お手伝いへ
本日の2話目
ようやく体調が戻ってトイレから帰ってきたのに、帰ってきてすぐに友人の子のお守りを言いわたされる。父がちょっとだけ可哀相だ。そんな父はお守りに全く納得がいってないみたいだ。なってたらびっくりだけどね。
「ただでさえルートの面倒も見るのに、なんでミーケちゃんまで。」
父が必死にあらがう。が、母さんはそんな父をテキトーにあしらう。
「面倒を一人見るのも、二人見るのも変わらないでしょ?」
「そんなわけ…。」
「なんか文句あるのっ?」
「い、いえ…。」
「それに、こんなにかわいいんだから大丈夫よ。」
そう言いながら母さんは、我が子のようにミーケの頭をなでる。ミーケは母さんに満面の笑みで返す。母さんの顔がより一層緩んだ。ほんと仲睦まじいよね。母子以上に。
「ほんとかわいいわね。うちの子と交換してくれないかしら。」
母さんがそんなことを言う。ひどくねぇか?あなたの最愛の息子目の前にいるんだけど。普通に傷つくんですけど。俺がなぜか悲しい思いをしているところに、父は悪あがきを頑張るみたいだ。
「そんなにかわいいなら、今日代わりにお前が行ってくれても…。」
「ん、なに?」
「いえ。」
ただ、母さんとのレベル差がありすぎて、効果がないようだ。まぁ、この場合、レベル差ではなくて、権力差なんだろうけど。
こうやっていつもなら話がまとまる?のだが、今日は父に見方がいた。パパさんだ。パパさんが母さんに話しかける。
「ルシア、オヤルも体調良くないみたいだし、さすがに悪いよ。」
パパさんの言葉に父がメシアでも見たかのように救われた表情になっている。父とは違って、ちゃんと人ができてるからね、パパさんは。
そして、パパさんの言葉に父以外にもう一人反応した人物がいた、ミーケだ。パパさんの言葉で彼女の顔が苦々しい顔になっている。ミーケとしても、父の体調が悪そうなことから、一緒に行くって話をパパさんが聞いたら、断られるってわかってて、女性陣だけで話まとめたかったんだろうね。かしこい。
そんな二人が母さんを希望を込めたまなざしで見つめる。希望の中身は違うけど。そもそも父とミーケで勝負なんてなるはずが…。
「大丈夫よ、気にしなくて。」
まぁ、そうだろうね。母さんの優先順位からしたらそうりゃそうだ。
「いや、でも…。」
「いいから。」
「わかった。」
パパさんはそれで折れてしまった。パパさんは優しいけど、我が強いわけじゃないからね、母さんみたいに。これでようやく話がまとまったみたいだ。勝敗はいつも通りだけど。こうして俺、ミーケ、父の三人でお仕事に向かうことになった。
俺たち三人で現地に赴く際中のこと、俺は父にこれからのことを尋ねる。
「今日、飲食店に行くんだっけ?」
俺の質問に、父がポリポリと頭を掻きながら答える。
「そうらしいぞ。でもちょっと変わってるって話らしいな。」
「変わってる?」
「あぁ、なんか若者向けのお店らしくてちょっと小洒落れてるって話らしい。」
「へー。」
父の説明に俺はテキトーに返事をする。正直、俺はあまり興味が湧かなかった。けど、ミーケは違ったらしい。ミーケが父へ尋ねる。
「ミーケのお家とは違うの?」
「ミーケちゃん家は、宿屋と大衆食堂…、いろんな人が来るご飯屋さんなんだけど、そこはそういうお店とはちょっと違うらしい。まぁ、俺も行ったことがないから詳しくはわかんないけどな。」
「そうなんだ。」
そうこう話しているうちに目的地にたどり着いたみたいだ。父がひとり言のようにつぶやく。
「えっと、リンケージ…。ここだな。」
父が立てかけられてる看板の文字と目的地を確認する。どうやらリンケージというお店らしい。木造の建物ではあるけど、壁面のうち、下半分がガラスで覆われている。だから外からも内装の様子が見て取れる。前世の建物を見ているみたいだ。そんなお店を見て素直な感想が俺の口からこぼれる。
「なんかすごくおしゃれだね。」
「そうだな。俺もこの街だと、こんなきれいな店は初めてかもしれないな。」
父が俺の言葉にそんな返答を返す。
「ってことは、他の街にはきれいなお店もたくさんあるの?」
「王都に行ったら、ゴロゴロあるぞ。」
「へー。」
そうなんだ。いつかは行ってみたいな。俺がそんな感想を口にしているときに、ミーケの口からも小さな声で言葉がもれる。
「カフェみたい。」
「そうだね。」
ほんとカフェみたいだ。少しだけ三人で外装を眺めて、満足してから木の扉を父が叩いた。
「スーベルさんいるか?」
父がそう呼びかける。少ししてから、スーベルさんが扉を開けて出てきた。さすがに自動ドアではなかった。スーベルさんの案内のもと、中へ入る。中を見てもやっぱりカフェという感想が強い。造りは木造だが、たくさんの机といす、そして受付のカウンター、ガラスでできたショーケース。ほんとすごい。前世と遜色ないクオリティだ。俺たちは奥の控室まで案内された。
「では、今日はよろしくお願いします。」
スーベルさんがそう口にする。
「あぁ、こちらこそよろしく頼む。」
父がそう口にし、俺たち子供ふたりもそれに合わせてお辞儀する。挨拶が終わると、スーベルさんが「ところで…。」と言葉を続ける。
「そ、そちらの女の子は?まさか…」
スーベルさんの表情からも不安が感じ取れた。依頼の時にも、俺が来るのにも難色を示したのに、事前に連絡なしでもう一人連れてこられるだなんて可哀相だなぁ。
「ミーケちゃんだ。今日世話になることになった。よろしく頼む。」
「ミーケです。今日はよろしくお願いします。」
「はい、よろしくお願いします…、じゃなくてですね、なんでお子さんが一人増えてるんですかっ?」
スーベルさんが一瞬流されそうになるも、ちゃんとツッコむ。これが一人前の社会人か。
「この子はうちの子じゃなくて…。」
「そこはどうでもいいんですよっ!」
父のベタなボケにもちゃんとツッコむ。スーベルさんやりおる。スーベルさんが言葉を続ける。
「なんで、もう一人いるんですか?坊ちゃんだけだけでも心配なのに…。」
スーベルさんの悲痛な叫びが聞こえる。ごめんよ。来ちゃって。
「すまん、上からの命令なんだ。」
スーベルさんも父の言葉で理解したらしい。上でいいのか?
「上から、そ、そうですか…。オヤルさんもお辛いですね。」
スーベルさんも上でわかるのか。さすが社会人。踏まれてきた場数が違う。
大人…、いや、男二人がすごく悲しそうな顔をして理解し合っている。きっと、スーベルさんも大変なんだろうな。
「あぁ、分かってくれって助かる。面倒かけるかもしれんが今日は頼むわ。」
「こちらこそ…。」
こうして俺たち三人でスーベルさんをお手伝いすることが正式に決定した。




