表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界マイフレンド  作者: ゆう
メインストーリー
80/190

お昼と サービスで

 カランコロ~ン


 ドアを開いて店内へ足を踏み入れると、ドアの装飾からそんな音が聞こえてくる。その音で既に店内にいた人の何人かはこっちを見てきた。でも知り合いではないことが分かると、すぐに違う方向へと向き直る。ただ、こっちを妙な視線で見つめたままの髭面もいた。


 そう、俺の父親だ。


 始めはこっちを驚いたような表情で見てきていたが、忌々しそうに、そして段々とめんどくさそうな表情へと変化していった。


 ごめんね、来ちゃった。でもね、自分だけ逃げるだなんて許さないんだからっ♪


 そんな父の視線はそのままに、俺と母さんは空いてる席に座った。少しすると、水を汲みに父がやってきた。そして…


 「なんでお前ら来たんだ?」


 そんな言葉が父から飛んできた。その言葉に母さんが歯向かう。違うか…、立場的に。


 「そんなのお昼食べるために決まってるじゃない。」


 「それはそうだが…。」


 父の声色から、”来んなよ、めんどくさせぇ”ってのがひしひしと伝わってきた。母さんもちゃんと気づいたみたいだ。


 「それとも何?私たちに来てほしくなかったの?」


 「いやぁ、そんなことは…」


 歯切れの悪い言葉を父が返す。お父様、分かりやすすぎますよ。


 「あとね、今の私たちは神様なのよ?もっと敬って応対しなさい。」


 「………」


 父は絶句した。すごく複雑な表情をしている。


 めっちゃ嫌な客だろうな。しかもこれ言ってきてるのが自分の妻という。なんとも言えない気分に違いない。たいへんだなー。


 「返事は?」

 

 「はぃ…。」

 

 「よろしい。」


 満足気な表情をしている母さんとは対照的に、父眉をしかめている。そんな父が口を開く。


 「ご注文は何に致しましょう。」


 お~。


 父から出てくるとは思えないすごく上品な言葉が出てきた。効果は絶大みたいだ。


 「そうねぇ、ルート決まった?」


 「まだ~。」


 母さんから聞かれるが、そんなすぐ決まんないよ。

 

 「そう、ならお任せでいいわ。」


 「「えっ!?」」


 まさかの?


 「あなたのおすすめでお願い。」

 

 「マジか…」


 父が呆気に取られている。


 「マジよ。おいしいものでお願いね。」


 しかも要求がかなり高いっていう。下手したら一番めんどくさいやつかもしれない。いや、下手しなくてもか。だって、好き嫌いも考えないといけないからなかなかにめんどい。


 「ご予算は…?」


 「上限なんてあるわけないじゃない。だって、あなたの給料から天引きで食べるんだから。」


 「はっ!?」


 わーお、えぐっ。しかも他人のご飯から天引きって…。これがよく聞くやりがい搾取か(違う)。なかなかにきつい。


 「分かった?」


 「いやっ、それは…」


 「分かった?」


 「はい…。」


 父が文句を言おうとするのを、母さんが黙らした。


 「では、少々お待ちください。」


 そう言って、父がとぼとぼと立ち去ろうとする。猫背で前傾姿勢になっているから、後ろから見たらすごく悲しそうなのが伝わってくる。まぁ、可哀相だよなぁと思っていたら、白い歯が光っているのが斜め後ろから見て取れた。


 ん?一瞬、笑ってたような…。

 

 「ねぇ、あなた…」


 母さんが父を呼び留めた。

 

 「変な小細工とかはしないでよね。そう、例えば安いの頼んだりとか、ね。」


 ピクッと父の体が跳ねた。どうやら図星だったみたいだ。顔は全く見えないけど、絶対今焦った顔っていうのがわかる。


 「そ、そんなことするわけないだろ。俺がそんなのすると思ってたのか~?」


 いつもと違うイントネーションで父から言葉が返ってくる。する気だったのか。いや、まぁ、いいんだけどね。父のおごりだし。


 「いや、なんとなくね、言っただけよ。」


 「そうか~。そんな驚かせること言うなんて、ルシアも人が悪いな~。」


 父が笑顔で返すけど、どこか無理したような笑顔だった。


 「ごめんなさいね。でも安心して、ちゃんと私あなたのこと信じてるから。」


 母さんの言葉を聞いて、変わらない笑顔のまま父は厨房へと帰っていった。


 可哀相に…


 こうして、父はいつも通り母さんの無茶に付き合わされるのであった。


 あっ、お父様、美味しいものでお願いします。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ