ジローラと コール
だら~
お昼を食べ終えた正午の時間帯、俺たち家族3人は自宅へ帰り、ソファでゆったりとしている。もちろんメンツは、俺と母さん、それにミーケだ。一人違うじゃないか?俺も昔はそう思っていたが、もう気にしてもしょうがないので俺も気にしないことにした。本来のもう一人の家族は、今はお仕事に行っている。
まっ、そんな感じで俺たちが堕落した時間を満喫していると、それを邪魔する音がテーブルの上から聞こえてきた。どんな音かというと…
ルルルルルルルルル
こんな音だ。まぁ、電話の呼び出し音だ。それが俺たちの幸せな時間の邪魔をしてくる。不快だ。俺は誰かが取るのをじっと見守る。
ルルルルルルルル
まだ鳴り響く。ただ、俺も母さんも電話モドキ…、音の発生源である”コールカード”に手を伸ばそうとしない。
こういうのは保護者が取るべきなんだけどなー。
そう思いながら俺は母さんをの方を見る。そしたら母さんは、うつぶせの状態で枕に顔をうずめ、耳をふさいでいる。
この女、全く取る気がない…。
あんた、家主代理だろ。家主がいないときはその責務を全うしろよな。まったく…。
俺はそう思いながら、不快な音を遮るために枕へと顔をうずめた。はぁ、枕って最高だよね。この、全部を受け止めてくれるような安心感、まるで俺を天国へと連れて行ってくれそうだ。電話?取るわけねぇだろ。
ルルルルルル
その間にも、不快な音は続く。
誰だよ、こんな時間に電話してくるなんて。非常識極まりないよ。今、昼だけど…。
そんあ悪態をついていた時、急に音が鳴りやんだ。俺は驚いて、そーと顔を上げた。だって、あの母さんが電話を取るとは思えないもん。
俺が顔を上げた先に見たものは、なんとも言いにくいものだった。
「はい、もしもし…」
そう言う、小さくて可愛らしい声が音を途切れさした張本人から聞こえてくる。
そう電話を取ったのはミーケだった。
お前が取るのかよっ! いやまぁ、電話を取らなかった俺たちがなんか思うのもあれだけど…。
俺がそんなことを思っていたら、電話の向こう側にいる相手からの声が聞こえてきた。
「オラだけど、オラっ!」
まだ、甲高い男の子の声だった。
詐欺かな? 昔流行ったオレオレ詐欺ってやつ。この世界にもあるんだなー。子供の声だった気がしたけど。子供も詐欺するのかー、怖い世界だなー。なんか知ってる声だったけど…。
そんなことを考えながらミーケの取る行動を見ていたら、ミーケがカードを眺めている。そして…
ブチっと電話を切った。
………
ま、まぁ、オレオレ詐欺だったら怖いからしょうがないよね。知ってる声だったけど。予防は大事。
ルルルルルル
そうこうしていると、またコールカードが鳴り出した。ミーケは嫌な顔をした後、もう一度電話を取る。
「はい…」
「オラだぞ、オラっ、ジローr…」
ブチっ
またミーケが電話を切った。しかも今度は途中で…
………
まぁ、最後まで言い終わる前に切ったから、誰がかけてきたとか分かんないよね。名前ほぼ全部言い終わってた気もするけど。いや、俺も気のせいかもしれない。もしかしたら、俺の空耳の可能性だってあるし。う、うん…。
ルルルルルル
またかかってきた。
俺はどうするのかミーケを見ていると、ミーケは座ったまま、髪の先端を触り出した。一向に音がしているものに視線を向けない。電話の音なんて聞こえてなくて、電話自体がなかった体で行くみたいだ。
ルルルルルル
その間にも電話の音が鳴り響く。
俺はミーケを確認するが、彼女は電話の方を一瞥もしない。もう、電話の相手が可哀相なので、俺が取ってあげることにした。
「はい、もしもし…」
「ひどいんだっ。まだ話してる途中だったのに…」
電話の相手はジローラだった。いやまぁ、さっきほとんど名乗ってはいたんだけどね。
「ごめんごめん。ジローr…」
ブチっ
俺が話している最中に何故か電話が切られた。カードの方へ視線を向けると、ミーケの手がカードへと伸びてきていた。
………
「ルート、電話なんてなかった。いい?」
彼女が冷めた目で冷徹にそんなことをつぶやいてきた。
俺は頷くしかなかった。
こうして、俺たち家族は静かな午後を過ごした、かもしれない。




