母さんのダイエット宣言 夫と息子に
「私ね、ダイエットしようと思うの。」
朝起きて早々、母さんが俺と父二人にそう宣言した。
「どうしたんだ?急に…。」
「べ、別に理由なんかないわよ。ちょっとダイエットしたいなって思っただけよっ!」
「ダイエット…、したい?」
父が母さんの言葉を聞き返す。ある個所にかなりの違和感があったみたいだ。ダイエットしたいねー。しないと、じゃなくて…。
「私がダイエットしたいって、思ったら変なわけ?」
「いや、別にそういうわけじゃー…。」
「でしょ?だからあなたたちもダイエット付き合ってね?」
「「へっ!?」」
母さんが恒例の意味不明なことを言い出した。なんで、いちいち付き合わせようとするのかなー。俺だけじゃなくて、父も俺の仲間のようだ。
「俺たちもか?」
「そーだよ。別にかーたんと違って、僕たちダイエットしたいわけじゃないのに…。」
「そーだよなっ。」
俺と父の二人がチームを組んだ。
「だって、私が頑張ってる中、あんたたちが普段通りなんて腹立つじゃない?」
「はっ!?そんな理由でかよっ。」
うんうん。
「あたりまえじゃない。一番重要なとこよ?」
「そ、そうなのか?」
そうなの?
「そうよ。考えてもみてみて。」
「な、何をだ?」
「例えば、あなたが禁酒をしようと思うじゃない?」
「いや、そもそも禁酒しようとか思わないな。」
父が真剣な顔で言い放った。お、おう。これ、例え話なんだけど。
「めんどくさいわね。」
母さんがそう吐き捨てた。まっ、まぁ…。
「めんど…。ひどい。」
「仮にね、そうだとするじゃない?」
「お、おう。か、仮にか…。」
「横でお酒飲まれてみて?あなた、我慢できる?」
「できない…。」
「でしょ?」
「あ、あぁ…」
「そういうことよ。」
「なるほど…。」
父がつぶやきながら、うなずいてる。はやっ。納得すのはやっ。もうチームが瓦解しそうなんだけど。えっ、早くない?
「ルートも…、例えば…」
どうやら、次の標的は俺らしい。というか俺が最終防衛線になってしまってる。防御力なさすぎないか?逆に何を守れるんだよ、これ。
「ミーケちゃんが他の男と遊ぶとするでしょ?腹立たない?」
なんだか違くない?俺の方。食べ物でもないんだけど。
「どう?」
母さんがきらきらした目で聞いてくる。これあなたが個人的に聞きたい話しなだけでは?今はダイエットの話だろ、ダイエットの。
「さぁ?わかんない…」
あんたのおもちゃになんかなってたまるか。
ハァ
母さんがため息をついてから…
「まだ早すぎたようね、子供には。」
イッラ。
なにこの人クソ腹立つんですけど。あぁ、どうせ子供ですよ。だから、言ってたまるか。ダイエットだって手伝ってなんかやるもんか。
「で、なんでダイエットするの?」
「そうだよっ。理由をまず教えてくれよ。」
俺に父が追従する。
「言わないとダメ?」
「「ダメ。」」
それはそうでしょ。人に手伝わせたいなら、そこは言わないと。
「………。」
母さんが小声で何かつぶやく。ただ、まったく聞き取れない。
「なんだ?」「なに?」
「太ったのよ…」
まぁ、そうだろうね、ダイエットの理由なんて、それが一番だろうし。
「500グラム太ったのよ。」
「「………。」」
500グラムって何グラムだっけ?よく分からないな。
「言ったんだから、あんたたち手伝いなさいよねっ!」
500グラムで何か変わるのか?誰か教えてくれない?
「そんくらいなら、別に変らないだろ。」
わかる。俺も父と同じ意見だよ。
「分かってないわね。」
「何を?」
俺だけじゃなくて、父もわかってなかったみたいだ。
「半月で500グラムずつ太っていくとするじゃない?」
「お、おう。」
「半年で6キロも太るのよ?」
「なるほどっ。でもそれ太ってからダイエットすればいいんじゃないのか?」
俺もそう思う。
「だからダメなのよ。」
「はい。」
すみません。
「一か月後、今の私からしたら1キロ太ったことになってるけど、半月後の私からしたら500グラムしか増えてないのよ?」
「「?」」
何言ってんだ?
「つまり、太った時に行動しないと、ずっと太っていく一方なのよ。」
「「なるほど…。」」
「だから今日からダイエット期間です。わかりましたか?」
「「はいっ。」」
なんでか一瞬で陥落した。
「で、先生、何をするのでしょうか?」
大きいほうの生徒が尋ねた。
「いい返事ね。とりあえずは、家に食べ物があったら食べちゃうから、今からみんなで全部食べつくしましょう。」
「「なんでだよっ!」」
「へっ?」
良かった。俺達でも、母さんの初手チートデイくらいの防衛はできるらしい。というかそれ、ただのデブ活…。
話数調整で割と最近に書いた話です。
その為、投稿済みのものと比べて文章が少し変化しているかもしれません。




