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異世界マイフレンド  作者: ゆう
メインストーリー
92/190

翌朝と ニートの父と

 俺は横たわっている死体を指でツンツンと突く。ほんとに死んでいるかの確認だ。そして、俺が何度突いても、動くことはなかった。


 「死んじゃった…。」


 俺は悲しさが大きすぎて、つぶやいてしまった。


 動いている父をもう見ることはできないのか。あぁ、なんでこんなことに…。


 「勝手に殺すなっ!」


 俺が悲壮感に囚われていると、さっきまでビクともしてなかった亡骸が急に動き出した。


 「生きてた…?」


 「当り前だろ。」


 目の前から声が聞こえてくる。あぁ、これは幻覚か、いやそれか幽霊なのかもしれない。父への気持ちが強すぎて、こんな妄想をしてしまうくらいには心にキテしまってるらしい。


 「あぁ、死んでしまった人が蘇るはずないのに、こんな妄想を見てしまうだなんて。とーたん、どうか安らかに…」


 俺は辛い気持ちを抑えて、天へと祈りを捧げる。


 「ちょっと、ルート君!?君何してるの?」


 父らしきものが、俺の目前に膝で立っている。まだ成仏できてないんだね。ごめんね、もっと心込めるから。


 「来世ではどうかとーたんが、逆ニートになれますように…。」


 俺は心の底から祈る。


 「ねぇルート君、何っ!?逆ニートって…。」


 「神様、どうかお願いします…。」


 「もしかしてこれ、ほんとに聞こえてないの?ねぇ、俺ほんとに死んじゃったのっ!?」


 目の前の像からそんな声が聞こえてくる。


 はぁー、うるさいな。


 「何?ニートのパパ。今僕が、とーたんが今すぐにでも逆ニートのパパになれるように神様にお祈りしてるんだから、邪魔しないでよ!」


 「待って、そんなニート、ニート言わないで!」


 はぁー、しょうがないなー。可哀相だから、俺は祈りを止めた。でも、やめたら、一生このままニートのままなんじゃ…。まっ、いっか。

 

 「で、なんでとーたんはニートになったの?」


 「ぐさっ」


 父がそんな効果音を口にする。


 「とーたん、もうそのくだりはいいよ。」


 「へっ、そう?」


 父が傷ついた演技を止めて、あっけらかんとした表情に戻った。でも、この表情でいられるってことは、あんまり傷ついてないってことだよね。それもそれなんだけど。


 「ん。で、なんでニートに戻ったの?」


 「ニートはやめてほしいなー。」


 父が悲しい願望を願ってきた。よかった。少なくとも嫌ではあるみたいだ。


 「で、どうして?」


 俺がそう聞くと、父は顎に手を当てて考えだした。そして、すっきりとしてないような表情で、ゆっくりと口を開く。


 「それがどうしてかわからないんだよなぁ。」


 わからない、らしい。


 「どうしてか見当もつかないの?」


 「つかないなぁ。」


 「そうなんだ…。」


 雇い主である、スーベルさんもちょっと頭おかしいけど、何もないのに首にするまでの変人ではないと思うんだよなぁ。たぶん。ほんと、たぶん。ただ、父も馬鹿だから、なんか色々やらかしてそうな気がするんだよな。


 だから俺は思いつくことを片っ端から言うことにした。

 

 「物壊したりとかは?」


 俺がそう聞くと、父は短いあごひげをさすりながら、少し記憶の探索に集中する。そして記憶の探索が終わったみたいで、俺へと視線を戻す。

 

 「してないぞ。」


 してないのか…

 

 「お金関係で失敗とかは?」


 「してないかな。」


 これも違うか…、父は料理とかは担当してないみたいだったし。他にありえそうなのは、お客さん関係だろうけど、心当たりがないのならこれも違うよなー。まっ、聞くだけは聞いてみるか。


 「お客さんと揉めたりとかは?でも、さすがにこれも違う…」


 「それなら何回かあったな。」


 父が何でもないかのように平然と言い放った。


 あるのかよ。絶対これじゃん。しかも、何回かって…。


 「た、例えば…?」


 「そうだなー…、こっちが聞いてもうんともすんとも言わない客に、水をガンとおいたりして、後で苦情がきたり…」


 お、おう。

 

 「なんか小さい声でめそめそ小言ってくる客に一言言い返したのもあったかな。」


 まー、腹は立ちそうだけど。


 「あと…」


 まだあるのか…


 「急にキレだしたおばはんに水ぶっかけたことが数回あったかな。」


 ………。


 「でも、そんな首になるほどのことじゃないだろ?」


 こいつ、あほなのか?最後のは首になってもおかしくないだろ。よく人に水ぶっかけて問題ないとか言えたよな。あほなのか。ほんとあほなのか?


 しかも二週間くらいでどんだけ揉めてんだよ。普通そんなに揉めねぇよ。あと、積み重ねだよ。そんだけやってたらスーベルさんだって嫌になるよ。いくらあの人も変人できちがいだろうと。


 はー、これ俺、どう返したらいいんだろ。このままこいつがニートなのも嫌だけど、わざわざ矯正するのもすごく嫌なんだけど。あと、子供の方が矯正させるのって何。あー、もういいや、めんどくさい。


 「そうだねー。」


 知るか。


 「そうだろ?」


 父が俺が同意したかのように感じたのか、すごく嬉しそう言ってくる。


 「スーベルさんってほんと変わってるよな。」


 ははは、あんたもな。


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