仕事の依頼が
本日3話の2話目
昼も過ぎ俺たち家族は家に戻ってきていた。いつもなら、俺は昼からミーケと遊ぶことが多いのだが、今日は家の手伝いとかで無理らしい。彼女が5歳になってから、家を手伝うことが増えた。昼間はいつも一緒にいるから、ミーケがいないとやることがなくて暇だ。さて、どうしようか。
そんな俺を含めた家族全員が暇していた時、玄関のドアを叩く音が聞こえてきた。家に人が来るなんて珍しい。母さんが玄関に出迎えに行く。さすがに父じゃなくて、母さんが行くのか。俺がちょっと驚いていると、母さんがお客をリビングまで連れてきた。
「オヤル、仕事だってさ。」
母さんがそう言う。あら、ほんと珍しい。父も「まじか。」とかいって、驚いてる。あんたが驚いてどうすんだ。
お客さんにソファに座ってもらってから、話が進んでいく。今日来られた方は、スーベルさんという方らしく、ここから少し離れたところで飲食店をしているらしい。どうも明日、接客の従業員が誰もこれないらしくて、代わりに入ってくれないかとのことらしい。主に母さんに。
「ごめんなさい、私明日は用事があるのよ。」
母さんが即答する。俺も父は母さんのその言葉にびっくりして、二人して母さんの顔を覗き込んでしまった。
「なに?」
「「いえ。」」
俺たち父子は弱い。1日暇してるだけの母さんに対して何も言い返せない。スーベルさんも母さんに頼みを拒否されて、落胆している。
「そうですか、ならオヤルさんでもいいのでお願いできませんか?」
彼がそう言うと即答した。母さんが。
「わかりました。」と。
スーベルさんはさっきとは打って変わって、なんとか救われたという表情をしている。ただ一番顔色が変わったのは父だった。ひどく困惑している。
「俺何も言ってないんだけど。」
「だってあんた、いつも暇じゃない。」
”あんたも”だと思うんだけど。父には母さんの言葉が結構効いたらしい、たぶん”いつも”の部分が。父がダメージを受けてる間に母さんとスーベルさんで話が進んでいく。俺はその話を聞きながら少しだけ悩んでいた。
どうしようかな。ミーケが明日も家の手伝いだったら、明日も暇なのか。2日続けてはさすがに辛いなぁ。職場体験みたいな感じで、新鮮かもしれないし、一緒に付いていってもいいかなぁ。よし。
俺は考えをまとめ、二人の会話に入る。
「僕もとーたんについていっていい?」
俺の言葉にスーベルさんはちょっと嫌な顔をした。そりゃ、そうだよね。子供が付いてきても、邪魔なだけだし。そんなとき母さんが小さい声でつぶやく。
「オヤルが仕事、ルートもそれに付いていく。私は、家で一人でゆっくり…。」
そのつぶやきがここにいる全員に聞こえたようだ。スーベルさんが一番驚いた顔をしている。そりゃぁね。さっき断られたのに明日暇宣言したようなものだもん。スーベルさんが母さんに尋ねる。
「ルシアさん、明日暇なんですか?」
「忙しいです。」
スーベルさんの問に母さんが即答する。スーベルさんは負けずともう一度攻める。
「でもいま…。」
「忙しいです。」
母さんの言葉を聞いて、スーベルさんが頭をガクッと落とした。無理なことを悟ったらしい。母さんを働かせるということを。彼は諦めて「はい。」と消沈した。相手が悪いよ。そこに母さんが止めを刺しに行く。
「じゃぁ、オヤルもルートも明日頑張ってね。」
それに最初に反応したのは父だった。
「俺まだ行くとは…。」
必死に抵抗しようとするも、
「なに?」
母さんが笑顔で聞き返すだけで、最後まで言葉を続けられない。弱いよ。スーベルさんも抵抗する。
「ルシアさんが来ないのはわかましたが、ぼっちゃんは…。」
「家のかわいい息子になにか文句でも?」
スーベルさんは黙ってしまった。弱い。ということで、父でも依頼人でもなく家では母さんが最強ということがわかった。知ってた。




