食堂の中で 王子様を
「でもルーナ、なんでそのストーカー男とは嫌なの?」
母さんがお姉さんに対して、そう尋ねた。
そっか。母さんはお姉さんからその辺、まだ聞いてなかったもんね。えっと、確か…
俺が思い出してるうちに、お姉さんが母さんへと返答した。
「たぶん、生理的にだと思うの。」
そう、だったね…
なんかさ、身も蓋もないね…
「そうなのね。なら、しょうがないわね。」
母さんも、お姉さんの答えをすんなり受け止めた。
なんかこの言葉にすごく同情してしまうんだけど、女性からしたらそんなものなのかね。なんか、うん…
「うん。それにね…」
お姉さんから、また何があるようだ。
「いつかウチ、かっこいい王子様を見つけたいの。そして、その人といつかは…。ニシシシシシシ…」
お姉さんが、きれいな顔をかわいい笑顔に変えた。だけど…
「そうなのね。」
母さんの反応はあんましだった。だからお姉さんが…
「僕君のお母さんは、そういうのなかったの?」
母さんはその言葉を聞くと、横にいた父さんを小さく指差して…
「私には、小さい頃からこれがいたからね。」
「お前、これってなんだよ。これって…」
父さんはすぐにそう返した。だけど、母さんは父さんの方へ視線を向けることはなかった。そのままお姉さんに…
「だから私は、そういうのはなかったわね。」
「無視かよっ!?」
「うるさいわね〜。女の会話に入ってこないでよ。」
「す、すまん…」
父さん…
そして母さんは、机の上にある父さんの手にさりげなく自分の手を上から乗せてから…
「だから私には、王子様とかそういう感覚はわからないのよね〜。」
母さんはお姉さんに向かってそう口にした。だけどお姉さんは、母さんと父さんの手に気づいたみたいだ。
「えっ?えっ?」
お姉さんが、母さんと二人の手に、目を右往左往させている。だけど、なかなか次の言葉が出てこない。ツッコんでもいいのか、悩んでるのかもしれない。
だから母さんから…
「何?」
「えっと…」
「何かしら?」
「いや、何も…」
お姉さんは、黙らされてしまった。気まずい時間が流れるのかなーと思いきや、母さんから…
「王子様ね〜。」
そんな、呟く声が聞こえてきた。そして母さんは、お姉さんの方に視線を向けて…
「王子様ってどんな人?」
そう訪ねた。すぐにお姉さんは、キラキラとした瞳に移り変わって…
「えっとね、もちろん顔は格好良くて、あっ、かっこいいじゃ伝わらないよね。顔はシュッと小顔ながら細い輪郭で、目はキラキラとシュッとしてて、お鼻は高くて、きれいな金髪で、高身長。そして、苦しい時はいっつもウチを助けてくれるのっ!!!そんな王子様なのっ!」
お姉さんは、現実から目を背けだした。
「いるといいわね。」
「うんっ!」
お姉さんの返事は、すごく良かった。そしてそんなとき…
ルルルルルル…
お姉さんの懐からそんな音が鳴り出した。そう、電話だ。
そしてお姉さんは、すっごく嫌な表情になった。何か色々と察してしまった。で、お姉さんから…
「電話、取っていい…?」
「いいわよ。」
すぐに母さんがそう答えた。そして、お姉さんが電話を取った。
「もしもし…」
『あっもしもし、ルーナちゃん?』
声が普通に漏れてくる。そして、その声はすっごく聞き覚えのある声だった。お姉さんが、より眉をひそめる。
そして会話が続く。
「う、うん。」
『明日さ、遊びに行かない?』
「えっ、い…」
『じゃー明日、14時にいつもの場所でね。じゃー。』
ブチッ…
えっ!?
「「「「「……………」」」」」
お姉さんが不憫でしょうがなかった。
お姉さんは今にも泣きそうな顔になっている。そんなお姉さんに母さんが…
「王子様、いるといいわね。」
「うん…」
俺も、いて欲しいと思った。カッコよくなくてもいいから、お姉さんを助けてあげる王子様が…
こうしてお姉さんは、明日デートが決まった。
半ば、強引に…




