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異世界マイフレンド  作者: ゆう
メインストーリー
174/190

またお買い物に ホテル

 俺たち家族は、今いつも行く服屋さんへみんなで向かっている。父さんと母さんが先頭で、俺とミーケが後方に。さっきのフォーメーションと変化はない。そしてそれぞれで、手も繋いでいる。


 自然と目に入ってくる先頭の二人は楽し気におしゃべりしている。話題はどうやら、並んでいるお店についてみたいだ。二人は、お店をお互いにだけ分かるように小さく指さしている。そして、道を進めば進むほど、両親二人の距離は近づいているように見える。


 ほんと、仲のおよろしいことで。


 そしてそんな二人に触発されたのか、参考にしているのかは分からないけど、隣にいたミーケも似たようなことをしてきた。


 「ねぇルート、あれ見て。」


 そう口にして、斜め前を小さく指をさしてきた。


 俺は自然とそっちに視線をむける。するとそこにあったのは…


 ホテルだった。


 色煌びやかでピンク色の配色が多い。そしてそのホテルは、自然と安っぽいお城を連想してしまう。たくさんの人数が住むには物足りない。だけど、きっと二人なら、二人だけなら十分な大きさがある、小さな夢のようなお城…


 この世界のビジネスホテルってこんなのなんだ。こんなこてこてとした、艶やかな配色の。


 へー。知らなかったよ。


 はは…


 俺、どう返事したらいいの、これ…


 困り果てて言葉の出ない俺に、さらにミーケから言葉がかけられた。


 「すごくきれいな建物だよね。今度二人で行ってみない?」


 これはどっちだ。ただ見た目は注意を引いて、女の子なら憧れそうな見た目をしているから、ただただミーケが気になって行ってみたいのか。それか、確信犯なのか。


 俺はすごく迷った。


 だけどミーケを見てすぐにどっちか分かった。だって、ミーケの鼻息が少し大きんだもの。


 ミーケの顔はきらきらと何かを期待するような視線で、頬が少し赤く、興奮を押せえきれないのかいつもより呼吸が荒かった。


 こいつは…


 俺はそのお城とは反対方向にあった、猫カフェを指さす。


 「それより、こっちの方が楽しそうじゃない?」


 というか、確実に楽しいよ。それに平和だし。


 すると、ミーケはじとーっと責めるように見つめてきて…


 「ミーケ、猫嫌い。」


 変なことを言いだした。


 「いやミーケさん、今自分が着ているものを見てよ。」


 「猫ちゃんのパーカーだけど?」


 ミーケはしれーと言ってきた。


 「で、猫嫌いなの?」


 「うん。」


 訳が分かんない。


 「なんで…?」


 「だって…」


 「だって?」


 ミーケが俺を見つめてくる。そして、ちょっと不機嫌そうに言葉を口にした。


 「ミーケ以外で、ルートが頬緩めるとかなんて見たくないもん。」


 はは、怖いよ…


 なんで、猫にまで嫉妬してんだよ…


 「そっか…」


 「うん、だからあっちのお城に行こ?きっと楽しいよ?」


 ミーケの鼻息はまた荒かった。


 「いや、行かないからね?」


 俺の言葉を聞いて、ミーケの顔がいつものように膨れていく。


 「むー、なんで?」


 「なんでっ!?それは…」


 「それは?」


 ミーケが俺の方へと、”決して逃がす気はないよ”という強い視線を向けてくる。


 というかさっ、5歳でホテルって何っ!?楽しいもくそもないじゃんっ!しかもこんなの、なんて言えばいいんだよっ!というか、言えるかっ!!!


 チリチリと気まずい時間が過ぎる。


 うぅ…


 「来世なら…」


 ワンチャン…


 俺はそう言おうとした。したんだ。


 「来世なら、ミーケと行ってくれるだね。約束だよ?言質取ったからねっ!」


 「へっ?」


 「ルートは、来世もミーケと一緒にいてくれる気なんだね。ルートはどんだけミーケのこと好きなのよ。も~っ!」


 「へっ?」


 「期待して待ってるね?」


 「はっ?」


 こうして俺たちは、ホテルについての会話を終えた。


 来世の俺よ、どうか頑張ってくれ。


 『えっ?』


 一瞬、どこかから声が聞こえてきた気がした。

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