父さんと プラス一人で
俺と父さんとのベイゴマ勝負は終わりを迎えた。だから今から始まるのはエキシビションマッチだ。
父さんが作ったフィールドに俺と父さん、それにミーケがそばに立っている。俺と父さんの真剣勝負にミーケも乱入という形だ。せっかくなら母さんも入ればいいと思うんだけど、母さんはまた自分が作ったソファでぐったりしている。いつも通りなのかもしれない。
という感じで…
「「「ゴー、ショットっ!!!」」」
三人一斉に、ベイゴマをショットした。俺が赤で父さんが青、ミーケが黄色だ。
それぞれが一斉にフィールドに着地して、各自動き出す。位置は全部がばらばらだ。
そして、不思議なことがおこった。
黄色のコマが青いコマを急に追いかける。
カンッ
その二つのコマが衝突した。青いコマは大外の段差にまで追いやられる。そして黄色いコマも反対側まで。青いコマは段差の付近て停滞している。そこへ、黄色いコマが一直線に前進して、そして…
カンッ
青いコマが場外へと追い出されてしまった。文字通り、瞬殺だった。
「へっ?」
青いコマの持ち主から、すごく寂しそうな声が漏れる。俺はその持ち主の顔をそ~と覗き見ると、落ちていった青いコマをぼけーっと見つめていた。すごくやるせない表情だった。
そして父さんは、母さんの方へととぼとぼと歩いて行った。なんというか、哀愁が漂っていた。
殺気の出来事は、今までの勝負の中で一番惨いやり取りだった。だから、うん。父さん、ただのゲームだからそんなに気を落とさないで。
俺は父さんを見送った後、慌ててフィールドへと視線を戻す。目を奪われるくらい、悲惨だったんだよ。
そして俺がフィールドへと視線を戻していると、なかなかに良い勝負をしていた。
カンッカンッ
俺とミーケのコマが何度もぶつかり合っている。
二つのコマが弾かれる。そして黄色いコマが赤いコマを追撃。そしてまた…。
「………」
赤いコマは必死に逃げ纏うように、弾かれている。なのに黄色いコマがそれを許さない。
赤いコマが弾かれたのを、黄色いコマが急加速するかのように追従する。そして追い上げていく。で、後ろから何度も小突く。外に出ないように、軽く、いや優しく何度も。
なんというか、既視感を感じた。どこと聞かれたら、きっと現実世界で…。
カンッカンッ
そして、何度も黄色いコマに小突かれて体力がなくなったのか、赤いコマはぐったりと倒れてしまった。
「ミーケの勝ちだね。」
ミーケが無垢な笑顔を向けてきていた。
「そ、そうだね。」
「ルート、もう一回しよ?」
「いいよ…。」
ということで、もう一戦…
「「ゴー、ショットっ!!!」」
俺とミーケがそう掛け声を上げて、もう一度ショットした。
赤と黄色のコマは別々のところに着地した。そして、恒例のように互いに円を描くように集会を始めた。なのにまた異変が起こる。
黄色いコマが加速して、俺のコマの後ろをぴったりととついてくる。黄色いコマは加速して、俺のコマに追いついたはずなのに。
そして、ずっと互いのコマは円を描く。俺のコマが先頭で、ミーケのコマはその後ろをぴったりと。
そんな動きがしばらく、永遠と続いた。
そして…
バタッ
一度も当たることなく、いや、最後だけ寄り添うようにしてコマは一緒に倒れた。
「………」
「へー、こんなこともあるんだね。」
無言の俺に、ミーケからそんな言葉が聞こえた。
何とも言えなかった。まるでこれが、俺の将来のように感じて。
「やっぱり私たちって…」
ミーケのそんな呟く声が聞こえてきた。
ははは…
おかしい。絶対におかしい。だって、魔法も何も使ってないはずなのに。
こうして、俺たちのコマ遊びは終わるを迎えた。
いったいなんで…




