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異世界マイフレンド  作者: ゆう
メインストーリー
37/190

プリンを

本日3話 1話目

 夕方とは言えないくらいの正午の時間、分かりやすく言うならおやつの時間帯、遊びに出かけていた俺は家へと帰ってきた。今日もいつものように俺はミーケと二人で遊びに出かけていた。出かける発端となったのは、俺が母さんに毎度のごとく魔法を教えてとせがんだことだ。秒で母さんに追い出されてしまった。


 遊んでいる際中には、追い出されたことをすっかりと忘れていたが、家に帰ってくるとやっぱり引っかかるものがある。そんな引っかかりを胸に残したまま、俺は玄関からリビングに移動していく。


 リビングにはソファでいつものようにいびきをかいて寝ている母さんがいた。俺はそんな母さんを横目に別のソファに勢いよく飛び込んだ。


 バフッ。

 

 そんな音を奏でながら、ソファが俺の身体を受け止める。結構な音をソファが奏でたが、母さんが起きた様子はない。さすがの図太さだ。日頃の生活習慣は伊達じゃないようだ。


 やることもないから、俺はなんとなく母さんを眺める。幸せそうによだれを垂らして寝ている。ほんと幸せそうだ。母さんを視界に収めたまま少しの間ボーっとしてると、俺のお腹から音が鳴った。運動も結構したのもあって、ちょっと小腹がすいたみたいだ。


 「そういやぁ、この前母さんがプリン買ってたっけ…。」


 俺はそうボソッとつぶやいてからソファから飛び降りて、冷蔵庫のある台所へと向かう。


 「ッ!?」


 俺が母さんの横を通り過ぎようとしたとき、後ろから何かにグイっと引っ張られた。どうやら俺のシャツを母さんが後ろから引っ張っているみたいだ。どうしてさっきのソファの音では起きないくせに、”プリン”ってつぶやいただけで起きれるんだか。


 母さんの方を確認すると、さっきまでと同じようにソファに横になって目をつむっているけど、片手だけ、俺の方に伸びている。伸びている先では俺のシャツを握りしめている。日頃浮いてない血管が母さんの手から浮き出るほどに。通りで痛いと思ったよ。甘味への執着強すぎだろ。


 振りほどこうにも、母さんの握力が強すぎて全然振りほどける気がしない。ただまぁ、起きてるならちょうどいいか。


 「かーたん、魔法…。」


 俺が”魔法”という言葉を発した瞬間、握られた手の力が驚くほどに抜けた。なんなの、コイツ。どんだけ教えたくないの。めっちゃ腹立つんだけど。母さんの反応に少しむかつくものの、俺の行く末を、プリンへのロードを阻んでいた母さんの手からは逃れることはできた。


 「ッ!!」


 俺が台所へ進もうとすると、またガクッと何かに後ろから引っ張られる。俺が後ろを振り返ると、母さんの腕から先がプルプルと震えていて、先の方では一本の指が俺のシャツに引っかかっている。往生際が悪い。俺は母さんに向かってもう一度魔法の言葉を唱える。魔法だけにね。


 「魔法…。」


 そうすると、母さんの手から力が抜ける、ただ、未だにぎりぎりで俺のシャツに指が引っかかっている。どんだけ俺にプリンあげたくないのっ。しょうがないなぁ。俺は母さんに向かってつぶやく。


 「プリン…。」


 聞いた途端、俺のシャツを母さんがおもいっきし握りしめる。その手は想像もつかないほどの血管が浮き出ている。これ絶対しわやばいじゃん。まぁ、直すのは母さんだしいっか。俺はまたささやく。


 「魔法…、」


 すると手から力が抜ける。力が抜けたら俺はすぐさま「プリン」と言う。そしたら一瞬で力が入る。すぐに「魔法」と言う。俺はこれを何度も繰り返す。何回か繰り返していたら、母さんの腕が徐々に”ブルブル”と強く震え、寝ているはずの表情が苦しそうになっていく。さっきから額汗の汗の量がすごいし、ハァハァと息切れしてる。いやぁ、なんて楽しいんだろう。日頃、傍若無人な母さんをこんなにイジメれるなんて、めっちゃ爽快だ。

 

 俺が母さんで遊んでいると、玄関のドアの開く音と女の子の声が聞こえてきた。


 「おじゃましまーす。」


 「ミーケ、どうしたの?」


 「家にいても暇だったから、来ちゃった。」


 「あっ、そうなんだぁ。」


 「うん、おばさんは寝ちゃってる感じ?」


 母さんの状態の見えないソファの裏までミーケがやってくる頃には、母さんの手が俺のシャツから離れていた。どうやら今の息絶え絶えの姿ををミーケに見られたくないよだ。まだ寝ている体にしたいのかな。ごまかせるかなぁ。


 「そうみたいなんだよ。」


 「そうなんだぁ。なんだかおばさん、寝苦しそうだね。」


 ピクッ。

 

 ミーケの言葉で母さんが反応する。


 「ぷぷっ。嫌な夢でも見てるのかもね。」


 「ルート、なんで笑ってるの?」


 母さんが頭を何度も横に振る。ミーケからは絶妙に見えない角度みたいだ。


 「いや、別に…。」


 俺にばらす様子がないからか、母さんはなんだかホッとしている。おっと、そういやプリンがあったなぁ。


 「ねぇ、ミーケ…。」


 「なーに?」


 「プリン食べたくない?」


 「えっ!?食べたーい。」


 良い反応だ。

 

 俺の言葉に母さんが必死に顔を横を振るも、ミーケの嬉しそうな声を聞いた瞬間、目から涙がこぼれだした。プリンでどんだけつらいのよ。


 「じゃぁ、取ってくるね。」


 俺がそう言って、台所に向かおうとした時、母さんの腕が俺へと伸びてくるが、


 「ねぇ、ルート…。」


 ミーケの声を聞いた途端、力なく下へと落ちていった。


 「ん?」


 「もしかしておばさん、起きてるの?」


 「いや、寝てるよ。」


 寝てるんだよ。

 

 「そっか。」


 「じゃぁ、待っててね。」


 「ん。」


 ちょっと大きめのプリンをミーケと二人で分けて食べている時に、母さんがやっと起き上がった。なんでか目元がちょっとだけ赤いが。


 「二人ともおはよう。」


 どうやら今起きた体で行くようだ。


 「「おはよー。」」


 「おばさんも、プリンいる?」


 「いいのよ、ほんとうにいいのよ…。」


 母さんの声と言葉から悲壮感が漂ってくる。それに、ミーケから見えない角度でソファを力いっぱいつねっている。相当食べたかったらしい。こうして母さんはプリンを一口も食べられずに終わった。今日はずっと僕のターンだったね。




12,18

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