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異世界マイフレンド  作者: ゆう
メインストーリー
175/190

またお買い物に こいつやっぱり

 俺たち家族は、フォーメーションを変えることなく服屋へと歩いて向かっていた。前衛の二人はずっと楽しそうな雰囲気を醸し出している。なのに俺たちの会話は、さっきからほんとにおかしい。だって今は…


 「ルートは首輪をつけられるのとつけるのどっちがいい?」


 なんだなんだろう、この会話…


 首輪をつける、つけられる?そもそもそれをしないという選択肢を俺にください。


 こいつやっぱり、頭おかしいんじゃないか?


 誰だよ。この子にいらない知識足してるの。まじでいい加減にしてくれ、頼むから…


 「ねぇ、ミーケさん…」


 「何?」


 俺の言葉にミーケが無垢に首を傾げる。可愛らしいのが腹立つ。頭の中、やばいくせに…


 「普通の会話しない?少しだけでいいからさぁ…」


 「普通の会話?」


 「うん。やばい会話じゃなくてさぁ。」


 俺のその言葉を聞くと、ミーケがじっと俺を見つめてくる。ぱちぱちと数回瞬きをする。そしてミーケは、肺から息を吐いた。しょうがないなぁ、って感じで。


 「もう、しょうがないなぁ。じゃー…」


 少し納得がいかない。だけどこれで、やっとマシな会話に…


 「この前ルートがお昼寝してて、ミーケに寄りかかってきた話でもいい?」


 「へっ?」


 「一昨日かな。みんなでお家にいるときに…」


 「待って。ミーケ待って。」


 「もう、何?ルートっ…」


 ミーケは不機嫌そうな声を吐いた。


 じゃなくてさっ、やばい話の次はなんで俺の話なんだよっ!?しかも、ガリガリとメンタル削ってきそうな。もっと、良いトピック選んでくれよっ!!


 うぅ…


 はずっ…


 「ミーケさん、他の話でお願いできませんか?いえ、お願いします。」


 「えーっ、でもミーケ、今はこの話がしたいのに…」


 「どうかお願いします。」


 俺がそう言うと、ミーケはまじまじと見つめてくる。そして、優しくニコッと笑顔を向けてくれた。


 どうやら、次はまともな…


 「ならこの前、ルートが頭を撫でてくれた時のお話でも…」


 ははは…


 鬼かな?この子…


 「お願いなんで、それも止めていただけたら…」


 「も~、ルートのわがままっ!」


 「これ、僕が我がままなのっ!?」


 「そうだよ。せっかくミーケが盛り上がるお話選んでるのに…」


 ぷくーっとミーケの頬が膨れた。


 でも…


 「盛り上がる…?」


 どこが…?


 そんな俺の疑問をミーケが解いてくれた。


 「盛り上がるよ。ミーケはっ!」


 「それ絶対、ミーケだけだよねっ!?僕絶対、心痛いんだけどっ!!!」


 「大丈夫だよ。ルートが楽しかったらミーケは楽しいもん。つまり、ミーケが楽しかったらルートも楽しいに違いないよっ!」


 ははは…


 何言ってんだっ!?こいつ…


 俺は困惑して言葉が出てこない。だから、ミーケが少し不貞腐れた様子で、言葉を続けてきた。


 「なら、ルートがお話考えてよ。ミーケは絶対に文句言わないから。」


 最後に方には、ミーケの顔が少しドヤァって顔をになっていた。まだ、何もしてないけど…


 ふむ…


 俺が考えるのか、いや、考えていいのか…


 なるほど…


 なら…


 「この前、みんなと遊んだ時の話でさぁ…」


 ミーケはまだまだ普通だ。


 「ミーケが寝ていた時の話なんだけど…」


 ミーケが目をぱちぱちとし始めた。


 「ミーケの口から垂れた…」


 よだれが…


 俺はそう続けたかった。なのに…


 「ルート、待ってっ!!!それは言わないでーっ!」


 ミーケが慌ただしく止めてきた。


 「ん?僕まだ、最後まで話切ってないんだけど…。それにミーケ、さっきは止めないとか言ってたような…」


 ミーケが気まずそうな顔になった。そして、必死にごまかすように…


 「ねぇルート、もっと楽しいお話しよ?」


 ふむ…


 「えー、でも僕、今はこの話したいんだけど…」


 「でもっ、ミーケが楽しくないから、きっとルートも楽しくないよ?きっとそうだよ。だから、他の話にしようよ。」


 ミーケは焦ったように、そう言葉にしてきた。


 ふむふむ…


 「大丈夫だよ。僕はきっと楽しいし。それにすごく盛り上がると思うよ?」


 ミーケの悲鳴で…


 「えっ、ミーケ、普通のお話がしたいなっ!普通の…」


 ふむふむふむ…


 「なるほどね。なら、これも普通の話だから大丈夫だね。」


 「へっ?」


 ミーケの口から、抜けた声が漏れ出た。でも俺は気にしない。


 「それでね、僕のズボンに垂れてきた…」


 「ニ゛ャァァァァァーっ!!!」


 こうして、楽しいお話は進んでいった。


 楽しかったよ。

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