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異世界マイフレンド  作者: ゆう
メインストーリー
85/190

宴会と 心配ごと

 「そう言えばだっ…」


 ジルーのおっちゃんには、どうやらしたい話があるみたいだ。父とバーネのおっちゃんに向かって言葉を投げかける。


 「どうした?」「なんや?」


 二人もボルテージがなかなか高まっているのか、少し前のめりで聞き返す。

 

 「オヤル。今、仕事してるらしいなっ。」


 「マジかっ!?」


 ジルーのおっちゃんの言葉にバーネのおっちゃんがすごくびっくりしたかのような声を上げた。そんなに父が仕事しているという話が物珍しいみたいだ。


 「あぁ、この前お客さんから聞いたんだっ。」


 「へー、すごいじゃん。」


 「へへっ、まぁな。」


 二人の言葉に父は、はにかみながらそう言った。


 「今どんくらい続いてるんや?」


 「二週間くらいかな。」


 父は嬉しそうに答える。


 「「おお~~~」」


 なんでか二人が感嘆の声を上げた。


 待て待て。二週間で”おお~”って何?家の父親って、どういう立場なの。しかもその当の父親も二週間で喜んでるし。おかしくない?


 「すごいだろ?」


 父が誇らしげに続ける。すごいのか?なんか俺だけ感想違うんだけど、俺がおかしいのか?ねぇっ。


 「すごいなっ。今までどのくらいが最高なんだっ?」


 ジルーのおっちゃんから驚嘆の声まで出てくる。そうか、俺がおかしいみたいだ。


 「たしか…、二週間くらいのはず。」


 「じゃー、そろそろ最高記録なんだなっ!」


 「ほんまかっ、すげーじゃん。」


 なんかレベルが…、レベルがおかしい。これが俺の父親なのか。すごく恥ずかしんだけど。


 「でもさ…」


 バーネのおっちゃんが急に神妙な顔になりながら、言葉を紡ぐ。ちょっと言いにくいことを言うかの如く。


 「そろそろ首になるかもってこともあるよな?」


 「「確かに(なっ)!」」


 二人の納得で自分の意見に信憑性を感じたのか、バーネのおっちゃんが父の方を真剣に見つめて、口を開く。


 「最近、なんか変わったことあるか?仕事で…」


 「そんなこと、なぃ…」


 段々と父の言葉が小さくなっていく。まるで、なにか心当たりがあるみたいに。


 「あるんやなっ?」


 バーネのおっちゃんが、父の反応からしっかりと疑念を感じ取ったようだ。


 「ほんとかっ?」


 ジルーのおっちゃんがそれに驚きを表す。


 「あぁ…」


 父から小さな肯定の声が漏れ出した。


 「言うてみ?」「そうだ、そうだっ。」


 二人が促す。それもあったのだろう。父がゆっくりと口を開いていく。


 「なんかさ、最近、休みの日が増えてきた気がする。」


 「「あぁ~」」


 そう言えば、この前も休みだったね。

 

 「それに…、最初は一日っていうはずだった仕事なんだけど、最近は昼過ぎで帰らされるようになったんだよなぁ。」


 「「あぁ~。」」


 それも身に覚えがあるよ。冗談で、もう首かなとか思ってたけどほんとだったとは。なんかごめんよ。


 「それに最近スーベルさん…、雇い主が俺の方を何か言いたそうに見てくるんだよ。これって、もう…」


 「「………」」


 父が悲しそうなに俯いてしまい、二人も沈黙してしまった。


 なんかあっちのテーブル一気に暗くなったんだけど。せっかくの久しぶりの飲み会らしいのに。なんでそんな重い方に持っていくかなぁ。


 「まぁでも、まだ分かんねぇよ。」


 「そうだっ、そうだっ。」


 二人が励ます。


 「そうだよな…、そうだよなっ。」


 父もそのおかげか、ちょっと持ちなおしたみたいだ。


 「そういやぁさ…」


 バーネのおっちゃんが切り出す。新しく気になることが出てきたみたいだ。

 

 「今まで働いてたとこはなんで首になったんだ?なんかやらかしたりしねぇと、なかなか首になったりしないだろ?」


 確かに。


 「まぁ、な…」


 父が気まずそうに、肯定する。もしかして、こっちも心当たりがあるのか?


 「お前、何やらかしたんだ?」

 

 バーネのおっちゃんにもバレバレのようだ。吐かせるためにじっと父を見つめる。


 「えっと…」

 

 きっと話したくないのだろう。父は気まずそうに視線を外す。だけど…

 

 「この際だ、言っちまいな。」「そうだっ。」


 二人は逃がしてはくれないようだ。父も二人から逃げられないことを感じとれたのか、一度ため息をついてから二人へと言葉を向けた。


 「首を告げられる当日か前日に無断で欠勤した、かな…。」


 おいっ!絶対それだろ。相手も言いにくいだろうことを最後の最後で相手に踏ん切りつけさせてるじゃん。何してんの。


 「「お前…」」


 二人からはそうつぶやきながら、頭を抱えている。それを見て、父がハハハと困ったように笑っている。

 

 「何でや?」

 

 バーネのおっちゃんが父を少し責めるように尋ねる。父もそれにハハッっと苦笑を重ねてから、口を開く。


 「いや、自分でもなんでかその理由が分からんのよな。」


 「「はっ!?」」


 なんで?


 「いやなっ、なんでかその前日の夜と朝の記憶が全くないんよ。おかしいよなー。」


 父がとぼけたような素振りもなしに首をかしげている。なんかそれ、変な事件か何かに巻き込まれたりしてませんかねぇ。


 「「そうか…。」」

 

 二人もどう返せばいいか分からないからか、相槌を打った。


 そして二人が…


 「なぁ、ジルー。今週いっぱいオヤルが今の職場持つかで一杯どうだ?」

 

 「すると思うかっ?」


 「いや、すまねぇ。」


 虚無感を漂わせて、空しい会話を広げていた。


 

記憶の行方は近いうちに…

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