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異世界マイフレンド  作者: ゆう
メインストーリー
146/190

コール 親子

 とある日のお昼過ぎ、俺たちは一家全員でゆったりとしていた。メンツは俺とミーケ、それに母さんと父さんだ。


 どういう風にかと言うと、俺はソファの背もたれに全体重を預けてぐったりと、ミーケはひじ掛けに頭を預けて、俺の方に足を伸ばしてきてやがる。母さんもミーケと同じようにひじ掛けに頭を預ける形で横になっていて、その残った少ないスペースに父さんがちょこんと肩身狭そうに座っている。


 まっ、いつも通りだ。気になるところが何個かあった気がするけど気にしない。だって、いつも通りだもん。


 そんな感じで、俺たちが自堕落な時間を満喫していると、そんな俺たちの幸せな時間を邪魔してくる存在が現れた。具体的に言うと…


 ルルルルルルルルルル


 これだ。まっ、正確に言うと、これと言うよりはこの音というのが正しいのだけどね。


 ルルルルルルルルルル


 机の上で、コールカードによる呼び出し音が部屋中に鳴り響いている。結構うるさい。だからか、その音に一番早く反応してたのは母さんだった。


 「あなた…」


 「はいはい…。」


 母さんが父さんを呼ぶ。すると、父さんが返事をしてから電話を取ろうとする。きっと、母さんから呼ばれたのを、お前が取れって意味に捉えたのだろう。でも違った。


 「うるさいから、電源落として。」


 「えっ?取るんじゃなくてか?」


 「違うわよ。考えてもみて。今回取ったとしても、どうせまた、凝りもせずに何度もかかってくるのよ。ほんと、飽きもせずにね。ならいっそのこと、もう電源を落とした方が賢いと思わない?そうでしょ?だって、そうすれば永遠にそんな音を聞かなくて済むのよ?そっちの方が確実に選択だわ。いえ、いっそのこと捨ててしまえば…。そうよ、そうすれば、その鬱陶しい存在すら今後見なくて済むのね。なら、捨ててしまうべきなのね。そんなものに、私の大切な時間をこれ以上無駄にされたくないわ。あなた早くそのやかましい、いえ、その忌まわしい存在をこの私の家から早く追い出して。さぁ、早く。」


 母さんがまた父さんを振り回している。


 大変そうだ。でも、母さんの言うことにも一理…。


 俺がそんなことを思っていると、父さんが母さんに返答した。


 「はぁ…。」


 ため息で…。


 父さんには、母さんの至高な至高な考えが通じなかったらしい。父さんもまだまだだな。


 ルルルルルルルルルル


 この間にも、コール音が鳴り響く。


 「さぁ、あなた早く。その煩わしい存在を、さぁ早くっ!」


 「俺さぁ、最近思ったんだよ。」


 「ん?何がかしら?」


 父さんの言葉に母さんが反応を示す。


 「ルシアお前にさぁ、最近ルートが似てきてるような気がするんだよ。」


 ん?んっ!?


 何言ってんだ、この人…。全く似てないだろ。どこがどう似てんだよ。母さんみたいに俺は全く堕落してないんだけど。


 俺がそんなことを思いながら父さんを見つめていると、母さんから声が聞こえてきた。


 「子が親に似るのは当然の話でしょ?何当たり前のこと言ってるの?」

 

 「そうかもしれないけどさぁ。でも、似てほしくないとこが似てきてんだよ。」


 「はぁっ!?私に似てほしくないとこなんてないでしょ。」


 やっぱり、似てなくない?だって、俺はこんな自信過剰なんかじゃないし。


 母さんの言葉に少し渋い顔をしていた父さんが、俺の方を一瞬見てから口を開く。


 「まだそこまではな。でもさぁ、カードが鳴った時見てたか?お前と一緒で、ルートも忌々しそうにカードを見つめてたからな。しかもな、さっきお前が言った電源切れって言う話に、うんうんと頷いてたし。まじでそのうち、お前の他の部分も似てきそうで怖いんだよ。」


 父さんが変なことを言ってる。


 えっ?電話が来たら鬱陶しいって思うの普通じゃないのか。思うだろ、普通…。しかも、別に電話がかかって来なくたってこまらないし…。えっ?この感情、全世界共通だと思ってたんだけど。えっ、違うの?


 俺が父さんの言葉に少し困惑して言うると、母さんからも困惑した様子の声が聞こえてきた。


 「えっ?普通、電話がきたらうるさいって思わないの?」


 「誰からだろう、じゃないのか。俺はそっちなんだけど。」


 「「えっ?」」


 俺と母さんがびっくりした声を出したのを、父さんが黙って見つめてくる。


 「と、とーたんが変わってるんじゃないの?」


 「そ、そうよ。きっとそうに違いないわよ。」


 えっ?俺たちが変わってるの?普通じゃないの?


 俺と母さんが困惑してる中、父さんが口を開く。


 「まっ、今日はそういうことでいいぞ。」


 今日のところは議論を先延ばしにするみたいだ。


 えっ、でもさ…。


 「おっちゃん…」


 俺たち三人の会話にミーケが割って入ってきた。


 「どうした?」


 「電話切れちゃったよ?」


 「あっ!!!」


 ミーケの声に父さんがそんな声を上げる。


 本当に電話が切れてしまったみたいだ。


 でもさ、これで静かになったんだし、別にいいんじゃないの?


 俺がそう思ったとき、母さんの声が聞こえてきた。


 「別にいいわよ。静かになったんだから。」


 そんな言葉が…。


 ………。


 なんかさ…。あはははは。まじか、まじでか…。

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