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異世界マイフレンド  作者: ゆう
メインストーリー
9/190

いつもの日常 昼前に

朝食の時間も終わりを告げる。もう皆働きだす時間で、いい大人は仕事に出ていってしまった。残ってるのは、昼の支度をするパパさんとママさん、そして暇を持て余してるミーケとうちの家族だけだ。


 うちの両親もいい大人なんだけどなぁ。息子の悲しい気持ちなんて知らずに、両親は朝ごはんに満足してかのんびりしてる。片方はぐったりか。


 「ねぇオヤル、お昼何かしら。」


 「俺はちょっとしっとりとしたものが食べたいな。でも肉とか魚でがっつりも良いな。」


 母さんの質問に、なんでかたらこのように腫れた唇の父が返す。二人は昼ごはんについて、話を広げていく。なんか気が早くない?楽しみなのわかるけど。


 そんな二人とは別に、俺とミーケの二人は今日は子供だけで遊ぶ雰囲気だ。


 「ルート、今日はトランプしよー。」


 今日のミーケはトランプの気分のようだ。そう、この世界はぼちぼちと前の世界と共通の娯楽がある。他にも普通にオセロなんかもあるし。


 「いいよ。この前みたいにはいかないからね。」


 「今日もミーケが勝つもんね。」


 こうやって二人でババ抜きを始めた。


 二人でババ抜きを始めて、結構な時間が立った。今は一勝一敗で、お昼の時間を考えると今やってるこれが最後。ミーケの残りの手札が三枚、俺の残り手札が二枚。そして今はミーケが俺のカードを引く番。


 ミーケが悩まずに数字が書かれた番号を引いていく。ババを持ってるのは、ミーケ、だから悩む必要がない。問題は次。


 「よし。次ルートが引く番よ。」


 ミーケの残りの手札が二枚、その内一枚がババ。ここで間違えたら、形勢はかなり不利になる。緊張感が襲ってくる。ドクンドクンと心臓の音が木霊する。よし。


 ミーケが持っている右のカードに手を近づける。ミーケの顔がニヤニヤし始める。ほう。次は左のカードに手を近づける。次は渋い顔になる。なるほど、ババは右か。


 「フー」


 俺は緊張した体を落ち着かせるために、一旦呼吸を吐く。手の震えを止めるために、心臓の音に体を慣れさせる。決意が固まるのを待つ。


 段々と音に慣れてきた。よし行くか。ミーケ、悪いな。俺はにやけてしまいそうになる顔を必死に抑える。


 俺は左のカードに標準を定める。だがミーケがさっきの反応とは打って変わって、ニヤニヤし始めた。


 「っ!?」


 訳がわからず、逆の右のカードに手を近づけると、渋い顔に。こいつ、さっきのはフェイクか。くそっ。ずる賢い手を。俺の困惑している表情を見て、彼女はニヤニヤしている。


 それならこっちだって徹底的にやってやる。まず俺は、右のカードに標準を定め、人差し指中指、と親指で実際にカードを掴む。ゆっくりと。カードを取るためではなく、その間の彼女の表情をずっと観察するために。次は左のカードに対して同様にする。


 左右両方ともで彼女はにやけ面だった。分からないし、それ以上に見つめ合いすぎてなんか気恥ずかしい。向こうも同じようだ。頬がちょっぴりと赤い。かわいい。違う違う。取り合えず落ち着け。


 フ―。確率は50:50なんだから覚悟を決めよう。よし、右だ。右を引く。俺の手が右に向かう。そしてカードを掴む。バクバクと心臓の音がはっきりと聞こえる。カードを握った手が目に見えるほどはっきりと震える。はー、緊張する。


 今回はカードを引く気というのが彼女にも伝わったらしい。カードを引いてる間、彼女の顔にも変化が起こる。ニヤニヤした表情から、顔が歪みだし、絶望という変化に。一瞬俺は勝ちを確信してしまうが、自分を落ち着かせる。


 演技の可能性がまだある。カードを見るまで、油断したらだめだ。自分を諌める。俺は緊張しながらカードを確認する。カードの種類は、よし。数字だ。


 「やったぁあああ。」


 「にゃぁああ゛ああ」


 俺の歓喜の声と彼女の悲鳴が食堂内に響き渡る。いやー嬉しい。未だに心臓がバクバク言ってる。彼女も相当悔しそうだ。


 「ミーケのざーこ♡」


 前回負けた時にかなりあおられたから、仕返しとばかりに彼女をあおる。ミーケは相当悔しいのだろう。頬が膨れてぷくーとしている。いちいちかわいいな、こいつ。やー気持ちいい。彼女の悔しそうな顔に満足してると、こっちを見ながら一瞬ニヤッとしてから、泣き出した。目を隠しながら声を出して泣く。他の人からは表情は見えないけど、俺からは彼女の口元が笑っているのが見えている。そして母さんの方へと向かう。


 「おばさん、ルートがいじめる。」


 母さんにミーケが助けを求める。せこっ。母さんがギロッという効果音が聞こえそうな目つきでこっちを睨んでくる。ブルブルブル。母さんの視線だけでなんでか体が震える。あれ、なんでだ?なんだか体がおかしい。


 「ルート、あれだけ女の子には優しくしなって言ったよなぁ!」


 母さん声、声が怖いんですけど。なんか色々と息子に向けるべきものじゃないんですけど。


 「かーたん、待って。勘違いだよっ!」


 俺はなんとか必死に弁明への道筋を考える。何か、何か。ミーケの方を確認すると、もう泣きまねせずにこっちを見て普通にニヤニヤしている。あいつめ。


 「何が、勘違いなの?」


 「だって、ミーケが。」


 そう言って泣いてない彼女を指さす。彼女はすぐに泣きまねを再開する。くそっ。ずるいぞ。


 「ミーケちゃんが何?」


 「いえ、何でも…。」


 そう言った瞬間頭に上から衝撃が襲ってきた。母さんのげんこつだ。


 「いったぁぁあああ。」


 あまりの痛さに自然と涙が出てくる。何でこんな目に。


 「次からはもっと優しくしなっ。」


 そういうと、母さんは去っていった。そして交代でミーケがやってくる。すでに泣きまねを止めている。止めるの早ーよ。


 「やーい、ルートのばぁか♡」


 めちゃくちゃいい笑顔であおってくる。くっそぉぉおおおお。あおってくる顔がかわいいのが余計に腹が立つ。そうこうして午前中が終わっていった。それは卑怯だって。




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