お買物と 感想
一着目。
「この服どう思う?」
そう言って、彼女がシンプルなシャツを見せてきた。
「かわいいと思うよ。」
「そっか、なるほど。」
彼女は顎に手を当て、頭を小刻みに上下させながらそう言った。何かを理解しているようだった。
少しあって、二着目。
「この服は?」
そう言って、さっき見せてきた服と同じような服を見せてくる。ただ、ちょっとだけさっきよりも裾がゆったりしていて、袖も長いように見える。まぁ…
「かわいいと思う。」
「なるほど。」
小さな声で彼女はつぶやいて、何かを深く思案しているように見えた。
ぼちぼちしてからの三着目。
「これは?」
さっきまでとは、毛色の違った服だった。前の二着がシンプルなシャツだったのに対して、今回のはちょっとフリフリしたようなものだった。でもこれもまぁ…
「かわいいと思う。」
「………、そっかー。」
ちょっと反応が悪い、というか、彼女から戸惑いが感じとれた。
しばらくしてからの四着目。
「ぅん。」
彼女が服を差し出してくる。ベージュ色の単色の服だった。次はこの服の評価を聞いてるんだろう。
「かわいいと思う。」
「………、ねぇ」
彼女がじっとこっちを見つめてくる。なんか、責められてる気がする。もしかして俺、なんかやったの?でもなんも悪いことしてないと思うんだけど…
「えっと、何?」
「さっきから服の感想、かわいいしか言ってないんだけど?」
「えっ、そうだった?」
そんなことないと思うんだけどなー。俺は自分でも表現力豊かな方だと思ってるし。
「そうだよ。」
「おかしいなー。自分ではすっごく色々言ってるつもりなんだけど…」
「いや、言ってないよ?」
「えっ、ほんと?」
俺が驚いていると、ミーケの顔がむーっとしかめっ面になっていく。そして、新しく別の服を持ってきた、その辺にあったのを。
「これ、どう思う?」
その服は、袖は少し手のひらにかかるくらいの長さで、丈が今までと違って短い。着たら、ちょっとお腹が見え隠れしてしまいそうなものだった。今までとは、けっこう服の毛色が違う。でも、まぁ…
「かわいいと思う。」
「ほら?」
彼女が何かを諭すように、投げかけてくる。
「なにが?」
「ルートは今、服の感想なんて言った?」
「えっと確か…、袖がちょっと長くて手のひらに少しかかってしまいそうなのが子供っぽさを出してて可愛いのに、お腹を出すことでちょっとした大人っぽい雰囲気を醸し出しそうで、そのアンバランスさがおしゃれに見えそうかな?それに、実際にミーケが着てるの想像すると、淡白な上下の合わせにきれいな茶色色の髪が映えて、シンプルでかつおしゃれに見えると思うよ。」
ほらやっぱり感性豊かだよね。こんなに言ってるのに、なんでミーケは文句言ってくるんだろう?
「………」
俺の感想にミーケが全く反応を示してくれない。ひどいな。こんなに頑張って感想を絞り出してるのに。
「ほら。ちゃんと言ってたでしょ?」
「じゃぁ、これは?」
ミーケはそう言って、四着目のベージュの服をもう一度見せてくる。しょうがないなぁ…
「かわいいと思う。」
「なんて?」
「かわいいと思う。」
「ほら。かわいいだったじゃん。」
「えっ?そうだった? ちゃんとしかっりと感想言ってたと思うけど。」
「言ってないよっ!?ちゃんとかわいいだけだったもん!」
何言ってるんだろう、この子は。だって…
「人肌に近い色が醸し出す自然な雰囲気が、ミーケの優しい雰囲気と髪の色に相まって、すごくふんわりとした、柔らかい印象を見る人全員に与えてくると思う。だったよね?ちゃんと言ってるんだけどなー。」
「絶対そんなこと言ってない、言ってないもん…」
彼女がそんなことをつぶやく。可哀相に疲れてるのかな?
「大丈夫?疲れてるならもうそろそろ帰る?」
「それはルートがもおう帰りたいだけでしょ?」
ちっ。分かってたか。
「そ、ソンナコトナイノニナー。」
ちょっと棒読みみたいになってしまった気がするけど、気づかないだろう、と思っていたら、ミーケから攻め入る視線が向けられる。鋭い。
「最初からそんだけ言ってくれてたら、もっとスムーズに買い物できてたのに。」
ミーケが恨めしそうに言ってくる。
嘘つけ!その分、見る服と店が増えるだけだろ!!!どの口が言ってるんだよ、まったく…
こうして俺たちの心理戦が終結した。勝者?いるわけねぇだろ!




