デブ活と 行方
「かーたん、トイレに行ってけっこう経ったよね?」
「あぁ…、さすがにまだ帰ってきてないのは遅すぎる気が…」
母さんがこの場を離れてから、5分…、下手したら10分は経つかもしれない。なのにまだ帰ってきてない。さすがにそれはおかしい…。
まるで、トイレに行ってないんじゃないか…、そう勘繰りたくなるほどに…。
トイレに行ってない…?
「ねぇ、とーたん…」
「な、なんだ?」
「もしかしてかーたん、トイレに行ってないんじゃ…」
「トイレに…、!!!」
俺の言葉で父さんが何か気づいたみたいだ。父さんの顔が戸惑いの色から驚いた顔…、そして苦悩に満ちた顔へと段々と変化していく。
もしかしたら、父さんの方は母さんの行き先が分かったのかもしれない。
一体、母さんはどこに…
俺が母さんの行き先を考えてると、苦い顔した父さんから声が聞こえてきた。
「母さん…、どっちに歩いて行った?」
どっちって…
「!!!」
俺は父さんの言葉で思い出した。
母さんがトイレの方になんて向かったんじゃなく、たしか台所の方に…
「台所…」
「たぶんな…」
俺と父さんは見つめ合ってた。ただこの時、父さんだけじゃなく、たぶん俺も悲しい顔をしていたんだと思う。
俺と父さんは、二人で台所へと向かう。
「「!!!」」
そして、見つけてしまった。悲しいモンスターを…。
バクッバクッバクッ
俺と父さんの目の前には、床に大量のお菓子を広げて、それを両手で無心に貪る母さんがいた。
お菓子禁止という縛りのせいで、きっと母さんの中の枷が外れてしまったのだろう。まだルールが制定されてから、ほとんど時間は経ってないけど。
「「………」」
目の前の光景のせいで、俺と父さんからはまったく声が出てこない。
バクッバクッバクッ
ただそんな時でも、目の前のモンスターが餌を貪っている。
あぁ…、お菓子禁止というルールのせいで、母さんがこんなになってしまった。可哀想に…
可哀想か?ただ、欲に奔放なだけのような…
まぁ、いいや。とりあえずは誰かがこれを止めないといけない。そしてそれは、息子の役目じゃなく、きっと旦那の役目だろう。
「とーたん、頑張って♪」
「俺かっ!?」
「違うの…?」
「うぅ…」
父さんから、嘆く声が聞こえる。でもきっと、あなたの仕事だよ。
「父さんじゃなくて、可愛い息子が止めても良いと思うぞ。父さんは…」
そして父さんからふざけた言葉が返ってきた。でも俺の答えは決まっている。
「やだよ。」
なんでこんなモンスターの世話しないとイケないんだよ。絶対やだよ。疲れるし、しんどいし、言う事きかなさそうだし。
「俺だって嫌だよ。」
ただ、父さんからも拒否の言葉が出てきた。当たり前か。でも普通、それが旦那の役目だと思うんだけどなー。
はぁー…
「ならどうするの?」
俺の疑問に、父さんは顎に手を当てる。父さんは数回唸る。そして答えが返ってきた。
「ミーケちゃんにお願いするか?」
鬼かな?絶対、ミーケも嫌だよ。こんなのを相手するの。あと、父さんの中ではミーケって何なの?母さんのセイファーか何か?
それに…
「誰がミーケにお願いするの?」
「んっ。」
俺の言葉に、父さんがさも当たり前だろって感じで俺を指差してきた。
なんだこいつ。ふざけてる…、絶対ふざけてる。
「やだ。」
だから俺は端的に返した。
すると、父さんがニヤニヤとこっちを見てくる。
ん? なんだ?
「やっぱり、好きな女の子にそういうお願いは嫌かー。」
はぁっ!?
「ルートもそういう年かー。」
そして、ニマニマと言葉を続けてるくる。
なんだ、このおっさん。すっごい…、もうほんと、すんごい腹立つんだけど。そっちがそのつもりなら、俺だって考えがあるよ。
「僕リビングでゆっくりしてるから、後頑張ってね。」
見捨てるという手がね。
「へっ?」
「頑張ってね〜♪」
俺はそう言って、手を振った。
「マジ?」
父さんから、最後にそんな言葉が聞こえてきた。あとは頑張って♪
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