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異世界マイフレンド  作者: ゆう
メインストーリー
44/190

母さんのお腹と 父が

 「………」


 「じ、じゃぁ、そろそろ仕事いってくるな…。」


 「ねぇ…」


 白い良いYシャツに黒いパンツを纏っている、父が出勤のためにリビングから玄関へと向かおうとするも、母さんが父を引き留めた。


 「な、なんだ?」


 父が振り向いて聞き返す。


 「………」


 ただ母さんの反応は悪い。それはなぜかって?それは昨日のケーキの件を未だに母さんが根に持ってるからだ。くだらないと思うだろう?俺もそう思う。ても本人からしたら、相当許せないことらしい。昨日から父の言葉にうんとかすんとしか言ってない。つまりちょっとは返している。返すだけ、可愛げがある気もする。


 ただ、父からしたらはこの間が相当耐え難いらしい。


 「なぁ、そろそろ許してくれよっ。なんでもするからさ。」


 「なんでも…」


 「えっ!?あ、あぁ。」


 ただの常套句として父は使ったつもりみたいだったけど、母さんがそこだけを復唱したことに父がうろたえてる。


 「そういえば、スーベルさんのとこからのお給料、まだもらってない気がするんだけど?」


 さっきまで顔も合わそうとしてなかったのが嘘のように父と平然と面と向かっている。

 

 「あぁ、そうだったなぁ。」


 そう言って、父が母さんにお給料を献上する。渡すとか任せるじゃなくて、本当に献上しているように感じるのは俺だけだろうか?いや…。


 母さんがお札を数え終えてから、口を開く。

 

 「ねぇ…」


 「な、なんだ?」


 「なんだか、中身少なくない?」


 おっと~~!?

 

 「っ!?そんなはずはっ。だって今回は何にも…。」


 「今回はーーっ!?」


 「あっ!?」

 

 あーあ。自分で言っちゃったよ。今回は、ねぇ。別の時には中身抜いたのか。これはこれは。父が驚いた声を上げた後、段々とおでこが光で反射し始める。罪の意識はあったらしい。それならしなかったらいいのに…。


 「ふーん…。」


 「いや、あのなぁ、悪いとは思っていたんだ。でもな…」


 「でもな?」


 「えーっと…」


 「………」


 母さんは答えが返ってくるまで黙って待ち続けるようだ。ゆっくりと沈黙した時間が続く。この間も母さんの瞳が父をずーっと捕えている。


 「許してくれたりしない?」

 

 この沈黙に耐え切れなかったのはやっぱり父だ。頑張って作った笑顔で母さんに尋ねる。どう見ても無理やりな笑顔だけど。


 「ぁははははは。」「はははは。」


 母さんが笑い出して、父も一緒に笑う。両親が面と向かって笑い合っている。なのに二人の間でものすごい緊張感が走っている気がする。


 「あなたっ。」


 ひとしきり笑いあったら、母さんが父を呼んだ。


 「はいっ。」


 「財布出してっ。」

 

 「はっ!?、なんで?」


 父はまだ理由が分かってないみたいだけど、今の状態でそれを言う理由なんて一つしかない。

 

 「さっきなんでもするって言ったわよね?」


 言ったねぇ。

 

 「そんなの冗談に…」


 「なんでもするのよね?」


 「はい…。」

 

 そんなんで母さんが折れるわけ。

 

 父が悲しそうにポッケに入ってた財布を母さんに渡した。渡されるや否や、母さんは中身を確認する。


 「中身ほとんど入ってないんだけど、これでほんとに手持ち全部?」


 「そ、そうだけどっ。」


 父がそう答える。ただ、視線が二点、三点としていた気がする。いや、わかりやすすぎでしょっ。ほんと嘘つけないなぁ。


 「へぇ、そうなんだぁ。」


 「あぁ、そうなんだっ。信じてくれるか?」


 「えぇ、もちろん…」


 何か勘違いしたのだろう、母さんのこの言葉で父が明るい表情になる。父の笑顔に母さんも笑顔で返す。いやぁ、表面的にはすごくいい絵面なんだけどなぁ。表面的には。


 「あなた…」


 「なんだ?」


 母さんへの警戒心は薄れたのだろう。父が平然と返す。

 

 「ジャンプ」


 「へっ?」


 「はいっ、ジャンプっ!」


 母さんに急かされて、慌てて父は飛び跳ねる。


 ジャラっ!


 父の体からそんな音が響く。けっこう重たい音がした。これはこれは…。


 「へぇ…」


 ねっとりとした目つきで母さんが父を見つめる。

 

 「………」


 父は何もしゃべらない、いや、何もしゃべれないのかもしれない。

 

 「ねぇあなた、ポケットに何入ってるの?」


 「!?」


 「入ってるもの全部出しなさい。」


 「はぃ…。」


 母さんの指示通り、ポケットの中に何も入っていないってことを証明するために、父はポケットの裏生地の布を引っ張り出す。確かに布自体が全部出ていたら中には何も入ってないことにはなる。ただ、父が引っ張り出した生地はたった数センチだった。


 「ほらなっ、何も入ってないだろ?」


 「「………」」


 母さんとそばで見ていた俺からは何にも言葉が出ない。

 

 「じ、じゃぁそろそろ…」


 仕事に行ってくるわ、とでも言おうとした父のポケットに母さんが手を突っ込んだ。


 「ほんとね、何も入ってないわ。」


 そう言いながら、母さんがポケットの中をじゃらじゃら言わせている。母さんの視線が父の目をゆっくりと捕らえる。


 「………」


 父は何も言わず、ただ母さんの瞳に捕まえらえている。口が半端に開いていて、口角が片方だけ釣りあがってしまっている。そのうち渇いた笑いも出てきそうだ。


 父が何にも言わなかったためか、母さんがポケットの中身を曝露するために、裏の生地をすべて引っ張り出した。それによって、ポケットから円形状のものが地面へと何枚も落ちていく。


 ジャラジャラララ


 そんな音が二人の周辺で鳴り響いた。母さんのにっこりとした笑顔が父へと向いている。


 「何これ?」


 「………」


 「さっきは他にはないとか言ってたわよね?何なのかしらね、このお金は?」


 「………」


 父は唖然としているのか、まったくしゃべらない。何言ってももうダメだからしゃべれないだけだろうけどね。

 

 「だんまりね、他にはもうないのね?」


 母さんがそう言うと、父は頭を何度も必死に縦に振る。


 「そう…、じゃぁジャンプっ。」


 「!?」


 「いいからジャンプしなさい!」


 母さんの圧に負けてまた何故か父がジャンプさせられる。ポケット以外に硬貨を隠せる場所なんてなくないか?ポケットもズボンの二つと胸ポケットしか見当たらないし。俺の疑問などつゆ知らず、父が未だにぴょーんとジャンプしている。


 「なんか変な音がするわね?」


 「!?」


 「そう、言い表すなら、薄い紙と布がすれる音なのかしら?」


 母さんにはそんな音が識別できたらしい。俺には父の「はっ、はっ」って言う息遣いしか聞こえて来なかったのに…。

 

 「!!!?、き、気のせいだろ?」


 「そう、じゃぁパンツ脱ぎなさい。」


 「はっ!?もう時間もないから、また今度でも…」


 「ダメ。」


 父は観念したのか、ズボンを脱いで母さんに渡す。父の目線がずっとズボンへと注がれている。ほんとに何かあるのか?


 母さんがズボンを物色している。最初は外を。ただ何もなかったのか、ズボンを裏返しにし始めた。父の方を見てみると、上の歯で下唇を噛んでいる。まるで下手な声を出さないように我慢しているように見える。そして何かを祈るように下の方で両手が握りあっている。


 母さんの探索も進む、裾から段々と腰の部分へと上がっていく。そして、ポケットのすぐ下に後付けしたようなポケットが見つかってしまった。


 そして中を物色していき、折りたたまれたお札が発掘される。


 「ふーん…」


 母さんが父へと視線をやる。


 「み、見逃してくれたりしない?」


 「すると思う?」


 ははははは、と父はそう笑うだけだった。まぁ母さんが許すわけないよね。


 「はい。」


 そう言って、母さんが落ちている500ウノ硬貨を父へと渡す。


 「こ、こんだけ?」


 父が辛そうな声で、母さんに聞く。ぱっと見、数千ウノあったのに500しか残らないのはつらいよねぇ、そりゃ…。


 「違うわよ…」


 違うらしい。


 「それ、帰りの私のケーキ代よっ。」


 あぁ、確かにケーキ代ぴったりだね。


 「は!?俺の飯代は?」


 父が必死な形相で聞き返す。確かに飯抜きはさすがにひどいね。


 「どうせ、まかないもらってるでしょ?」


 父がギックっとなる。あぁ、確かに俺がお手伝い行ってた時も、まかない貰ったわ。


 「せめて半分だけでも返してくれない?」


 父は母さんに必死に懇願する。


 「だめっ。」


 「1000ウノも?」


 父が泣きそうな顔で母さんにつぶやく。


 「だーめ。」


 「うぅー、はぃ。」


 それだけ言い残したら、辛そうに父は仕事へと向かった。


 夕飯の後、両親二人でケーキを仲良く食べてたのが目撃された。仲良さそうに。ただそれ、救われてるのか?



 

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