りんごを
本日2話目
ミーケとのやりとりで精神的に疲れた俺は、夕食の後、頬杖をついて座っていた。なんか、疲れたよ。そんな俺を父が労ってくれるようだ。
「ルート、よく頑張ったな。」
そう言って、お俺の背中をさすってくれる。まぁまぁ癒される。
「うん、もう終わったかと思ったよ。」
俺の言葉に父が懐かしむような表情をする。きっと昔に似たようなことがあったんだろう。
「俺も似たようなことがあったよ…。」
やっぱりか。血は争えないね。
「俺は逃げ切れなかったよ。お前はすげぇな。」
父がなんか無様だ。そんな父がまだ言葉を続ける。
「せめてなぁ、俺から言いたかったよ。」
弱すぎて、自分の血筋が笑えない。この血筋、発言権ないの?言い終えると、父が泣き出してしまった。え?俺を労いに来たんじゃないの?この人。これ、俺が労わないといけないみたいになってるじゃん。俺があ然としてると、父がこっちをちらちら見てくる。うざすぎだろ。
「そうなんだぁ、つらいね。」
俺はそう言って父の頭を撫でてやる。父はすごく嬉しそうな顔をしてる。なんなの?この人。逆だろ。少しの間続けてると、父は満足したようだ。別のことに触れてくる。
「そういやぁ、ルート。その紙袋どうした?」
父が果物屋でもらった袋について触れてくる。そっかぁ。そういやぁ、これのこと忘れてたなぁ。猫が飲み込んだかもしれないリンゴかぁ。食べるの怖いし、捨てるの勿体ないし。処分に困るなぁ。
「なんかね、果物屋のおっさんが…。」
俺は猫の件の説明をしようとしたが、父は最後まで待てなかったようだ。話途中で、中身を物色し始めた。
「おぉ、リンゴじゃないか。おいしそうだ。」
「あぁ、それ…。」
話も聞かず食べ始めてしまった。ありゃあ、まぁいっか。猫が飲み込んだやつでも父なら死なんやろ。俺は説明を諦めて父がリンゴを食べえているのを眺める。父は「おいしい、おいしい。」って言いながら、食べ続ける。すごく、幸せそうに食べてる。良いことや。
父が食べ終わったところで、俺は猫の話を始めた。
「で、さっきのが猫の飲み込んじゃったやつだったら嫌だから、どうしようかなぁって。」
俺の説明を聞き終え頃には、父の額から汗が大量に出始めだした。顔も真っ青になっていく。どうしたんだろ。
「ル、ルート、なんでもっと早く言ってくれなかったんだよっ!?」
父からそんな言葉が投げかけられる。なんで、か。
「とーたんが食べ始めちゃったし、まぁ、いいっかなぁって。」
「まぁ、いっか…。」
そうつぶやくと、父が自分胸のあたりに手を当てる。顔なんて、もう真っ白だ。
「とーたん、大丈夫?」
「なんか、気分悪い。しんどいから、俺もう帰る。」
そう言って父が今にも死にそうな感じで帰ってしまった。さすがの父でも嫌だったか。父のそんな姿を見て、母さんがこっちにやってきた。
「なんかあったの?」
母さんからそう聞かれるが、同じ説明するのめんどいし、
「さぁ?」
テキトーにごまかして終わった。
ある家でのこと。
「これはオラたちの人生をつなげた運命の果物だから、オラたちで食べないと、な?」
ある男がそうつぶやく。それに一匹の動物が返事をする。
「にゃぁにゃにゃ。」
その言葉は、本人たち以外は何を言ってるか分からないが。
そうして、男はリンゴを2つに割って、一人と一匹でリンゴを食べてしまった。
さすがに、人様にそんなものはあげなかったらしい。そりゃね。




