翌朝と 早朝
ぶるっ
そんな感覚と一緒に目が開く。目を開いたら、目の前は真っ暗だった。
なんでこんな時間に起きたんだろう。
俺がそう思ったその瞬間、もう一度やつが来た。
ぶるっ
なるほど、トイレか。トイレか~。あ〜めんどくさい。トイレか〜…。
俺は心の中で、何度もトイレを連呼する。それくらい行くのがめんどくさかった。
でも…
ぶるるっ
すぐに来てしまった。限界が…。
はぁ、諦めるか。
俺はそう決めた。
もちろん、諦めたのはトイレを我慢することだよ。人としての尊厳は捨てたくないしね。漏らしたら皆から何言われるか分かんないし。
こうして俺は布団を出て、トイレへと向かう。
自宅のトイレは一階だけだ。だから俺は階段を下りて一階へと下りていく。階段を降りると、すぐにそこにあるリビング…、そしてそこにやつがいた。
「か~、うまい。」
そんな声をあげながら、グラス片手に一人で飲んでいた。
そう、父さんだ。
別にいつもの光景…、なんだけど、今日はその絵にすごくむかついた。
お前、昨日の朝方に言った”頑張る”って何だったんだよ。一日くらい頑張れよ。クソがっ。
はぁー。
「何してるの?」
俺は心のイライラを混ぜながら、父さんへそう口にした。
「へ~。お酒飲んでるよ~ん。」
そして父さんからの返答がこれだった。すんごく酔ってる。ほんとすんごく。
「下戸野郎が…。」
なんか自然とそんな言葉が出てきた。
おかしい。俺はもっとお上品な言葉を使うのに。きっと、目の前にいるやつにそれだけ腹が立つからだな。お上品な俺がこんな言葉使うってしまうくらいなんだから。うん、全部父さんが悪い。
俺が心の中でそう解釈したところで、父さんから声が聞こえてきた。
「ル~ト君ひど~い。」
間延びした、そんな声が…。
ほんと、なんだよこいつ。昨日のかっこいい父さんはどこ行ったんだよ。まじ、返してくれよ。俺の父さんを。
「とーたん昨日…、頑張るとか言ってなかった?」
俺は詰めいるようにそう口にした。
だけど…
「言ったよ~ん。」
返ってきたのは間抜けな言葉だった。
なんだろう、毎回すごく癪に障る。
ふ~、我慢だ。我慢…。
「頑張らないの?」
「頑張るよ~ん…」
俺の言葉に父さんがそう返してきた。
「なr…」
なら頑張りなよ。俺がそう言おうとした時、父さんが残りの言葉を続けてきた。
こんな言葉を…。
「明日からね~。」
「はぁ!?」
明日から!?ふざけんざよ。それ、結局頑張らないやつが言う上等文句じゃん。こいつ…、口だけで絶対やる気ないだろ。返せよ。俺の純情を。
「ルート君こわ~い。」
ちっ
「これだからニートは。」
「そんなこと、言ってはいけましぇ~ん。」
カチ
体内でそんな音が聞こえた気がした。
「それにしてもとーたん…、すごく楽しそうだね?」
「楽しよ~。」
俺の言葉に父さんがそう返してくる。ただ、俺の表情を見てからなぜかさらに言葉を続けてきた。
「ね~ルート君、なんでそんな笑顔なの?パパ、すごく怖いんだけど…?」
父さんの言葉は、言葉の節々ではまだ少し言葉に間延びがある。でも、なぜか戸惑いの色も見え始めていた。
「そー?僕いつも笑顔で可愛くない?」
「う、うん。かわいいよ。だからそのキュ~トな笑顔、ちょっと止めてくれないかな?パパ、ちょっと怖いんだけど…。」
「やめてほしい?」
「う、うん…。」
俺の言葉に父さんがそう返してきた。
だから俺は…
最後のチャンスをあげた。
「とーたん、いつから頑張るの?」
そして、俺のそんな問に対して父さんは…
「明日から…。」
こう答えた。
ははは。
俺は机へと向かう。
「ルート君?」
何も返さない俺に父さんが気まずそうに俺の名を呼んだ。
もう、何を言っても関係ないけどね。
俺は父さんの言葉を無視して、机の上にあった酒瓶を手で握った。
「ねぇ、ルート君…、何しようとしてるの?」
俺の行動を不思議に思った父さんがそう尋ねてきた。
俺は正直に答える。
「トイレだけど?」
元々、この時間に起きてる理由がそれだしね。
「なんで、トイレ行くのに酒瓶握ってるの?」
父さんが尋ねてきた。
「うん?」
「うん?、じゃなくて…」
「なんでだと思う?」
「なんでって…。まさか…」
父さんの表情が、一気に戸惑いの色が強くなった。何をするか、気づいたみたいだ。
俺は父さんへと、ニコッとした笑顔を向けた。
「たぶん、そのまさかだよ。」
「ははは、冗談だよな?」
「うん?」
「なぁ?」
「冗談だと思う?」
「俺が悪かったからさ…、だから…」
さっきから父さんの顔に、戸惑いの汗がこびりついている。でもね、もう決めたんだ。やるって…。
「大丈夫だよ。僕…、気にしてないから。」
「なっ、なら…」
「じゃー、トイレに行ってくるね。」
「お酒…」
トイレへと向かっていると、父さんからそんな呟きが聞こえてきた。小さいながらも、その声は耳に残った。
でも俺には、そんな声は聞こえなかったんだ。
ガタっ
「おりぇのおじゃけぇぇぇぇ!!」
トイレの外から、父さんのそんな叫び声が聞こえてきた。
はー、たくさん出たよ。
やっぱり…




