暇 母さんと
暇だ。
俺はソファの上で寝転がりながら、そんなことを思っていた。お昼過ぎの時間帯、いつもならミーケと二人で遊ぶのだけど、今日はパパさんらのお手伝いで忙しいらしい。
ミーケが忙しいって昼食の時に聞いたときは、一人で外にでもと考えていたのだけど、理由も告げられないまま、母さんに却下されてしまった。
だから今俺は、目線の先にある天井のシミを数えている。大きさ、形がばらばらのものが多く、よく見ればシミ同士が微妙にくっついているものもある。これ1個でカウントしていいのかなー、それとも2個でカウントするべきなのか。うーん、難しい。
何してんだろ、俺…。
「ルート、暇なの?」
あんたのせいでな。
俺を暇にした元凶が話しかけてきた。母さんも母さんで、俺とは別のソファで寝転がって暇そうにしている。いや、これはいつもか。
「うん、暇。」
「そうよね…。」
「ねぇ、やっぱり遊びに行ったらダメ?」
「だーめ。」
俺が再度聞いたら、母さんは迷う素振りもなかった。むー、なんでなんだろう。
「理由もダメ?」
「内緒よ。」
むっ。
そう言われたら気になるけど、教えてくれないだろうな。でも気になる。
「ルート…」
「なーに?」
んっ。
母さんがそんな声を出してから、寝転がったままで、こっちに向いて両手を広げてきた。
「なーに?」
母さんが何をしたいのか分からなかったから、母さんに尋ねた。
「抱っこしてあげようかと思って…。」
急にどうした?いきなり…。
「なんで?」
「かわいい息子を抱っこしたくなるのに、理由なんてあると思う?」
嘘つけ。母さんが理由なしでするわけないじゃん。
「で、ほんとは?」
「ほ、ほんとよ。母さんのことが信じれないの?」
「うんっ!」
だって、母さん今も戸惑ってるし。
「っ!? いいからっ!」
驚いた様子を見せた後、母さんが”バッ”と手を開いて催促してくる。でも…。
「どうしたの?」
俺がなかなか来ないことが気になったみたいで、母さんが聞いてきた。
「えっと…。」
歯切れの悪い俺を母さんがジッと見つめてくる。そして…
「もしかして、恥ずかしいの?」
ビクッ…。
急にほっぺが熱くなっていく。
「あらあら…。」
母さんはそう口にして、片手で口元を隠しながら、こっちを笑ってくる。しょうがないじゃん。だって、恥ずかしんだから。いい年して、母親に抱き着きのはきついよ、まだ子供だけど。
俺がなんて返そうか戸惑っていると、母さんが口元を隠していた手を外して、俺へと楽しそうに言葉を放った。
「ルートちゃんはかわいいでちゅね~」
イラっ。
なにこの人、めっちゃ腹立つんだけど。日中寝てばっかのデブ活女のくせに。
フン。
俺は明後日の方向へと顔を背ける。
「も~、そんな怒らないのっ。」
どの口が言ってんだ、どの口がっ!こうなったら…。
「かーたん、やっぱ抱っこしてほしー。」
「もー、可愛いわねぇ。」
母さんは優しく微笑んでから、さっきのように両手を広げる。
俺はソファに横になっている母さんへと、正面になるように抱き着く。抱き着いた俺を母さんは、両手を俺の後ろへと回して俺が落ちないように支える。
「最初から素直にこうしてればいいのよ。」
母さんがそんなことを俺の耳元で言ってるのが聞こえた。そして…
お腹もみもみ。
「る、ルート何してるの?」
「ん-、かーたんのお腹触ってる。」
「それはわかるんだけど…」
「かーたんのお腹前より柔らかいね♪」
「えっ!?」
母さんが驚愕したような表情をしている。いい表情するね。
「やわらかーい。」
「じょ、冗談よね?」
「何がーっ?」
「お腹のや、柔らかさよ…。」
動揺してるねー。むふふふふ。
「ん? 前よりも、すっごく柔らかいよ。」
かわいい息子で遊んだ罪だよ、母さん。
「そ、そうなのね…。」
「うんっ!」
母さんは少しの間すごく落ち込んでいた。実際は少しだけだったんだけどね。少しだけ。




