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異世界マイフレンド  作者: ゆう
メインストーリー
179/190

またお買い物に 言ったんだよ

 ルートとミーケがイチャイチャしている頃


 【オヤル目線】


 はぁ~~~~~~~~~~…


 だから俺は言ったんだよ。後悔するって、絶対に…


 そして案の定、目の前では、ルシアが一口食べただけの青汁のチュロスを見つめている。眉間に皺を寄せて、苦い物を見るように…


 あー、実際にも苦いけどな。


 そして、苦い顔のままのルシアが俺の方へ振り向いてきた。もう、嫌な予感しかしないな。というか、起きるんだろうな。


 はは…


 ルシアは、俺が持っているプレーンのチュロスを見つめている。さっきまでの苦い顔はどこへやら、今は無機質なような瞳で、じーっと…


 そして、たまにしか見ない可愛い笑顔を向けてきた。こんな時に限って…


 「ねぇあなた…」


 「な、なんだ?」


 「そのチュロスおいしい?」


 あ~、ルシアが何を言いたいか分かった気がしたわ。


 はぁ…


 答えたくねー…


 でも、答えないと後がこえーし…


 「あぁ、おいしいぞ。」


 「そう…」


 俺の言葉に対するルシアの答えはそれだけだった。だけど、視線で何を言いたいのかちゃんと伝わってくる。俺は何も言わずに、ルシアの言葉を待った。というかどうせ…


 そして、ルシアが俺の手にあるチュロスを視線で捉えたままで、にへーっと嫌な笑みを浮かべた。


 あー、これは…


 そして、やっぱり…

 

 「ねぇあなた。一口だけ、ほんの一口だけでいいから、そっちのチュロスちょうだい。」


 一口だけ…


 それがほんとなら、ルシアにしては可愛げがある。ほんとにならな…


 上げたくない。だけど、どうしても断り切れる未来が湧かない。あ~あ…


 「一口だけだぞ?」


 一口で済めばいいな…


 済まないと思うけど…


 俺は持っていたチュロスをルシアに差し出す。するとやっぱり、ルシアは俺の手からチュロスを奪い去っていった。


 ほらな…


 はは…


 ここまでは俺の予想通りだった。辛いが…


 そして、予想してなかったのはここから…


 「はい、あなた…」


 はっ?


 ルシアはそう言って別のチュロスを渡してきた。緑色の、そう青汁味のやつを…


 「なにこれ…」


 気づくと、口から言葉が漏れ出ていた。その俺の言葉に、さもあたりまえといった感じで、ルシアが言葉にしてきた。


 「ん?あなたのをただ貰うのも悪いし、私のをあげるわ。あー、なんて私って優しいのでしょう…」


 不味くて、いらないだけだろ。白々しい…


 「いや、いらないからな。」


 だけど、ルシアの顔がきつくなる。


 「私のことも考えて欲しわ。あなたのをもらった。なのに、私は何も返さない。それってね、すごく申し訳なく感じるの。引け目を感じるの。でもね、私たちは夫婦なのよ?お互いに引け目なんて感じたらだめなの。そうしないと、対等な関係でいられなくなるのだから。だからね、私のことなんて気にせずに、食べてくれたらいいのよ。分かった?」


 「お、おう…」


 ん?どういうことだ?


 えっと…、対等な関係?夫婦?ん?ただ、お前が食べたくなくて、俺の…


 「だから、はいっ。あなたも私のやつを食べていいわよ。ね?」


 俺の考えがまとまる前に、強引にルシアが俺の手に青汁チュロスを渡してきた。

 

 はっ?えっ?


 俺は訳がわからないまま、それを受け取る。いや、受け取ってしまった。


 ルシアはそれを満足そうに見守った後、俺が持っていたチュロスへとかぶりつく。」


 「ん~、おいしいっ!」


 美味しいそうに食べるその姿は、すごく愛らしくて愛おしかった。


 そしてルシアは、俺のものだったはずのチュロスを食べきった。食べ…


 はっ!?


 「えっ?それ俺の…」


 「ごめんね。ついついおいしくて食べちゃったわ。でも大丈夫よ。だってあなたには、そのおいしいチュロスがあるのだもの。」


 そのおいしい…


 チュロス…?


 まさか、これのことか?はは、そんなまさかな…


 信じたくない、俺。だけど、ルシアの視線の先は、今俺の手にある緑色のチュロスだった。

 

 「あなた、嘘だと思って食べてみて。きっとね、おいしいこともないこともないかもしれないのだから。」


 はは…


 それ絶対に不味いやつだろ…


 俺はしょうがなく、手のあるチュロスを口に含む。見た目は、かなり緑色がまがまがしい。だけど、味は…


 口に入った瞬間、チュロスの苦みが…


 強烈な苦みが…


 「不味い…」


 なんで、こんない不味いんだ?どう考えても、やっていい苦さじゃない。甘味としての苦さを越えてる…


 そして当のルシアからは…


 「どう?おいしいでしょ?そうでしょ?」


 是が非にでも、俺においしいって言わそうとしてきた。


 「いや、普通に…」


 「おいしいでしょ?」


 「いや…」


 「おいしい、でしょ?」


 目で早くそう言えと伝わってきた。さぁっ、って…


 うぅ…


 「おいしい…」


 「そう良かったわ。なら、全部食べてね。」


 「はい…」


 こうして、俺は青汁味を食べきった。いや、食べきらされた。


 苦い…

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