お昼と 休み
本日2話目
「は~、今日のご飯もおいしかったわ!」
母さんから感嘆の声が上がる。今は朝、いつものようにミーケ家の食堂でパパさんのご飯を食べている。いや、食べ終わったところだ。今日もいつものようにおいしかった。
「そうか、それはなにより。」
母さんの言葉にパパさんが返す。いつものように落ち着いているが、平常時より若干口角が上がっていて嬉しそうだ。丹精込めて作ったものをこんな嬉しそうに褒めてもらえたら、そりゃー嬉しいか。
母さんはおいしさの余韻で、少し惚けている。だから…
「あぁ、今日のお昼は何かしら♪」
こんな言葉が出てくる。いや、いつもなら普通のことなのだが、今日の曜日では異なる。だって…
「ルシア、今日の昼は休みなんだが…」
休みだから。パパさんが困ったように、母さんへと伝える。父も母さんを見て苦笑いしている。いや、もしかしたら、微笑ましく見ているのかもしれない。まぁ、それはどっちでもいい。今は。
「休み?何、それ…?」
母さんが訳が分からないみたいにつぶやく。それを見て、パパさんも苦笑いし始めた。
「あ、あれよね…」
母さんは顔に分かりやすい戸惑いを見せながら、言葉を続ける。
「冗談よね。きっと私を驚かせて楽しもうとしてるだけよね?」
未だに現実が受け止められないらしい。というか、毎週この曜日は休みなんだけどね。お母さまは未だに覚えられないらしい。
「カメラはどこかしら?見当たらないわねー。」
母さんが必死に現実から逃避している。頑張って、周囲を見回してカメラを探している。そんなものないのに…
「ルシア、違うぞ…。」
見ていられなかったのか、父が母さんへ現実を叩きつけた。可哀相でか、妻がこんなで恥ずかしかったのか、どっちかは分からないが。
「嫌っ!なんで、なんで…」
父の言葉を受け入れると、母さんは頭を両手で抱えて苦しそうに慟哭する。母さんの悲しそうな声だけが、今この場を支配している。
お昼ご飯ないだけなんだけど、なんでこんな悲愴感がすごいんだろ。まるでこの世の終わりみたいな感じなんだけど。
「なんか、すまん…。」
パパさんも気まずそうに謝った。家の母がごめんなさい。
「なんでっ!なんで休みなの。休みなんて必要ないじゃないっ!!!」
母さんの悲痛の叫びが響き渡る。母さんのは耐えられないらしい。でもそれ、一生休むなって言ってるくない?普通に鬼すぎると思うんだけど…。
「いやまぁ、たまには休みはくらいな…。」
パパさんが申し訳なさそうに謝る。なんかごめんなさい。家のクレーマーが…。
「ねぇ、やっぱり休むのなしにしない?」
「いや…」
パパさんが返答に困る。普通に休んでいいかね。それが当たり前だから。
「ねぇ、あなた…」
母さんが父へと猫なで声で呼びかける。だけど…
「あぁ、今日は良い天気だなぁ。」
父はすぐに顔を窓へと背けて、空を見始めた。きっと碌でもないお願いをされると、察知したのだろう。さすがだ。早い。
「ちっ!」
父の回避の速さに不満を感じたのだろう。母さんが舌打ちする。要求を呑んでもらえないことを、ちゃんと理解したのだろう。次はギュッとパパさんの方へと振り返った。
「ダッ…」
「今日はほんと良い天気だなぁ、オヤル。」
「だろっ!」
母さんの言葉が発せられるや否や、一目散にパパさんは父の横へと移動して、空を見上げた。
ハァ。
ビクッ。
二人の対応を見て、母さんが聞こえるように嫌みなため息を吐いた、大人二人がその声で体を小さく縦に揺れる。
「なんで、今日はこんな良い天気なんだろうな。なぁ、ダビー君。」
「なんでだろうな、オヤル君。」
二人のわざとらしい会話が聞こえてくる。あと、良い男の大人が二人、ガラスからの朝日を浴びてるのはなんでか絵面が汚い。髭面のおっさんとガタイの良いおっさん。うん、きつい。
「あーあ…」
そんな汚い二人とは別に、母さんが不満を示す声を漏らす。あぁ、今日はほんとに良い天気だ。
「男どもはちゃんと働けよなっ!」
そんな言葉が家事をほとんどしない専業主婦から聞こえてきた。こうして、パパさんのお昼じゃないお昼の日が始まるのだった。
結局投稿するという…




