コール あんなの
ルルルルルルルルルル
もう何度目になるだろうか。また電話がかかってくる。取らない俺たちも俺たちだけど、かけてくる方もかけてくる方だよね。諦めきれないらしい。いや、ほぼほぼ俺たちが悪いんだけどね。
そして…
「うざい…。」
俺の隣にいるミーケから、そんな呟きが聞こえてきた。彼女的にも、そろそろ我慢の限界みたいだ。
なら、取ればいいのに…。
俺のそんな気持ちが通じたのか、ミーケが机の上に乗っているコールカードを手に取った。そして、通話を始める。
「オラだぞ、オラっ。」
向こうの声が大きいのか、隣にいる俺にまで声が聞こえてきた。そして、やっぱり知っている人だった。
ただミーケは返事をせずに、コールカードをじっと見つめている。まるで温度が籠っていないかのような冷淡な瞳で。そしてそんな瞳のまま、ゆっくりと口を開いた。
「留守です。」
ブチっ。
それだけ言って、ミーケが通話を切った。
こいつ…。
ルルルルルルルルルル
そして、また電話がかかってくるけど…
ブチっ
ミーケがすぐさまにコールを切った。
「あ~、始めからこうしてたら良かったっ。」
チョップ
「あたっ。」
ミーケが、可愛らしい悲鳴を上げた。
「ミーケ、やりすぎ…。」
俺は一応注意してみる。だけど、聞いてないみたいだ。いや、いつものことか…。
「おばちゃん、ルートがミーケの頭ぶったっ!」
いや、言い方っ!
「ミーケちゃん、いい?そういうのはちゃんと覚えておくのよ?いつか、逃げられないように責任を取らすために、ね?」
「なるほど…。うん、わかったっ!」
ん?んっ!?
なんだか、恐ろしいことを聞いてしまった気が…。それに母さん、今の言い方、まるで自分がそうしたかのような…。いや、それはあとでいいや。今は…
俺はさっき電話をかけてきた人に、折り返し電話をかける。
そして呼ぼ出し音が少ししたら、相手が電話を取った。
「ジローラ、電話くれた?」
「ル、ルートか。オラ、何回もっ…」
ブチっ。
ん?なんか、通話が切れた気が…。
俺はそう思って、カードの方へ視線をやる。すると、カードにミーケの手が伸びていた。細かく言うと、通話を切るとこに。
ははは…
「何してるの?」
「通話切ったんだけど?」
俺の言葉にミーケが真顔で返してきた。
「なんで?」
「切りたかったから…?」
理由だよ、理由!
「なんで切りたかったの?」
「だって、ルートとミーケの幸せの時間にいらないじゃん、あんなの…。」
ミーケさん…
「あんなのって…。一応、ジローラと僕ら友達だよね?」
「ん?」
俺の問にミーケは首をこってと傾けてから、可愛い声を出してきた。あざとい、でも、やってることと言ってることは、ほんとにひどいけど。本当にね…。
俺はそんなことを思いながら、ミーケを見つめる。いや、頭を心配する。
そして俺は、視線をミーケから外してコールカードへと移す。すると、すぐにミーケの手がカードへと伸びてきた。
「ねぇミーケさん、何してるの?」
「ルートこそ、何しようとしてるの?」
「えっ?普通にジローラに電話だけど?」
「なんで?」
「ん?友達から電話来てたら普通かけなおさない?」
もうすでに、普通もクソもないんだけどね、今の状況は。主に君のせいでなんだけど…。
「掛け直さないよ。ルートもちょっと変わってるね。」
俺っ!?これ、俺が変わってるの?どう考えても、君だろ…。いや、落ち着け。こんなガキの言うことなんて真に受けたらダメだ。
「僕が変わってるってことでいいから、ミーケさん、手離してくんない?」
「やだ。」
「むっ、なんで?」
「だってアイツ、ルートに悪影響及ぼすもん。」
ん?
「ねぇミーケ…」
「何?」
「君、どの目線で話してるの?さっきの言葉、すっごい違和感したんだけど…。」
なんというか、保護者目線的な…。
「えっ?お嫁さんだけど…。」
ミーケがパチパチと瞬きしながら、まるで驚いたような表情を向けてくる。
何言ってんだ?こいつ…
「工程ぶっ飛ばし過ぎじゃない?」
「愛は順序を越えるから、大丈夫だよ。」
いやいやいや…
「越え過ぎだよ。普通は付き合うところからで…。」
「じゃー、付き合うところからでいいよ。今日からミーケとルートは付き合うってことで。」
「はっ?」
何言って…
俺が困惑していると、ミーケが母さんの方へ振り向く。
「おばちゃん。ということで、ミーケ、ルートと付き合うことになりました。これからも末永くよろしくね。」
「えっ?」
「よろしくね。良かったわね、ちゃんと言質取れて。」
「うん。」
文字通り、勝手に話が進んでいく。
はぁっ!?
急げ、早く割り込まないと。
「いやっ、僕付き合うだなんて言ってないからっ?」
「言ったよ?」
「言ってないよ。」
そして、俺とミーケの会話に母さんまで入ってくる。
「ルート、諦めなさい。」
「えっ?やだよ。」
なんで、そんな諭す感じなの。しかも、諦めなさいって、何?
「我がままね~。こんな子には育ててないんだけど。」
うざっ。
このまま一人であほ二人の相手は厳しい。どう見てもジリ貧だ。誰か助けを…。
俺はそう考えながら、残りのもう一人へと視線をやる。
「とーたんも…、やっぱいいや。」
「おいっ!ルート、今なんで止めたっ!?」
「えっ?だって…、うん。」
言うの可哀相だよね。味方に付いても役に立たなさそうだなんて。うん。黙っててあげよう。
「ルート、そんな可哀相な人を見るような目は止めてくれっ!頼むから。心が、心が痛いんだよっ!」
父さんから、なんだか声が飛んでくる。
だから俺は、父さんから視線を外して母さんたちの方を振り向く。
「ル、ルートっ!?」
まだ父さんからの声が聞こえてきた。
俺はそんな父さんの方を指さしながら、口を開く。
「僕、こんな風にはならないからね、絶対っ!」
「むーっ。」
ミーケが頬を膨らませた。
そして、視界の端で何かが下に崩れ落ちていった。性格に言うと、父さんが…。




