、ヴィトーリアが声を張り上げた。下ではカルロスが何人かの黒人船員に指示を出している。まだポルトガル語が話せない船員への伝令だろう。すぐにあちこちへと駆け去っていった。
そのうちの一人が、ステラたちの足元にきて何事か叫んだ。何と言っているのか、ステラには聞き取ることも出来ないが、恐らくアフリカの言葉なのだろう。ドミンゴはそれに応じて、二言三言会話を交わしているようだった。
「ステラ! ステラ!」
会話を終えると、ドミンゴはステラの方を向いて何事かジェスチャーを始めた。左手を前に伸ばし、右手を添える。それから右手だけ後ろに引き、指を開く。それを何回か繰り返した。
「弓が欲しいの?」
ステラも同じ動作をしながら問うと、嬉しそうな顔で頷きながらドミンゴがまた繰り返す。
アフリカの大地で狩猟生活をしていた者であれば、弓はお手の物なはずである。ここから敵船員を狙撃したいということだろう。それもあって、言葉も通じない新米なのに、ここにいるのかもしれない。
「わかった、取ってくるね!」
慌ただしくなってきた甲板へと下りていき、弓はどこかと見回す。第一甲板の下の砲列甲板にオスバルドがいるのが見えて、ステラはそこへと駆け寄った。
「オスバルドさーん、弓ないかなー?」
周りの船員に忙しく指示を出していたオスバルドが振り返り、いかにも面倒そうに短く言った。
「嬢ちゃんに使えるような弓はねえ!」
すぐに元の方を向き、鉄砲の準備をしている者たちに色々とうるさく口出しを始めた。
ステラはオスバルドの肩を掴み、飛び上がるようにして耳元で叫ぶ。
「私じゃなくて、ドミンゴさんが使うの!」
耳を押さえながら上半身を逸らしたオスバルドは、眉をひそめて問い返す。
「ドミンゴー?」
「そうそう。フォアマストの見張り台にいるドミンゴさん」
オスバルドはフォアマストの上が見える位置まで小走りに移動すると、見上げながら呟いた。
「ああ、あいつか」
そのまま主甲板まで行って、開けられた格子蓋の下に向かってオスバルドが叫ぶ。
「おーい、短い弓くれ。そこにあるM字型のやつ。……そうそう、それそれ」
下から弓が差し出され、ステラが手を伸ばして受け取る。その間に矢筒をオスバルドが貰ってくれ、ステラに手渡しながら言った。
「一度でも撃ったら、撃ち返してくる可能性高いから気を付けろよ? 相手は鉄砲も使ってくるぞ?」
「わかってるってば。――あ、そのロープもちょうだい」
船倉に細いロープの束があるのを見て、ステラは下にいる船員に言った。オスバルドが不審そうな表情で問う。
「なんに使うんだよ?」
「あ……えっと、ほら、落ちたら困るでしょ? あの高さだと無事じゃ済まないし」
「命綱か。しっかり結んどけよ!」
深く突っ込まれずに済んで良かったと思いながら、受け取ったものを担いでフォアマストの方へと戻る。すべて持ったまま上るのは非力なステラには大変そうだったので、弓、矢筒と順番に持って往復した。
「ステラ! ステラ!」
最後にロープを持って上がると、ドミンゴが前方を指している。そちらを見ると、商船はもう海賊と思われる船に追いつかれるところだった。
向こうも小型のガレオン船で、船足はかなり異なるようだった。速度を合わせるためか、一部の帆を畳みつつある。
こちらの船は全開のまま減速せずにその後を追い、ぐんぐんと近づいていった。
「左舷斉射用意!」
船尾楼甲板の上から、ヴィトーリアがジェスチャーと共に声を張り上げる。何人かが復唱しながら、同じジェスチャーを行った。船倉を覗き込みながら叫んでいる者もいる。
左舷斉射と言っても、敵船は前方。ほぼ真っすぐ行った位置にいる。船首に置いてある小さなファルコネット砲でないと狙えないように見えるのに、舷側砲の発射指示。
ステラが首を捻っていると、シルヴェリオ号は減速するどころか、追い風を受けて更に加速。商船に並びかけ今にも襲い掛かりそうな海賊船に、猛速度で接近していく。
止まることは不可能に思える。接舷して斬り込むどころか、衝突してしまいそうに見えた。
揺れる見張り台の上で、必死に手すりに掴まりながら眼を見開いて、何が起こるのかしっかりと見ようとした。少しだけ面舵が切られ、海賊船よりやや右方向に進路を逸れていく。
「撃て!」
ヴィトーリアの指示の後、海賊船を追い越しながら舷側砲が一斉に火を噴いた。カノン砲の轟音が響き、反動で船が僅かに右へと傾く。
思わず目を瞑ってしまったが、慌てて斜め後ろを振り返った。ステラの視線の先では、海賊船のメインマストが大きく傾いでいる。根元に命中したようだった。帆も多数が破れて、ボロボロになっていた。索具もあちこち切れており、すぐには帆を張り直せない状態に見える。
先程は甲板上に何人もの海賊がいたが、今は見えない。距離が離れてしまったので死角に入ってしまったのか、それとも砲撃に巻き込まれたのか、判別はつかない。
「取舵一杯。右舷斉射用意。他の奴らは射撃戦の準備をしろよ!」
横帆が速やかに畳まれ、ミズンマストのラテンセイルだけで左手へと旋回していく。
海賊船が推進力を失ったことで、商船が逃げていく。そちらにも多少の被害はあったようだが、まともに風を受けることが出来なくなったと思われる海賊船とは、もう速度が決定的に異なる。
更に面舵に切り替えて、船はぐるりと旋回し、右手に海賊船を捉えた。
「撃て!」
先程よりは距離があるが、再び号令が下る。轟音と共に、小さな弾が拡散しながら多数飛んでいった。敵の船体やマストに命中し、木片がはじけ飛ぶ。外れた弾が、水面にいくつもの水柱を立てた。
使っているのは、ぶどう弾と呼ばれる種類のもののようだった。最近使われるようになった砲弾で、帆やそれを固定したり操作したりするための索具の破壊、および人員殺傷が目的の、一種の散弾である。
帆布製の袋に小さな砲弾を複数詰め、それを砲身に入れて撃ち出す。発射の衝撃で袋が破れ、中の小さな砲弾が多数飛んでいくというもの。拡散してしまうので有効射程距離は短いが、足止めには最も適した武器の一つと言える。
敵船は生きている砲門から撃ち返してきたが、まだ速度が死んでいないシルヴェリオ号には命中せず、船の通り過ぎた後に水柱が上がる。
そのまま死角である敵船真後ろに回り込んでから、シルヴェリオ号は減速しつつ近付いていった。
甲板の上には、操船用の人員以外のすべてが集合して、射撃戦に備えていた。既に火縄に点火済みのアルケブス銃を持った船員たちが左舷に並ぶ。その後ろには弓を持った者たち。それから、敵船拘束用の鉤綱を何人かが用意している。
それは敵も同様で、既に準備を整えている。砲撃で死んだのか、甲板上に多数の船員が転がっていたが、鉄砲の数はこちらよりも多いように見えた。
アルケブス銃の再装填には時間がかかる。砲身の中に残ったゴミを取り除き、その後火薬を詰め、弾丸を入れる必要がある。連続して鉄砲だけで撃ち合うということは少なく、一斉射したのちは弓を撃ち合いつつ隠れながら装填するか、勢いに乗じて敵船に移乗しての戦闘になる。
ステラは見張り台の手すりに結び付けたロープを引いて、外れないようにしっかりと固定されていることを確認した。そして両手を握ったり開いたりして、作業用の手袋の感触を確かめる。
既に射程内。しかし両船ともまだ撃たない。互いに船縁の手すりの裏に隠れ、なるべく引きつけてからの攻撃を狙っている。
先に動いたのは敵の方だった。ひときわ高い船尾楼回廊に並んだアルケブス銃が一斉に火を噴く。船首楼甲板を中心に弾丸が降り注ぎ、木の破片が飛んだ。何人かに命中してしまったらしく、倒れていく者がいる。
「弓のみ。撃て!」
すぐにヴィトーリアの指示が飛び、鉄砲は使わず弓だけで応射が始まる。近距離にもかかわらず斜め上へと放ち、敵船の頭上から矢の雨を降らせた。たまらず敵の残りの鉄砲隊が立ち上がり、各個に銃撃が始まる。しかし角度が悪く、ほとんどは船縁や何もない甲板上に命中して、木屑を飛ばすだけだった。
銃を撃ち尽くした敵船では、慌てて再装填を始めているのが見えた。メインマストの上から指示があり、鉤綱が投げられて、敵船との間を繋ぐ。同時に、船首楼や船尾楼など、高い位置にある甲板に各自移動して、順次射撃が始まった。
鉤綱を引くと船はほぼ真横に並んだ状態となり、無防備な状態の敵船員が次々と倒れていく。敵船の第一甲板後方にいる人物が、船員たちに指示を飛ばしている。一部は再装填を止め、弓に持ち替えて撃ち返してきた。
そこから互いに弓の撃ち合いに変わる。各種障害物に隠れての撃ち合いであり、互いにほとんど命中はしていない。一番当てているのが、ステラの隣で上から狙っているドミンゴだった。
「斬り込み戦用意!」
埒が明かないと判断したのか、ヴィトーリアは第一甲板まで下りて渡し板の準備をさせ始めた。しかし、今はまずいとステラには思える。敵船では全員が弓に持ち替えたわけではない。先程から指示を出している甲板長と思われる人物の周囲では、何人かの射撃態勢が整いつつあった。
「ドミンゴさん、あそこ狙って!」
矢をつがえている途中のドミンゴの腕を叩いて注意を引き、指で差して敵鉄砲隊を示す。状況を理解したのか、ドミンゴの矢が鋭く放たれた。
アルケブス銃を持った敵船員一人の頭に見事に命中し、倒れていく。それで引き金を引いてしまったのか、銃声が轟いた。隣にいた船員に当たったようで、そこでも血飛沫が舞う。
「うひゃー!」
反撃を警戒してすぐにマストの裏に隠れたステラたちの周囲で、弾丸がはじける音がした。ここから射たことに気付いて、撃ち返してきたようだった。だがこれで使い切らせたはず。
「ドミンゴさん、援護お願い!」
ステラはロープを掴むと、敵船とは反対側の索具を伝って下りていく。適当な長さになると、船の外に向かって大きく蹴り出しつつ、ロープを振り子のようにして大きく揺らした。
「ふおおおおお!」
反動で戻りながら、敵船へと向かってステラが宙を飛ぶ。狙いは、敵甲板長。