早朝 眠気が
「………」
瞼がなんだか重い。さっきから定期的に視界が真っ暗になる。意識がぼーっとして、今にも手放してしまいそうだ。でも、なんとかつなぎとめている。今の状態を端的に表すならそう、眠いってことになる。
俺は今、いつものようにミーケ家の食堂で朝ごはんを食べ終え、片手で頬杖をついてウトウトしている。ご飯の後のこの時間はやっぱりきつい。そして目の前にも同じような状態の人がいる。
「とーたん、眠いね。」
「そうだな…。」
俺と父はゆったりした速さで言葉を交換し合う。気だるげの方があってるかもしれない。
「今日って、仕事?」
「あぁ…。」
「大変だね…。」
「ほんとに…。」
「そんなに眠そうなのに…。」
「ほんとになっ。誰のせいだよ、誰のっ。」
父が口調を強めてきた。こんな朝早くから、ピリピリしなくてもいいのにな。
「”風”君かな。」
「もう風君のことはいいって。」
冷たい。さすがに父も飽きちゃったかな。
「僕の親友だったのに…。」
「過去形っ!?」
「だって、僕を置いて、どこかに行っちゃたんだもん。」
俺がそう言い終えると、父がなんだかこっちを心配そうに見てくる。いや、眠そうにかもしれない。
「最近、なんだか息子が心配だよ。」
「大丈夫だよ、こんなに愛くるしんだから。」
「自分で言うな、自分でっ。」
朝から父の反応がすごくいい。話してて楽しいけど…
「そろそろ家出る時間じゃない?」
「あっ、ほんとだな。じゃぁ、行ってくるかっ。」
「気をつけてねー。」
俺は頬杖をついてない方の手を、机に肘をつけたまま手を振った。
「せめて、外まで見送ってくれたって…。」
はーっ!?そんなの…
「だるい。やだ。」
「だるい…。あぁ、そうかよ、じゃぁ、行ってくるよっ!」
父が辛そうに仕事に向かった。そんなに仕事に行きたくなかったのか。大人はつらいね。
さて、静かになったことだし、お昼までひと眠りするか。俺は頑張って開いてた瞼を閉じて、意識を手放す。いい感じで意識が落ちていく。
「ルート、ねぇ。」
来てしまった。悪魔が…。
「なーに?ミーケ。」
「暇だから、遊ぼ。」
魔王なのかもしれない、俺の安眠を妨害する。なんで寝たふりをしなかったんだ、俺は。
「眠いからやだ。」
「暇だからやだ。」
暇だからって…。なんてひどい奴なんだ。
「理由がひどいっ。」
「ルートも大概だよ。」
はーっ?こっちは睡眠という至高な理由なのに。三大欲求という言葉を知らないのか。これだからガキは…。
「ねぇルート、なんか失礼なこと思ってない?」
「お、思ってないけど…。」
なんでそんな鋭いの…。
「ふーん。」
ミーケが俺を疑わしげに見つめてくる。彼女の大きい瞳を細めて、こっちを見定めてくるようだ。
「うっ…。」
「………」
「………」
無言のまま俺とミーケの視線が交差する。俺の方が分が悪いせいか、すごく気まずい。嫌な汗が頬に流れる。なんでこんなことに…。
「まぁ、いいよっ。」
ミーケからそんな言葉が出てくる。どうやら、見逃してくれるようだ。
ふー。
緊張から放たれ、俺が一息ついていると、
「ねぇ、ルート…。」
「ん?」
「寝ててもいいよ。」
「ほんとっ!?優しいね。」
珍しく。
「でしょ?その代わり、暇な間ルートにイタズラするから。」
イタズラねー…
「いいよっ。」
だって、初心なミーケがそんな大したことできないでしょ。片頬を釣り上げて、ミーケがニヤっとしたけど、俺は気にも留めなかった。
俺はお許しの通り、眠るために瞼を閉じる。眠気が蓄積していたのか、すぐに意識が薄れていく。もう落ちそう、そんなとき…
つんつん。
「………。」
つんつん。
「………。」
つんつん、ぐりぐり。
「………。」
寝れない…。
ほっぺたの微妙な刺激が気になって眠れない。それに毎回、力加減と押し方変えるの止めてくれない?すごく気になるんだけど。あと、ぐりぐりは止めろ、ぐりぐりは。微妙にいてぇわ。
「ミーケ様…」
「何かね、ルート君。」
「ツンツンはなしにしませんか?」
「それは難しい話だね。」
どこがだよっ、どこがっ!
「それ以外は文句言いませんので。」
頼むから、寝かせてくれ。
彼女は少し考えるようなしぐさをして…
「しょうがないなー、言ったからね。」
彼女からの了承も得られたし、俺はまた寝る準備に入る。瞳を閉じて、意識を落としていく。だけど…
すりすり。
ビクッ。
俺はびっくりして、飛び起きた。唇に湿っていてざらざらしたもので擦られた感触があったからだ。俺は目を開き、隣にいるミーケの方へ振り向く。
「何したのっ!?」
「ん-?」
彼女が楽しそうな声とともに、俺をニコニコしながら見つめてくる。
「もしかして…」
したの?
俺は自分の唇に指で触れた。さっき触れられた場所がすごく気になる。もしかしてしちゃったのかな、ファースト…
「拭いただけだよ。」
「へ?」
「ルートの唇が汚れてたから、これで拭いただけだよ。」
そう言って、ミーケが手を少し上げて、持ってるものを見せてくる。その手にはおしぼりがあった。
あ~~~~~っ!なるほどーっ。てっきり…。
「なんだと思ったの?」
そう言った彼女の顔はすごくニヤニヤしている。
「べ、べつにーっ。」
「ふふっ。ルートってやっぱりかわいいねっ♪」
腹立つ。
「なんでもないっ。僕寝るからっ!」
俺はそう言って、うつぶせになったけど…
「今から寝ちゃうと、お昼起きれないよ?」
彼女にそう告げられた。
へ?
こうして俺はまた寝れなかった。最後の言葉、どこかで…。
明日は3本
10、12、18
なんでか、2話が3話に増えました




