友達と 帰り道に
二人ともつかれてしまったらしく、ジローラとケパは先に帰ってしまった。まぁ、二人とも相当辛そうだったからね、色々と。
「僕たちも帰ろっか。」
「そうだね。」
こうして俺たちは空地を出て、帰路に就く。時間が時間なので、もう夕日が出ている。夕日が帰り道を照らしていて、昼間とは違ったオレンジ色の景色が俺たち二人を囲う。もう何度もこの景色を見たせいか、凄く見慣れた景色だ。
「ねぇ、ルート…」
俺が景色に見惚れてたら、横で一緒に進んでいる女の子が話しかけてきた。
「ん、どうしたの?」
「昔、帰り道でした約束って覚えてる?」
彼女がそんなことを聞いてきた。でも全く記憶にない。
「えっ!?そんなのし…」
「なんかね、もし忘れたらルートがなんでもしてあげるって言ってたよ。」
は?マジ?全然記憶にないんだけど。そんなのしたっけ。しかも、忘れてたらなんでもしてあげる?その時の俺、気前良すぎだろ。もっと先のことちゃんと考えとけよ。えっ、どうすんのよ、これ。
「もしかして、忘れたの?」
ミーケが不安そうな、悲しそうな目をしながら聞いてくる。
やばい、やばい。忘れたのばれたら、結婚の約束とか絶対にさせられる。それはほんとにまずい。どうしたらいいんだ。考えろ。考えるんだ、俺。
「わ、忘れてるわけないよ。ちゃ、ちゃんと覚えてるから。」
「ほんとー。良かった。」
彼女はとりあえずは安心してくれたようだ。でも、今のままではまずい。なんとか思い出さないと。こうなったらミーケから少しでも情報を聞き出して、思い出していくしかない。
「約束したあの時って、どんくらいだったけ?」
「んーっとね、確か3歳か4歳の時だったはずだよ。」
広い。まだこっちで5年しか生きてないんだから、人生の40パーセントの中から探さないといけないじゃん。なんとかもう少し短くしないと…。
「たしか4歳の時だったような気が…」
「4歳だったかなぁ。言われてみればそんな気もするかも。」
よし。4歳だな。4歳かー、帰り道でのこれかって記憶全くないんだけど。えー、これほんとに約束してんのか?まじで思い出せないんだけど。くっ…
「あの時のミーケの服装ほんと可愛かったよね。あれ、なんて名前の服なの?」
「スカートのこと?」
「そーそー。」
「えっとね、サロペットだね。」
「サロペット?」
「オーバーオールのスカートのことだよ。」
「なるほど…。」
そんなのほとんどいつも着てんじゃん。全然ヒントになってないよ。はー、難し過ぎだろ。せめて、シャツの色の方が出てくれればまだ良かったのに。いや、今は悲観してる場合じゃない。情報だ、情報。もう少し何か…。
「あの日は大変だったよねー。」
俺がミーケへと尋ねる。
「あの日何かあったっけ?」
ダメか―。母さんたちならいつも通り何かしらで暴れてたと思ったのに。もしかして、日常的過ぎて記憶にも残ってない感じか。
「あったと思ってたけど、勘違いなのかも…」
「あーっ、もしかしてルート、忘れちゃったのーっ?」
大声を上げた後、彼女がじっと俺の目を疑いの目で見てくる。
くっ。これ以上、情報を集めるのは時間的に無理か。今集まっているのは4歳で、ミーケのスカートの種類だけ…。これほとんどないのと一緒じゃない?全く記憶に引っかからないんだけど。
俺が考えてる間にも、ミーケが俺の瞳を覗いてきている。スーと背中に嫌な汗が通る。これはもう…。
「それにしても夕日がきれいだね。」
ごまかすしかない。
「そんなの言ってもごまか…」
ちっ。
「夕日の光が反射して、ミーケ、いつもに増してすごくきれいだよ。」
「えっ!?ほんとーっ?」
「ほんとだよ。」
忘れろ。忘れろ。忘れろ。忘れろ。忘れろ。忘れろーーーーー。
「えっ?すごくうれしい。」
ミーケの顔が段々と赤くなっていく。
イケる。イケるぞーーーーー。
「あっ!?そう言えば、やく…」
「手握ってもいい?いや、握るね。今日はすごく握りたいんだ。」
「えっ?うん…」
あぶねーーーっ。
「でね、やく…」
「っ!、ミーケ、つなぎ方変えるね。」
俺はそう言って、ミーケの指と指の間に俺の指を交互に入れていく。
「!?」
ミーケは顔を下に向けてしまった。彼女の顔をそっと横から覗き見ると、顔が真っ赤になってしまっている。
あー、はっず。すれ違う人からは、すごく微笑ましい目つきで見られる。でも、しょうがない。約束のこと追求されたら、何要求されるかわかったもんじゃないんだから。耐えろ、耐えるんだ。今耐えれば、きっと明日にはミーケも約束のことなんか忘れるんだから。
俺たちは手を繋いだまま家の外まで何事もなく、たどり着いた。
はー、疲れた。
「じゃー、また後でね。」
俺がそう言って、自宅へと向かおうとした時、
「ねぇ、ルート…」
「なに?」
「約束のことだけど…」
ドキッ。
「嘘だから。」
「はっ?」
「じゃーまた後でねっ。」
「はぁーーーーーーーーーっ!?」
そりゃー、覚えてねぇよ。してねぇんだもん。




