表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界マイフレンド  作者: ゆう
メインストーリー
178/190

またお買い物に 何味にしようかな

 「ルートとミーケちゃんは何が良い?」


 青汁味のチュロスを満足気に頼み終えた母さんから、そんな質問が飛んできた。


 青汁味…


 いや、一旦…


 というか普通に忘れよう。きっと、俺には関係なんだから。そうだ、忘れた方が良い。うん、その方が幸せだ。


 ということで、俺は忘れることにした。


 ショーケースに飾られているチュロスを眺める。そこにはキャラメル、プレーン、シナモン、チョコなどそこそこの種類が置いてある。


 さーて、どうしようかなぁ。普通の味でもいいんだけど、せっかくなんだから、キャラメルとかのちょっとパンチの強いのも良いよなぁ。そういう、ベタだけどおしゃれなやつって、こういうお店でしか食べられないし。食べ得感あるよね。でも、だからこそ、シンプルなのもなしではないんだよなぁ。昔からずっと愛されてる味、それが不味いわけないだから。それにパンチが強いのって、甘さがくどくいから最後の方は食べるのがしんどいこともそこそこあったりするし。だけどその点、シンプルなやつは面白味がない代わりに、最後の苦行も少ない。


 んー、悩ましい~っ!


 決まらないっ!


 はぁ、ミーケはどうするんだろう…


 「ミーケはどうするの?」


 俺がそう尋ねた時、ミーケは食い入るように並んでるチュロスを見つめていた。そして、チュロスだけを視界に抑えたまま…


 「ん~、考え中…。ルートはどうするの?」


 なんというか、意識がすべてチュロスに行っているような感じだった。


 「僕も考え中かな…」


 「そっか…」


 これで会話が終わってしまった。少し寂しい…


 と思いきや、ミーケがバッとこっちに振り向いてきた。


 「ねぇ、ルート。別々の買って分けない?」


 「ん?分ける?あ~、なるほど…」


 そっか、その手があったのか…


 ミーケがきらきらと明るくて、可愛らしい笑顔でこっちを見つめてくる。


 「うんっ!せっかくなんだから、色んな味食べたいもんっ!」


 「そうだよね!いいよ。そうしよっ!」


 ということで、俺とミーケは分け合いっこすることになった。そしてミーケは、またショーケースの方に視線を戻した。そして、俺のことを横目で見ながら…


 「ルートはどれが食べたいの?ミーケできれば、キャラメルとチョコが食べたい。」


 んー、チョコよりかはプレーンの方がいいけど、まっいっか…


 「その二個で良いよ。」


 「うんっ!」


 ミーケは無邪気な笑顔を一度見せてから、母さんの方へ顔を向ける。


 「おばちゃん、ミーケとルート、チョコとキャラメルでっ!」


 「分かったわ。」


 「うんっ!」


 こうして、俺とミーケがチョコとキャラメル、父さんと母さんはプレーンと緑のやつを買った。




 俺たち家族はいつものフォーメーションに戻って、また目的地の服屋へと向かっていく。もちろん、チュロスを片手に…


 手に持っているチョコ味のチュロスを頬張る。すると、チョコの風味とドーナッツを食べた時のような触感が歯から伝わってきた。ただ、ドーナッツよりかは少しだけ固く、歯を入れた瞬間にパリッと言う音が聞こてきた気がした。


 ん~~っ、おいしいっ!


 やっぱりシンプルなのが一番だよね。誰だよ。キャラメルとかのこじゃれたやつが良いとか言ってたやつは。シンプル is ベストに決まってるだろ。


 ったく…


 俺がそのまま何度かチョコ時のチュロスを頬張っていると、隣のミーケから声が聞こえてきた。


 「ルート、そっちもちょうだいっ!!」


 あっ、そういえば…


 「う、うん。はい…」


 俺はそう言って、ミーケにチュロスを差し出す。だけどミーケは、差し出したチュロスに手は付けず、じとーと何か言いたげに俺を見つめてきた。


 「ねぇ、ルート…」


 「な、なに…?」


 「もしかして、分けるの忘れてたわけじゃ、ないよね?」


 ビクッ…


 「そ、そんなことないよー。」


 「ふ~ん、ほんとー?」


 確認している言葉のはずなのに、ミーケの目がすでに俺を咎めてきているようだ。


 おかしい。まだ、判決は下されていないはずなのに…


 「ほ、ほんとだよ。僕噓つかない。」


 「へー…」


 や、やばい…


 ミーケの目から段々と温度が…


 「そんなことよりさぁ、ミーケ、はいっ…」


 俺は無理やり、ミーケの手に食べかけのチュロスを手渡した。そして渋々、ミーケはそれを受け取る。最初はすごく不満そうだった。だけど、不思議なことに段々と顔を赤らめていく。何かに気づいたようだ。


 「ルートの食べかけ…」


 すごく不穏な言葉だった。


 なんというか、もうこの時点で続きの言葉を聞きたくない。だって、絶対に碌なことではないから。ただそんな悲しい気持ちは、やっぱりミーケには届くことはないみたいだ。


 「今すぐ家に帰って、保存…」


 バシッ…


 俺はミーケの頭を軽くはたいた。


 「ったーっ!!もう、ルート何するのっ!!!」


 これで、俺がキレられるのか…


 はぁ…


 「はいはい。それ食べないなら、僕が食べるよ。」


 すると、ミーケは食べかけのチュロスを外敵から守るように懐にいれた。


 「これ、ミーケのっ!!」


 「う、うん…」


 なんて、返答すればいいんだろう。元々俺のなのに…


 いや、いいや、めんどくさい。


 「ミーケ、もう片方のキャラメルもらってい?」


 「しょうがないなー。」


 俺はミーケの食べかけをもらった。そして、頬張った。


 くどいくらいの甘ったるいキャラメルの味。うん、おいしい。やっぱりあれだよね。パンチの効いた甘みが一番おいしいよね。プレーン?そんなの知らないよ。


 こうして、俺たち家族はチュロスを食べ終えた。


 そして父さんはからは、悲しそうな声が聞こえてきた。"おいしい"って。


 なんでそのワードで、そんなに悲しそうなんだろうか。不思議だなー。


 はは…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ