いつもの日常 夕食前に
本日2話の1話目
やっとのことで母さんを起こして俺たちはミーケの家に向かう。扉を開くと既に父がいた。早いなぁ。ほんと、欲求に対しては忠実だよね。父も俺たちが来たことに気づいたようだ。
「よぉ、お前ら。遅かったな。」
「色々立て込んじゃってね。」
父の言葉に母が返す。どの口が言ってんだ。寝てただけのくせに。思ってたことが表情にでてたらしい。母さんから刺すような視線が飛んでくる。まずい、ごまかせ。
「とーたん、今日どうだったの?」
俺は必死に話を切り替える。どうだ?いけたか?俺は第六感で母さんの視線の先を必死に探る。感覚が伝えてくる。オールクリアと。いけたんかい。そんなことを思ってると、父から返答がきた。
「おう、今日は凄いぞ。こんなにだ。」
父がニコッとしながら、手のひらを広げてくる。手のひらで5を示している。
「とーたん、すごいね!!500万ウノも稼いだの?」
ニッコニコした父の自慢気な表情から、ちょっと大げさに予想してみた。いやでも、魔物狩りは当たればかなり稼げるみたいだし、父がそんだけ良い表情ならこんくらいいってるだろ。ちなみに1ウノ=1円だ。
「そーなの?あなた♡」
母さんもかなり興奮気味のようだ。錯覚かな。母さんの瞳がハートになっている。めずらしい。ただそのハートの先が父かお金なのか、向いてる先はすごく気にはなる。
父はかわいい母さんの表情に見惚れてるのか。なかなか次の言葉が出てこない。なんやかんや仲良い夫婦だよね。
「ルート、なんか欲しいものある?今度買ってあげるわよ。」
母さんはもう上機嫌のようだ。大はしゃぎで、母さんから聞いたことない言葉が飛び出る。
「えっ、ほんとっ!?何買ってもらおうかなぁ。」
やっぱここは代わり映えがないけどおもちゃかなぁ。なんかみんなでわいわいできるパーティゲームとかがすっごい欲しい。いや、魔法書もありか。全く教えてくれないし。でも家族旅行やテーマパークも捨てがたい。えぇ、どうしよ。全部良い。落ち着け。いくらまでいいか先に聞くべきだろ。
「かーたん、何ウノまでいいの?」
予算次第でだいぶ話変わるもんね。先に聞くべきだった。あぁ、いくらまでいいのかなぁ。
「そうね、1万ウノまでかなぁ。ちょっと奮発しすぎな気もするわね。」
1万か。遊びに行くのはちょっと難しいけど、子供の臨時お小遣いとしては奮発した方か。うー、悩ましい。
「かーたんはどうするの?」
「超悩んでるのよ。デザート巡りも良いし、旅行も良い。あぁ、新しいお洋服も良いわよねぇ。ほんと、悩んじゃうわぁ。」
まじか?これはひょっとして、旅行に行ける感じか?かわいい息子も行きたいって言えば、ほんとに実現するのでは?あぁ、楽しみだ。最愛のお父様はどうするのだろう。
「とーたんはどうするの?」
「う、あぁ…」
父に聞いてもなんか反応が悪い。どうしたんだろう。すごく居心地悪そうな顔してる。顔とか汗でびっしょりだ。
「あのな…。」
父が気まずそうに切り出す。語尾が段々と小さくなって聞こえづらい。
「500万もは稼げてないんだ。」
あぁ、まあそうだよね。そんな良い話なんてなかなかないか。
「そっか、そうだよね。えっと、5だから、50万とか?それでもすごいね。」
「そうわよね、50万でもすごいわよ。ごめんなさいね、勝手に早とちりして。」
気まずい。けど、50万稼ぐだけでも十分すごいよね。俺と母さんの言葉に父が首を振る。
「えっとぉ、5万なんだ。」
なんだよ、生活費行かぁ。たしかに1日で5万は凄いけど、なんか、うん。まぁ、そうだよね。母さんも沈没してる。父はすごくいたたまれない顔をしてる。あんたいつも魔物狩りでもっと稼いでるやん。
「「………」」
俺と母さんからはなかなか言葉が出ない。間に耐え切れずか、父が言葉を繋ぐ。
「いやぁ、あのなぁ、久しぶりに稼いだからつい嬉しくてな。」
なんかつらいよ。てか日ごろからちゃんと働けよ、ニートが。こうやって夕飯前の一幕が過ぎた。あぁ、俺の旅行がぁ…。




