またお買い物に 言ったんだよ
ルートとミーケがイチャイチャしている頃
【オヤル目線】
はぁ~~~~~~~~~~…
だから俺は言ったんだよ。後悔するって、絶対に…
そして案の定、目の前では、ルシアが一口食べただけの青汁のチュロスを見つめている。眉間に皺を寄せて、苦い物を見るように…
あー、実際にも苦いけどな。
そして、苦い顔のままのルシアが俺の方へ振り向いてきた。もう、嫌な予感しかしないな。というか、起きるんだろうな。
はは…
ルシアは、俺が持っているプレーンのチュロスを見つめている。さっきまでの苦い顔はどこへやら、今は無機質なような瞳で、じーっと…
そして、たまにしか見ない可愛い笑顔を向けてきた。こんな時に限って…
「ねぇあなた…」
「な、なんだ?」
「そのチュロスおいしい?」
あ~、ルシアが何を言いたいか分かった気がしたわ。
はぁ…
答えたくねー…
でも、答えないと後がこえーし…
「あぁ、おいしいぞ。」
「そう…」
俺の言葉に対するルシアの答えはそれだけだった。だけど、視線で何を言いたいのかちゃんと伝わってくる。俺は何も言わずに、ルシアの言葉を待った。というかどうせ…
そして、ルシアが俺の手にあるチュロスを視線で捉えたままで、にへーっと嫌な笑みを浮かべた。
あー、これは…
そして、やっぱり…
「ねぇあなた。一口だけ、ほんの一口だけでいいから、そっちのチュロスちょうだい。」
一口だけ…
それがほんとなら、ルシアにしては可愛げがある。ほんとにならな…
上げたくない。だけど、どうしても断り切れる未来が湧かない。あ~あ…
「一口だけだぞ?」
一口で済めばいいな…
済まないと思うけど…
俺は持っていたチュロスをルシアに差し出す。するとやっぱり、ルシアは俺の手からチュロスを奪い去っていった。
ほらな…
はは…
ここまでは俺の予想通りだった。辛いが…
そして、予想してなかったのはここから…
「はい、あなた…」
はっ?
ルシアはそう言って別のチュロスを渡してきた。緑色の、そう青汁味のやつを…
「なにこれ…」
気づくと、口から言葉が漏れ出ていた。その俺の言葉に、さもあたりまえといった感じで、ルシアが言葉にしてきた。
「ん?あなたのをただ貰うのも悪いし、私のをあげるわ。あー、なんて私って優しいのでしょう…」
不味くて、いらないだけだろ。白々しい…
「いや、いらないからな。」
だけど、ルシアの顔がきつくなる。
「私のことも考えて欲しわ。あなたのをもらった。なのに、私は何も返さない。それってね、すごく申し訳なく感じるの。引け目を感じるの。でもね、私たちは夫婦なのよ?お互いに引け目なんて感じたらだめなの。そうしないと、対等な関係でいられなくなるのだから。だからね、私のことなんて気にせずに、食べてくれたらいいのよ。分かった?」
「お、おう…」
ん?どういうことだ?
えっと…、対等な関係?夫婦?ん?ただ、お前が食べたくなくて、俺の…
「だから、はいっ。あなたも私のやつを食べていいわよ。ね?」
俺の考えがまとまる前に、強引にルシアが俺の手に青汁チュロスを渡してきた。
はっ?えっ?
俺は訳がわからないまま、それを受け取る。いや、受け取ってしまった。
ルシアはそれを満足そうに見守った後、俺が持っていたチュロスへとかぶりつく。」
「ん~、おいしいっ!」
美味しいそうに食べるその姿は、すごく愛らしくて愛おしかった。
そしてルシアは、俺のものだったはずのチュロスを食べきった。食べ…
はっ!?
「えっ?それ俺の…」
「ごめんね。ついついおいしくて食べちゃったわ。でも大丈夫よ。だってあなたには、そのおいしいチュロスがあるのだもの。」
そのおいしい…
チュロス…?
まさか、これのことか?はは、そんなまさかな…
信じたくない、俺。だけど、ルシアの視線の先は、今俺の手にある緑色のチュロスだった。
「あなた、嘘だと思って食べてみて。きっとね、おいしいこともないこともないかもしれないのだから。」
はは…
それ絶対に不味いやつだろ…
俺はしょうがなく、手のあるチュロスを口に含む。見た目は、かなり緑色がまがまがしい。だけど、味は…
口に入った瞬間、チュロスの苦みが…
強烈な苦みが…
「不味い…」
なんで、こんない不味いんだ?どう考えても、やっていい苦さじゃない。甘味としての苦さを越えてる…
そして当のルシアからは…
「どう?おいしいでしょ?そうでしょ?」
是が非にでも、俺においしいって言わそうとしてきた。
「いや、普通に…」
「おいしいでしょ?」
「いや…」
「おいしい、でしょ?」
目で早くそう言えと伝わってきた。さぁっ、って…
うぅ…
「おいしい…」
「そう良かったわ。なら、全部食べてね。」
「はい…」
こうして、俺は青汁味を食べきった。いや、食べきらされた。
苦い…




