デブ活と 父さんの
「トイレ…」
そう言って母さんがトボトボと歩いていく。父さんとの交渉に失敗したのが、相当に堪えたみたいだ。まぁ、無理もない。普通なら…、というか、いつもなら絶対に母さんが勝っていた交渉だろうから…。
そう思うと、父さんの選択が気になってくる。
「ねぇ、とーたん…」
「なんだ?」
父さんの力ない返事が飛んでくる。やっぱり、父さんとしても尾が引く決断だったみたいだ。でも、だからこそ気になる。
「なんで、お小遣いの方選ばなかったの?」
俺は落ち込む父さんに、ストレートに聞いた。
俺の質問を聞いた父さんは、両手を合わせるようにして口元を隠す。どういう意味があるんだろうか。
変なポーズをとった父さんから、手のせいで少し篭もったような音で、返事が聞こえてきた。
「そんなの…、母さんにキレイでいてほしいからだよ。」
そう言いながら、父さんの頬がちょっとずつ赤くなっていく。
ほぉ〜〜〜〜〜〜〜ん、ほ〜〜〜〜〜〜〜ん
なんだか、自然と表情がニマニマしてしまう…。
あっ、そうなんだ〜。へ〜〜〜、へ〜〜〜〜〜。
俺の表情が気に触ったのか、父がちょっと嫌そうな顔になった。
「も、文句あるのか?」
けっこう、動揺してるみたいだ。そんな嫌そうな顔されても困るよ〜。気持ち隠せてないよ…、気持ちがっ!
「ふ〜〜〜〜ん」
段々と語尾に向かって声が高くなってしまった。いやぁ、言葉に気持ちが乗っちゃったよ。
「っ!」
俺の反応を見て、父さんの眉間によりしわが寄った。
そんなに照れくさかったのか〜。
「へ〜〜〜〜〜〜〜」
親のイチャイチャって見るに絶えないけど、こういうのはいいよね。好物だわ〜。
父さんは唇を噛んで、こっちを忌々しそうに見てくる。よっぽど、照れくさいみたいだ。
「母さんのこと、そんなに好きなんだね。」
だから、ド直球で聞いてしまったよ。俺はなんて悪いやつなんだ。
「〜〜〜〜〜〜〜!!!」
父さんから変な音が漏れる。
さっきまでしていた口元を両手で隠すのをまた父さんがした。たださっきまでは、口元を隠すだけだったのに、今度は顔全体をなるべく広く隠そうとしている。
恥ずかしくて視界を塞ぎたいのか、頬が赤くなっているのを隠したいのかはわからないけど。ただどっちにしても、頬が赤いのは見え見えだ。
「お熱いね〜。」
ダメだとわかっているのに、自然と口から言葉が漏れてしまう。いやー、反省しないといけないな〜。
キッ
そんな音が出てきそうなほどに、父さんが睨んでくる。でも、まったく怖くない。強がりってのが、スケスケ過ぎる。
そして、それが分かってるから、どうしても顔のニマニマが熔けない。ダメだと分かってるのに…。あ〜、自分の自己制御能力の低さが憎い。
「なぁルート…」
そんな俺に父さんが話しかけてくる。
「なーに?」
「母さんには黙っててくれないか?」
ふーん。
「なにをー?僕、わかーんない。」
俺は心のうちを正直に伝えた。
こんな楽しいことを黙っとく? そんなの無理に決まってるよ。
「………」
俺の返しに、父さんは下唇を軽く噛んだ。
というか…
「なんで、そんなに隠したいの? 母さんが知れば、喜ぶと思うよ?」
ガチで。母さん、絶対大喜びだと思う。父さんの記憶がまた飛ぶと思うけど。一晩どころか、数日くらい…。なんでかは、僕、知らないけどね。ほんとに。
俺の言葉に、少し引いた頬の赤みがまた強くなっていく。相当、恥ずかしいと思ってることを言うみたいだ。
父さんが戸惑いながら、口を開く。
「カッコ悪いだろ…。」
は〜〜〜〜〜〜〜ん。恋してるね〜〜〜〜。
これは弟か妹も近いかな。どうしたらできるかとか僕知らないけどね。
でもさ…
「言えば、かーたんお菓子止めると思うよ?」
ピクッ
父さんの肩が動く。
「それに…、ナイトデートとか…」
ピクピクッ
次は両肩が…。
分かりやすくていいね。次、止め…、かな。
「艶やかなかーたん…」
「俺言うわ。」
父さんからすごく素早く言葉が飛んできた。ほんと早かった。
はい、いっちょ上がり〜!!!
こうして父さんは母さんに気持ちを伝えるようだ。
「あれ? そういえば、かーたんは…?」
「!!!」




